「人生の諸問題」

「ルール」と「法哲学」と「アメリカ」と

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2007年10月26日(金)

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(どうせなら前回から読む)

―― ウェブというメディアを格好よく言うとそれは「新時代のフレーム」になります。ウェブ時代を迎えて私たちは、そのフレームの中で何ができるか、どう稼げるかを必死で探しているわけですが、フレーム自体を疑うことは、あまり発想しません。

 でも、岡さん、小田嶋さんは逆で、決まりきった約束ごとをルールから変えてしまう、あるいは違う方向から徹底的に眺めてしまう、という態度が一貫していますね。まあ、それは時には危険なことでもあるのですが。

 世の中のルールねえ。僕は家を27歳で買って、32歳で売ったんだけど。

―― ということは、バブル前夜に買って、頂点で手放した。

 だから、寄り切ったわけ。ちっちゃな家だったんだけどね。2400万円で買った一戸建てが、4200万円で売れた。

小田嶋 勝ち逃げ。

 勝ち逃げです。でもまあ、離婚によって全部なくなりましたけどね(笑)。

―― なるほど、回りもんですね。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、撮影協力「杏奴」)

 まったくもって、回りもん。で、買う時にどうしたかというと、「頭金が半分ある」とうそを言って、F銀行とM銀行の2つにローンを依頼したの。頭金が半分あれば、あとの半分は貸しましょう、ということになりやすいじゃない? それでじっとこう、どっちに謝ったら許してくれるかな?? と様子をうかがっていた。最終的にF銀行の方が行ける、と思って、M銀行でローンを設定した後に、F銀行に「話があります。実は頭金はありません」って(笑)。

F銀行さん。「お世話に」なりました

―― 信じられない。

 その時点でローンの契約とともに、第1抵当はM銀行に付いている。F銀行は「第2抵当で1200万円を融資してくれ」というこちらの話を飲まざるを得ないわけですよ。で、頭金ゼロでも家は買えた、と。

小田嶋 今はあり得ないよ。それ、バブル前夜ならではでしょう。土地が上がることが前提だった時代だからだよね。銀行がローンを組んで土地を買ってくれ、と言いに来た時代ならでは。

 F銀行にはずっとうそをついていて、ぎりぎりで「ごめんなさい」と。「本当に申し訳ありません」と(笑)。でもね、そうやって甘えたF銀行はね、やっぱりいいかげんな銀行で。

小田嶋 そりゃ、いいかげんだろうな。

 俺はね、固定金利で借りたんだけど、それが、いつの間にか変動になってたんだよね(笑)。途中から引き落とし金額が高く変わってたんだもの。

小田嶋 なんだよ、それ。

 それで、おい、固定なのに返済金が変動するって変じゃないの? という話を当然、F銀行にはするよね。そうしたらF銀行では、担当者を転勤にしちゃった。

すごい贈り物

小田嶋 なるほど。

 銀行側に会ったら会ったで、長期プライムレートにのっとって金利が決まっているとか、これは銀行協会の何とかで決まったことですからとか、いろいろ釈明があるの。でも、こっちはそんなの関係ないよ。で、最後に、あっそう、と。じゃあ支店長に言っておいてくれ。明日、N新聞の記者が行くからね。全部その説明をしろよ、と言って俺は銀行から出たわけ。

―― ちなみにその時、N新聞の記者にお友達はいたんですか。

 いるわけないじゃないですか(笑)。

小田嶋 ないよな(笑)。

 それで会社に帰ってきたら、F銀行からすごい贈り物が届いていて(笑)。支店長と副支店長が謝りに来て、結局、俺のローンを元に戻して、その差額をお返しします、って話になったんだよ。

小田嶋 ぎりぎりだな。岡のやり口だよ。

 でもそこまで言わない限り、銀行にだけ都合のいい理不尽が通ってしまうわけだよ。つまり、おばあさんとかおじいさんたちは、みんなやられていたと思う。

―― しかし新聞にそれを出されたら、飛びますね、支店長。

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著者プロフィール

岡 康道(おか・やすみち)

岡 康道

クリエイティブ・ディレクター、CMプランナー。
1956年生まれ。80年早稲田大学法学部卒業後、電通に入社。CMプランナーとしてサントリー「BOSS」「南アルプスの天然水」、JR東日本「その先の日本へ。」など、時代を代表するキャンペーンを手がける。97年、JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞。
99年に日本最小最強のクリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を川口清勝、多田琢、麻生哲朗とともに設立。主なクライアントに、サッポロビール、大和証券、富士ゼロックス、リクシル、NTT東日本、大和ハウス、NTTDoCoMoなど。TCC最高賞、ADC賞、ACC賞、ニューヨークADC賞、クリオ賞など受賞多数。TCC会員、ニューヨークADC会員。現在、雑誌ポータルサイト「magabon」にて、エッセイ連載中。近著に「ノンタイトル」(電子書籍)

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト。
1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。国内外の都市開発、デザイン、トレンド、ライフスタイルを取材する一方で、時代の先端を行く各界の人物記事に力を注ぐ。『アエラ』『朝日新聞』『日本経済新聞』『日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)』などで執筆。著書に『セーラが町にやってきた』(プレジデント社/日経ビジネス人文庫)、『ほんものの日本人』(弊社刊)、『新・都市論TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(集英社新書・隈研吾氏と共著)『「オトコらしくない」から、うまくいく』(佐藤悦子氏と共著・日本経済新聞出版社)など。

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

人生の諸問題

日本語は今や、ウェブ上で全世界でもっとも流通している言語だといわれるまでになった。しかも、読む人間より、書く人間の方が圧倒的に多いのだという。それほどまでに人々が文章を書いている一方で、相手に何かを伝えることの難しさは、むしろ増えているように思える。「誰もが発信者」、そんな史上初のシチュエーションを迎えた今、いったい私たちの「コミュニケーション」はどこに行くのだろう。広告の世界でクリエイティブディレクターとして活躍する岡康道氏と、コラムニストの小田嶋隆氏が、高校時代の同級生という縁から始まった「伝達」について、ゆるゆると語り尽くす…はずだったのだが?

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