(どうせなら前回から読む)
―― ウェブというメディアを格好よく言うとそれは「新時代のフレーム」になります。ウェブ時代を迎えて私たちは、そのフレームの中で何ができるか、どう稼げるかを必死で探しているわけですが、フレーム自体を疑うことは、あまり発想しません。
でも、岡さん、小田嶋さんは逆で、決まりきった約束ごとをルールから変えてしまう、あるいは違う方向から徹底的に眺めてしまう、という態度が一貫していますね。まあ、それは時には危険なことでもあるのですが。
岡 世の中のルールねえ。僕は家を27歳で買って、32歳で売ったんだけど。
―― ということは、バブル前夜に買って、頂点で手放した。
岡 だから、寄り切ったわけ。ちっちゃな家だったんだけどね。2400万円で買った一戸建てが、4200万円で売れた。
小田嶋 勝ち逃げ。
岡 勝ち逃げです。でもまあ、離婚によって全部なくなりましたけどね(笑)。
―― なるほど、回りもんですね。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、撮影協力「杏奴」)
岡 まったくもって、回りもん。で、買う時にどうしたかというと、「頭金が半分ある」とうそを言って、F銀行とM銀行の2つにローンを依頼したの。頭金が半分あれば、あとの半分は貸しましょう、ということになりやすいじゃない? それでじっとこう、どっちに謝ったら許してくれるかな?? と様子をうかがっていた。最終的にF銀行の方が行ける、と思って、M銀行でローンを設定した後に、F銀行に「話があります。実は頭金はありません」って(笑)。
F銀行さん。「お世話に」なりました
―― 信じられない。
岡 その時点でローンの契約とともに、第1抵当はM銀行に付いている。F銀行は「第2抵当で1200万円を融資してくれ」というこちらの話を飲まざるを得ないわけですよ。で、頭金ゼロでも家は買えた、と。
小田嶋 今はあり得ないよ。それ、バブル前夜ならではでしょう。土地が上がることが前提だった時代だからだよね。銀行がローンを組んで土地を買ってくれ、と言いに来た時代ならでは。
岡 F銀行にはずっとうそをついていて、ぎりぎりで「ごめんなさい」と。「本当に申し訳ありません」と(笑)。でもね、そうやって甘えたF銀行はね、やっぱりいいかげんな銀行で。
小田嶋 そりゃ、いいかげんだろうな。
岡 俺はね、固定金利で借りたんだけど、それが、いつの間にか変動になってたんだよね(笑)。途中から引き落とし金額が高く変わってたんだもの。
小田嶋 なんだよ、それ。
岡 それで、おい、固定なのに返済金が変動するって変じゃないの? という話を当然、F銀行にはするよね。そうしたらF銀行では、担当者を転勤にしちゃった。
すごい贈り物
小田嶋 なるほど。
岡 銀行側に会ったら会ったで、長期プライムレートにのっとって金利が決まっているとか、これは銀行協会の何とかで決まったことですからとか、いろいろ釈明があるの。でも、こっちはそんなの関係ないよ。で、最後に、あっそう、と。じゃあ支店長に言っておいてくれ。明日、N新聞の記者が行くからね。全部その説明をしろよ、と言って俺は銀行から出たわけ。
―― ちなみにその時、N新聞の記者にお友達はいたんですか。
岡 いるわけないじゃないですか(笑)。
小田嶋 ないよな(笑)。
岡 それで会社に帰ってきたら、F銀行からすごい贈り物が届いていて(笑)。支店長と副支店長が謝りに来て、結局、俺のローンを元に戻して、その差額をお返しします、って話になったんだよ。
小田嶋 ぎりぎりだな。岡のやり口だよ。
岡 でもそこまで言わない限り、銀行にだけ都合のいい理不尽が通ってしまうわけだよ。つまり、おばあさんとかおじいさんたちは、みんなやられていたと思う。
―― しかし新聞にそれを出されたら、飛びますね、支店長。
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