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「成果主義」も「負け組」もない~『草野球をとことん楽しむ』
降籏学著(評:朝山実)

新潮新書、680円(税別)

2007年10月25日(木)

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草野球をとことん楽しむ

草野球をとことん楽しむ』降籏学著、新潮新書、680円(税別)

 熊本に行ったとき、新聞の地域欄に、聞いたことのない野球チームのスコアが載っているのを見て、これって何? 地元の人に尋ねると、早朝、職場に向かう前に草野球に興じる人たちが多く、実力にあわせ、いくつものリーグ戦が1年を通して展開されているのだとか。

 そのときは、物好きだなぁと軽くすませていたが、この本を手にして、見方が変わった。

 著者は、その道20年のノンフィクション作家。10着もの異なる草野球チームのユニホームを保持し、いまでも2つのチームをかけもちするほどの「草野球バカ」でもある。わざわざ仕事の話をするなんてヤボとばかり、本書は草野球の楽しみ方に始まり、これに終わる。

 著者が所属するチームは、メンバーにスポーツ紙の野球担当記者も多いとあって、プレーを見る目は肥えている。

 どうすれば、強くなれるか。

 書いてあるのは、そんなことではない。技能を問うならば、プロはもちろん社会人野球レベルにも程遠い。しかしアマチュアならではの楽しみ方が野球にはある。むしろ、勝ち負けを度外視してみると、野球って楽しいものだったんだなぁと再認識させられるのが本書の勘所だ。

 著者の草野球に対する姿勢は一貫している。個人の妙技やチームの勝利よりも「みんなで楽しむ」ことの追求だ。

 惹きつけられたのは、序章の「プレイボール」に綴られた、試合中のこんなエピソード。

まさにそれこそが草野球

 ツーアウト、ランナー1塁の場面。敵方のバッターの打球がライト方向に、ふらふらっと上がる。誰が見てもこれでチェンジ。けれども、著者は、キャッチャーマスクを取り、「行っちゃったなあ」と放物線を目で追っている。

〈気持ちはナインも同じだ。ピッチャーも、サードも、レフトも、半ば諦め顔で打球の行方を追っている〉

 ライトの守備についているのはまったくの初心者で、カバーすべき2塁手もまた同様。予想どおりの落球、暴投で、1塁走者ばかりかバッターさえもゆうゆうとホームに帰還していく。

〈背後から、審判がぼそりと呟いた。/「こういうことを言っちゃ何だが、セカンドとライト変えたらどうかね」〉

 本来、口を挟むことのない審判にまで言われるのだから、プレーのお粗末ぶりはわかろうというもの。著者も思わず「やれやれ」の声。それでも、審判の助言にうなずいたりはしない。

 野球は9人でするスポーツ。対戦チームも合わせると18人が揃わないと試合にならない。だから、ときには上手い下手など言っていられないこともある。ワタシは、人数合わせで呼ばれ、外野を守り、ボールが飛んでこないことをお祈りしていた少年の日の広場の情景を思い出し、ふいに顔が熱くなった。そして、著者の言葉に、こんなチームならスポーツそのものに対する見方も変わったにちがいないと思った。

〈野球にエラーはつきものとは言うが、草野球とエラーは一心同体だ。エラーあり、暴投あり、押し出しあり、これに珍プレーと大爆笑が加わって、結果的に14対12くらいのスコアで、勝ったのか負けたのかわからないような大味な試合のほうが楽しい〉

 エラーしたっていいじゃないか。そんなことよりも、ポロリを続けていた選手のグラブにボールが収まったとたん、みんなで大喜びする。その瞬間を共にするために、起用し続ける。そんな醍醐味は草野球でしか、いや、草野球だからこそ味わえるものだという。

 勝つだけが野球ではない。では、負け続けてもいいのかというと、そうではない。

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