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『中国を追われたウイグル人――亡命者が語る政治弾圧』水谷尚子著、文春新書、840円(税別)
「ウイグル人」と聞いて、読者のみなさんはどんなことが思い浮かぶだろう。
評者の場合、ウイグル人を知るきっかけは、出来ればここに書きたくないくらい不純であった。
1990年、カザフスタンのアルマアタ(当時)を訪れたときのこと。カザフ人、キルギス人、ウズベク人など、民族のバザールとでも呼ぶべき多彩な顔だちの人々といきあうなか、評者が好みの顔(潤みがちの垂れ目男)を見つけてはしゃぐたび、
「あの人はウイグルだよ」
ロシア人の友だちが決まってそういうのだった。「中国側に大勢住んでいて、政治的に大変なのでソ連側(当時)へ逃げてきた人も多いよ」。へぇ? で、それっきりである。
当時、崩壊寸前だったソ連邦。だが同じ頃、天山山脈を跨いだ中国側の新疆ウイグル自治区(ウイグル側は東トルキスタンと呼ぶ)でも、ウイグル人による反政府運動が頻発していたとは――。
本書は、1990年代後半以降に新疆を追われ、米国、ドイツ、トルコなどに散ったウイグル人亡命者たちの証言集である。
むごく扱われる「マイナー」難民
大富豪から一転、投獄、亡命を経て東トルキスタン独立運動のリーダーとなった女性(ノーベル平和賞有力候補のラビア・カーディル)。新疆で実施される核実験の後遺症を告発する英国のテレビ番組に協力し、中国を追われた医師。「恐怖分子」(テロリスト)の容疑をかけられドイツに逃れた超有名タレント。東大の博士課程で学んでいたウイグル人研究者も、現在政治犯として中国で投獄されている。
弾圧、拘束、拷問、脱出。むごたらしい話が次々と明かされる。
一口に政治亡命といっても、すんなり行き先が決まるわけではない。同じチュルク系民族として比較的受け入れに手厚いトルコ、そのトルコ系移民を多数抱えるからかどうか、やはり寛容なドイツ。一方で、旧ソ連から独立した中央アジアの国々は現在、ウイグル人が逃げてきても中国側に強制送還するようになっている。〈政権党が権力維持のために民主化や独立運動を恐れている点では、中国と中央アジア諸国は状況が一致する〉からのようだ。
一方、難民や政治亡命者にもメジャーな集団とマイナーな人たちがあり、ウイグル人は明らかに後者に属する。約3000万といわれるクルド人人口には及ばぬものの、推定800万〜1000万人もいるとされるウイグル人の知名度は、チベット人やチェチェン人らに比べて国際的にも高いとはいえない。
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