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財務諸表に“ウソ”があるから~『メジャーリーグに日本人選手が溢れる本当の理由』
鈴村裕輔著(評:柴田雄大)

青春新書、730円(税別)

  • 柴田 雄大

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2007年10月24日(水)

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メジャーリーグに日本人選手が溢れる本当の理由

メジャーリーグに日本人選手が溢れる本当の理由』鈴村裕輔著、青春新書、730円(税別)

 プロ野球に関する著作で名をあげた書き手は多い。代表的なライターとして、二宮清純氏、小関順二氏、石田雄太氏、織田淳太郎氏などがあげられるだろう。ちょっと時代をさかのぼれば、元新聞記者の近藤唯之氏(この人の文章はちょっと臭い)や元西鉄ライオンズの豊田泰光氏(この人は球界に対し何の遠慮もないので実に小気味がいい)などが有名だ。

 本書の著者である鈴村氏の肩書は野球史研究家、法政大学の学術研究員だ。二宮氏などのようなスポーツライターではない。そのため、選手に長い時間をかけてインタビューし、報道されていない本音を引き出すような手法は取っていない。あくまで研究者としての視点で、メジャーリーグの知られざる現状を分析し、その光と影を浮き彫りにしていく。

 日本人選手がメジャーで重宝されている理由のひとつに、「スモールボール」と呼ばれる手堅い野球への高い評価がある。一昨年のシカゴ・ホワイトソックスのワールドシリーズ制覇や昨年の王ジャパンによるWBC優勝により、米国でも犠打や盗塁、ヒットエンドランなど、つなぎの野球が重視されているというわけだ。

 本書の冒頭ではこのような指摘がなされるが、プロ野球通の読者なら一度は耳にしたことのある話だろう。では、さらに踏み込んだ「本当の理由」とはなにか。

 著者の見立ては、年俸はもちろん、引退後の年金、マスコミへの露出度、けがをした場合のフォローなど様々な面で、日本の球界よりメジャーの方が優れているから、というものだ。要するにカネと待遇という身も蓋もない理由だが、いかにもアナリストらしく、傍証的に明らかにしていくあたりが面白い。

 その典型とも言えるのが5章の「メジャーリーグ・ビジネス――球団オーナーたちの錬金術」と、6章の「赤字でも成り立つメジャー球団経営のカラクリ」だ。

 メジャー30球団のうち、日本では当たり前の、単一企業による保有はわずか5球団しかない。残り25球団のうち、9球団は個人所有、16球団は複数企業や個人投資家による共同出資だ。後者はいわばファンド形式の出資であり、シンシナティ・レッズは出資している機関投資家や個人投資家の名称、出資比率まで開示している。日本に比べて球団の売買が多くオーナーが頻繁に変わる理由を、鈴村氏は「メジャー経営はもうかるから」と切ってみせる。

自治体は「顔」をつぶせない

 メジャーは球団名のトップに地方自治体の名称がつく。野球に限らず、アメフトにせよバスケにせよ、米国のプロスポーツは地域を代表する存在であり、我が街の顔だ。万一、移転でもされたら、プロ野球に見捨てられた街というレッテルを貼られるため、市長は球団オーナーの言いなりにカネを出すようになる。

 例えば、フロリダ州タンパ移転をほのめかしたシカゴ・ホワイトソックスは、全額公費で新球場を建設させた。ホワイトソックスがなにも特別というわけではなく、1991年から2006年にかけて球場を新設した17球団の実質コスト負担率は平均3割にすぎない。こうした知られざるメジャーリーグのもうかる経営の実情を鈴村氏は徐々に明らかにしていく。

 圧巻は6章で展開される、メジャー球団の財務諸表の「うそ」だ。

 01年のオーナー会議で、30球団を28球団に削減することがいったん決定された。選手、ファンや自治体から猛反発を受け、結局は実現しなかったが、そのときにMLBコミッショナーであるアラン・セリグ氏が連邦議会下院の司法委員会に「30球団のうち25球団が赤字で、赤字総額は5億1900万ドル」という報告書を提出していた。

 鈴村氏は、この報告書には「不都合な真実が隠されている」と看破する。セリグ氏の数字は、球団買収費用の減価償却特例や連結経営による球団所得の分散などによって「作られた」ものであると。

 米国ではメジャー球団を購入した場合、費用の50%を5年間で償却することを、内国歳入庁が認めている。仮に5億ドルで球団を買収した場合、2億5000万ドルを5年間で償却、毎年5000万ドルを支出計上できる。例え1年で3000万ドルの利益をあげていても、帳簿上は2000万ドルの赤字になるのだ。鈴村氏によると、買収でオーナーが変わったメジャーの球団の大半は、こうした合法的な利益圧縮をしているという。

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