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郵政トップの所信表明演説~『挑戦――日本郵政が目指すもの』
西川善文著(評:柴田雄大)

幻冬舎新書、720円(税別)

  • 柴田 雄大

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2007年10月29日(月)

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挑戦――日本郵政が目指すもの

挑戦――日本郵政が目指すもの』西川善文著、幻冬舎新書、720円(税別)

 小泉純一郎元首相が「殺されてもやる」と言い放った郵政民営化。今年10月、ついに日本郵政株式会社が発足、郵政4事業の民営化がスタートした。本書はそのタイミングに合わせ、民営郵政のトップに就任した元三井住友銀行頭取の西川氏が自ら筆を取ったものだ。

 本書の構成は大きく二つに分かれている。前半にあたる第一部(1・2章)は、日本郵政とは直接関係ない。「民営郵政のトップがどんな人物で、どんな経歴なのか、国民に伝えるのもトップの仕事」との考えから、奈良の材木商の家に生まれ、子供の頃から負けず嫌いだったことや、大学時代、住銀時代のエピソード、銀行を退いて民営郵政のトップに就任するまでの心境などを綴っている。そして、第二部(3~6章)が日本郵政のトップに就任した西川氏の、いわば所信表明演説になっている。

 住銀時代からカリスマ性の強い経営者として知られていた西川氏だが、その人生行路はこれまで断片的に伝えられている程度だった。まとまって本人の口から語られるのは、おそらく初めてではないだろうか。

 西川氏は大阪大学時代、新聞記者志望だったが、奈良の実家にいた4年生の夏休み、住銀に就職が内定していた友人に「ちょっと大阪まで出てこないか」と誘われる。その友人は「誰か友達を連れてこい」と銀行から言われ、西川氏に声をかけたのだという。その日のうちに人事部長、担当専務の面接を受け、西川氏の住銀就職が内定する。そのときの人事部長が後の頭取の磯田一郎氏だった。

 2章で披露される駆け出し行員時代のエピソードがなかなか面白い。1961年4月、同期の仲間はみな大きな支店に配属されたのに、西川氏の最初の配属先は大正区の小さな支店だった。そこで預金獲得の目標を達成できないなど、決して順調とは言えない日々が続いていた。

ちょっと謙遜が過ぎませんか

 転機は3年目。大学時代の友人2人がそれぞれの勤務先を退職、大学に戻って研究者の道を歩み始めたのをみた西川氏は、自分も彼らに続こうと思い、支店長にこう告げる。「銀行を辞めようと思っています」。

 支店長は「早まってはいけない。必ず次に、君の将来に役立つポストを与えるから」と説得。思いとどまった西川氏は翌年、本店の調査部に異動する。当時の住銀は「調査の住友」と言われ、調査部は花形部署だった。ここでの7年間で西川氏は頭角を現していく。

 なんだ、あの西川さんも、若いころはぱっとせず、会社を辞めたいと思ったことがあったのかと、ほっとさせられる。

 反面、「それはちょっと違うだろう」と言いたくなるような箇所もある。例えば、取締役に就任する場面だ。

 融資3部長として安宅産業の破綻処理を完遂、丸の内支店長を1年務め、経営の中枢である企画部長へ――誰がみてもエリートコースに乗っている。ところが西川氏は本書の中で、「まさか自分が取締役になるとは思わなかった」と振り返る。「おいおい、西川さん、ちょっとしらじらしいよ」と思わず口に出た。

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