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伝説の4コマ漫画が映画になるまで~「自虐の詩」プロデューサー・植田博樹氏【前編】

2007年11月1日(木)

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 パンチパーマ頭のイサオ(阿部寛)が、「でぇーーーい」とちゃぶ台をひっくり返す。もう慣れっこなのか、妻の幸江(中谷美紀)はあわてるわけでもない。映画『自虐の詩』には、原作のヘソともいえる「ちゃぶ台返し」が、スローカットで映し出される。

 「ずっと僕は、意味もなくちゃぶ台をひっくり返す人がいるんだろうぐらいに思っていたんですが、イサオというのは言葉で自分の思いをなかなか説明することができない。だから、子供がダダをこねるようにひっくり返すんだなあと。阿部さんが寡黙な男を演じているのを見て、僕が撮影の現場で気づいたことですよね。

 もちろん、あの行為そのものはギャグなんですけどね。一度ただ黙って、ちゃぶ台をひっくり返して部屋を出ていくシーンがあるんです。怒っているのは相手に対してではない。自分の不甲斐なさに対してなんだと、阿部さんが肩のあたりで表現していたんですよ」

 それは役者とキャラクターとの一体感を感じた瞬間でもあった、と映画『自虐の詩』プロデューサーの植田さんはちょっぴり嬉しげである。現場で役者を通して気付かされることは多い。そんなこともあるからこの仕事はやめられないのだろう。

 業田良家の『自虐の詩』は奇妙な変遷をたどった4コマ漫画だ。

 定職にもつかずパチンコ通いのイサオは、機嫌が悪くなると、ちゃぶ台をひっくり返す。どう見ても、ロクでもない男にもかかわらず、同居する幸江は男の腕をしっかり掴んで離そうとしない。ダメ男に惚れる、耐える女。「悲劇の女」であることに、うっとりしているかのふうにも思える。そんな幸江と、しゃべらない男との日々を綴った4コマ漫画が「週刊宝石」に連載されたのは、1985年から90年のこと。時代はバブルのど真ん中。饒舌と喧騒の端っこで、「ビンボー」「薄幸」「無口」な夫婦の話は、遠い昔を手繰り寄せるような匂いとともに異色の漫画だった。

 竹書房から文庫版が出たのは1996年。やがて「日本一泣ける文庫」との噂が噂を呼び、ジミに書店の平台に積まれ続け、累計50万部を超えるロングセラーとなる。

 その『自虐の詩』が今秋、映画となった。監督は「ケイゾク」「トリック」の堤幸彦。主演の二人には、中谷美紀と阿部寛の配役だ。

「自虐の詩」

自虐の詩 (C)2007「自虐の詩」フィルムパートナーズ
渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中

「こんな奇跡の作品、映像化するなんて無理」。

 プロデューサーの植田博樹さんは、「ケイゾク」「ビューティフルライフ」などを手がけてきた。1967年生まれで、TBSに入社したのは90年。『自虐の詩』を手にしたのは、2002年の冬だった。

 植田さんは、映画のオフィシャルブログの製作日記にこう記している。

 〈友人に勧められて、「自虐の詩」の原作を渋谷のブックファーストで買う。/渋谷の駅で読み始め、会社で、下巻にうっかりと突入。ご多聞にもれず、フロアーの中心で号泣してしまった。/すごい漫画があるなあ……と、ただただ圧倒される。もちろん映像化などと、途方もない夢を見ることはなかった。/こんな奇跡の作品、映像化するなんて無理。分はわきまえている。〉

 一度は無理と判断したものの、映像化の噂を耳にし、いてもたってもいられなくなり、版元の竹書房に乗り込んでしまったのは、2003年1月のことだ。

*  *  *  *  *

── 植田さんが『自虐の詩』を映画化するにあたっての経緯から、お話してもらえますか。

植田 最初は4コマ漫画というのは、映像にするのはいちばん難しいメディアですし、無理だろう。でもまあ、誰かがやるんだろうなぁと思っていたんです。ブログの日記に書いたとおり。

「自虐の詩」プロデューサー・植田博樹氏

「自虐の詩」プロデューサー・植田博樹氏

 テレビ局の中の「編成」という部署にいたこともあって、映像化するとなると、それなりのやり方はわかっている。ただ、ザクザクっと処理するよくあるやり方にこれは合わないとも思っていた。難しいですよ。やっぱり。そこが自分でも躊躇したところでもあって。

 でも、誰かがやるとなって、どうやるんだろうかって? 考えれば考えるほど、ほかの人に任せたらこれはロクなものにならない。俺が作らなきゃ、と思った。そこで暴走するんです。ゴーマンなことに。

 竹書房さんには、いまのようなことをそのまま言いに行きました。たぶん、担当の方は、映像業界の人はみんなこんな詐欺師みたいな人だと思ったかもしれない。でも、麻雀雑誌やパチンコ雑誌を出しているところだから、ギャンブルとして、面白いと思ってもらえたんでしょうかねえ。

 そのときの企画書じたいは、そんなに変わったものじゃなかった。キャスト案と監督案と、イメージを説明しただけのものだったと思います。

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