大人も楽しめる『迷路絵本シリーズ』が売れに売れている。じわじわと部数を伸ばし、シリーズ4作の累計で37万部を突破した。描かれている建物や生き物の絵は、きちんと考証がなされたものであり、楽しみながら学べる仕掛けになっている。著者の香川元太郎氏は「良質のエンターテインメント」なら、子供たちの心に響くと考えた。
(聞き手は日経ビジネスオンライン 大村洋司)
―― 絵本の世界では1万部でも大ヒットですが、4冊で37万部とは…。これほど売れると思っていましたか。

迷路絵本シリーズの著者、香川元太郎(かがわ・げんたろう)氏
1959年愛媛県生まれ。高校時代に日本画に興味を持ち、大学で日本画を学ぶ。迷路的な要素のある町工場、線路の入り組んだ操車場などをモチーフにした作品を発表して画壇へ。その後、城の研究者と知り合ったのがきっかけで歴史を学び、歴史考証イラストの世界へ移り、歴史雑誌や学習参考書などに多数の作品を描いてきた。花や風景を描く日本画家でもあり、「東京の四季の花・木」シリーズなどの切手や、絵入り官製はがきで、多くの原画が採用されている (写真:山西英二、以下同)
香川 1万部で上出来と思っていたので驚いています。ただ、少しばかり自信はありました。これまで迷路の絵本はいろいろとありましたが、ここまで細かく描き込んだ絵本は今までに絶対にないという思いがありましたから。
―― “遊べて学べる本”を描こうと思ったきっかけは。
香川 迷路だけの絵本を予定して出版社に企画を持ち込んだのですが、編集者から「歴史の知識も盛り込んでほしい」「隠し絵ももっと入れてほしい」との助言をもらい、要素のたくさん入ったリアルな世界を描いた絵本になりました。子供向けだからといってデフォルメするのではなく、細部まできっちりと描きました。
子供は絵を何度も見ていると、その中身を覚えてしまいます。だから、例えば鎌倉時代の武士の屋敷を描く時も、基本的な形をしっかりと描いています。子供の記憶に残る時に、大きな間違いは少なくとも起きないようにしたかったのです。屋敷の横には、馬上で弓矢の練習をしている武士を描いています。そのシーンは『男衾三郎絵巻』を参考にしましたが、絵はできる限り歴史考証に基づいて描いています。一方で、かつての『ウォーリーをさがせ!』のような、楽しい要素もあちこちに散りばめました。そうした仕掛けによって、何度見ても飽きることのない本として受け入れられたようです。
―― リアルな絵を、子供たちが楽しんでくれたというわけですね。
教訓がある絵本もいいけれども、子供が「面白い、楽しい」と思って夢中になれるものが、子供にとっていい絵本だと僕は思うのです。それがきちんとした内容であり、質の高いエンターテインメントであれば、親も安心できるでしょう。

【迷路絵本シリーズ】
『時の迷路』、『文明の迷路』、『自然遺産の迷路』、『進化の迷路』
香川元太郎著、PHP研究所、定価はいずれも1300円(税別)
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