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政治家と官僚の“相互不可侵条約”を打ち破る報道を

~ミスター年金・長妻昭氏に聞く取材テクニック【後編】

2007年10月29日(月)

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前編から読む)

武田 年金のような公共的な問題ならば、政治は動く。野党よりも官僚から入手できる情報量は圧倒的な与党の方が、告発もしやすいはず。となると、むしろ自民党が政治を動かすために、長妻さんの手法を活用すればよさそうなものですが、なぜそういう動きが出てこないのか。

長妻 政権与党は官僚の不祥事を暴かない。これを日本人は普通だと思っちゃっているんですね。

 しかしそれは世界の常識ではなくて、他の国は米国も英国でも与党議員が行政の問題を暴いている。米国は共和党だって民主党だって役人に対してばんばん責めていきますよ。だから日本の自民党の国会議員がなぜそれをしないのか。調査能力がないということではなくて「それはしないことになっている」としか思えない。そういう仕組みなんですね。

武田 でも不祥事を暴いたら国民は自民党に拍手するでしょう。選挙は少なくとも有利になりますよね。人気が出る。でも、それをしない。

自民党と官僚の相互不可侵条約

長妻昭・民主党衆院議員

長妻昭・民主党衆院議員

長妻 これは日本の行政の最大の病気だと思うけれど、自民党と官僚の間で一種の不可侵条約が結ばれている。相互不可侵条約でもたれ合う、これが日本の正体ですよ。

 日本の官僚は国会のコントロールも受けない、内閣のコントロールも受けない。よく考えると、そういう制度というのは、戦前に統帥権の独立という美名の下、天皇陛下のコントロールさえ受けないで軍隊が暴走してしまったDNAが、ずっと引き継がれているんです。

武田 うーん。そうなのか。でも一方で、自民党が官僚の不祥事を暴かない前近代的な政党であるおかげで、立場的に与党よりも情報力が少ない民主でも官僚の不祥事のような公的マターをいち早く拾い上げて世論に訴えられる、という構図もありますよね。

 これで自民も同じ戦略を採るようになると民主と自民の差異はなくなって、純粋に情報力の差で勝負するようになると民主不利になりますよ。長妻さんほど取材力があればいいけれど、情報収集力の熾烈な争いになる。

長妻 ただ、事実が隠されていて表に出ていないわけではないんですよ。去年の6月に私が国会で質問して年金の未統合記録が65歳以上で2300万件あると、これは資料を配布して言ったわけですけれども、その後、社会保険労務士の人とかといろいろと意見交換をしますよね。すると「いや、長妻さん、あなたがやっているのは10年前から社会保険労務士の中では知られていた事だと。それで、この記録を探すのが俺たちの仕事の1つなんだ」と。

 「知っているんだったらなぜその時言い出さないのか」と聞くと「それがもう当たり前だと思っていた」と。実は50年前から厚生省は未記入問題を自覚していました。でもこれはカウント作業中なのであって、問題のある記録ではないという認識だった。

マスコミがリスクを取るには調査報道しかない

武田 なるほど、「事実を問題視して告発できるかどうか」の力も問われるわけですね。でも、役所内部やその筋の人は、保身もあるのでおおっぴらにしたくない、やがて解決するんだからいいじゃないかと自分たちにも言い聞かせて済むかもしれないけれど、マスメディアはそれを問題として提起することはできてもよかったはずですよね。

武田徹

武田徹

 そこまで業界では暗黙の了解事になっていたのなら取材すれば分かったはずだし、もしかしたら既に知っていたのかもしれない。ならば、なんでそれを告発しなかったのか。

 田中角栄の金脈問題の時も、政治記者はみんな知っていたけれど、政治家とか官僚の側に感情移入していて特に問題にすべきものとは考えなくなっていて、それを告発したのは記者クラブとかに所属しない立花隆さんだけだったと言われます。それと同じ構図なのでしょうか。

長妻 そういう側面もあるかもしれないけど、より大きいのは「リスクを避けたい」ということでしょう。取材しても役人は認めない。となると報道しにくい。間違いだったら困るわけで、そうした時には書かないんでしょう。そこで必要なのが調査報道だったんですよ。きちんとした調査があれば、お役所が認めてなくてもこれは問題だと書けますよね。はっきりと、明確に、「これは問題だ」と。

武田 否定されても勝てる自信があれば。

長妻 ところが調査報道をきちんとしていないと、役所が認めていないものはなかなか書きにくい。

武田 だからマスコミに代わって長妻さんが調査報道している。長妻さんが年金問題でやったのは、まさに調査報道的なことだったわけです、資料を地道に集め、直接話を聞いて。

長妻 結果として役所が認めて謝ったら、マスメディアでは初めて大きい記事になるんですね。「厚生労働省謝罪」とバーンとでかく出る。それで後から、今まで取材したものをばーっと書くわけですね。もはや訴えられる恐れもないから。

武田 そんな状況を見ても、長妻さんがジャーナリストの作法を持って政治家をやっている裏返しとして、メディアが今ジャーナリストの作法ができてないんじゃないかと思う。

 例えば、安倍政権が倒れた後、新聞、テレビの報道では自民党の総裁選を延々と報道していたでしょう。あれは自民党の中で決めればいい話なのに、もう1回国政選挙があったような報道にして、どっちが勝っても自民党であって、あれは自民党の宣伝以外の何物でもない。なんだか世耕(弘成、参議院議員)がいなくなったら自民党は急に広報や宣伝がうまくなったようで、自民党情報だけが結果的にメディアを席巻していたわけですよ。

視聴率主義にも健全さはある?

長妻 テレビの作り方についてはやっぱりリスクは負いたくないんでしょう。朝、昼、晩とやりますよね、ワイドショーを、あるいは情報番組を。ニュースもそうですね。そこで取り上げられて、ほかの番組、他局も含めて視聴率が高いテーマがあったとすれば、それをもう1回やれば安全パイとして視聴率は獲れる。そうやっていると同じものばかりになってしまう。

武田 ハリウッド映画と同じですね。1個当たると続編を作るんですけど、当たらなくなるとやめちゃう、続けるか、やめちゃうか、どっちかしかないという。これと同じ構造。

長妻 ただ一方でマスメディアが「正義」とかを勝手に考えて、これが国のあるべき姿だなんて言って大上段に構えてやり始めるとむしろ弊害が出てくる。だから皆さんが見たい、視聴率が高い番組を流すというのは、ある意味では健全ではある、行き過ぎがなければ。

武田 そうでしょうか。視聴率の背景にある大衆社会がそれほど賢いかどうかが、その問題を考えるうえでの分かれ道だと思うんですよ。

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