• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

フリーターさん、もっと「危機感」を!~『プレカリアート』
雨宮処凛著(評:荻野進介)

洋泉社新書y、780円(税別)

  • 荻野 進介

バックナンバー

2007年11月1日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間1時間48分

プレカリアート デジタル日雇い世代の不安な生き方

プレカリアート デジタル日雇い世代の不安な生き方』雨宮処凛著、洋泉社新書y、780円(税別)

 「万国のプロレタリア、団結せよ!」と、マルクスとエンゲルスがアジる『共産党宣言』が西洋の端っこ、ロンドンで出版されたのが1848年。それから百数十年の歳月が経ち、東洋の端っこにあるこの国で、プレカリアート(=不安定な雇用・過酷な労働状況を余儀なくされる非正規雇用者・失業者)を代弁し、「生きさせよ!」と訴える本書が上梓された。プレカリアートとは、「Precario(不安定な)」「(Proletariato(プロレタリアート)」(いずれもイタリア語)を組み合わせた造語である。

 日本におけるプレカリアートの典型が若年ホームレスたちだ。日雇い派遣で仕事をこなし、6000円から8000円といった額の日銭を稼ぐものの、まとまったお金がない、身元保証人がいないなどの理由で、雨露をしのぐ部屋すらも借りられず、ネットカフェや24時間営業のマクドナルドを寝ぐらにする現代日本の“難民”たちである。

「日雇い派遣」「貧困ビジネス」と「生活保護」

 プレカリアート問題の根柢には、バブル崩壊の余波を受け、自ら望んでも正社員になれなかった若者の増加という問題がある。業績悪化を人件費の切り下げで回避しようと、企業が新卒採用を大幅に切りつめたからだ。正社員になれなかった若者はフリーターに、あるいは人材派遣会社へと流れていった。

 企業の意を充分に汲んだのが政府である。それまでは臨時的・一時的な労働力だった派遣の性格を変え、いつでもクビ切りができる使い捨ての安価な労働力に仕立てていった。労働者派遣法の度重なる改正によって、である。以前なら禁止されていた製造業にまで、派遣を認めたことで、究極の不安定雇用である「日雇い派遣」が始まったと著者は怒りを露にする。

 一方、どこにでも蜜に群がる蟻がいるものだ。人材派遣会社、消費者金融、格安料金で一夜の宿を提供し、仕事も斡旋する通称レストボックス(昔のドヤ・飯場)、敷金礼金ゼロの不動産物件、保証人ビジネスなど、プレカリアート相手の商売で儲ける「貧困ビジネス」の一群である。

 これらに一度絡め取られると抜け出すのが困難で、しかも本人にその自覚はない。一番よい解決法は生活保護を受けることだ、と著者はいう。調べてみたら、住んでいる地域の福祉事務所に行って申請すれば、受給可能かどうかはすぐわかるらしい。ちなみに、東京でひとり暮らしをしている20歳から40歳の成人の場合、ひと月あたりの上限は13万7400円(家賃込み)だという。結構もらえるものだ。

あれ? そういうことなの?

 以上がこの本のいわば概論。以下で、実際のプレカリアートに迫っていくのだが、彼らの悲惨な実態が明らかにされるというわけではなく、正直、少し肩透かしを食らった気分になる。

 「プレカリアートを生み出す社会の仕組みがおかしい。何とか変えなければ」と、元プレカリアートでもあった著者が熱い思いで取材していくのに対して、「自分がそういう生活を選んだのだから、社会が甘やかしてはいけない」「貧乏でも楽しく生きる方法はある」と、そんな姿勢に疑問をもつ、あっけらかんとした若者が多いのである。たとえ当事者でも、社会や政治に対する怒りをもっていない若者が多数派だ、と著者も素直に認める。

 この本で圧巻なのは、男性フリーター2人と、大企業勤務の勝ち組女性、団塊世代の主婦、それに著者らが加わった「就職氷河期世代の逆襲!」と題した座談会である。

コメント8件コメント/レビュー

フリータの皆様も、この著者のように現象を書物にし、話題に乗って稼ぐような能力が欲しいですね。現状を受け入れて、そこで儲ける強かさも必要なのでは。というよりフリータの気ままな生活を楽しんでいるんじゃぁないかと思う私は不純でしょうか。(2007/11/02)

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

フリータの皆様も、この著者のように現象を書物にし、話題に乗って稼ぐような能力が欲しいですね。現状を受け入れて、そこで儲ける強かさも必要なのでは。というよりフリータの気ままな生活を楽しんでいるんじゃぁないかと思う私は不純でしょうか。(2007/11/02)

生活保護は、ちゃんと仕事をして、税金を払って、最大限の自助努力の結果、生活に困っている人のためにあるもので、いずれは自助努力の結果として、保護を受けなくてすむことが前提と考えるべきで、社会の枠の中に収まろうとしない責任感も強調意識も無い人を保護するためのものではないでしょ。健康で時間があるなら働いて当然。働き方は人それぞれで良いとは思うが、最低限、秩序は守らなきゃだめ。著者は自分にあわせて環境を変えろといってるが、迷惑な話だ。人が社会に合わせなければ秩序は保てない。秩序が保てなければ、それは人が安心して住める世界ではなくなる。そうなったとき、真先に淘汰されるのが自分達であることを、考えられないなら、本当に頭悪いね。自由であるということは、自然に近い状態。自然が厳しいということを知らないのであれば、さっさと淘汰されてくれた方が良い。ニートもフリーターも消えてなくなった方が良い。(2007/11/02)

鳶ではなくても、寿司屋などの職人色の強い調理人や伝統工芸師などで人材不足が常態化している。実際に店を閉めたところも多い。一方で弱者であるフリーターに安住する若者。二極分化の下層出身や教育機会に恵まれなかった場合、這い上がるのは非常に厳しい。だからこそ諦めが蔓延しているのだろう。こんな日本に誰がした?いや、実はバブル期にも社会構造が今のようになってしまう指摘(少子高齢化/グローバル競争)は結構あった。浮かれて誰も気がつかなかっただけ(マスコミも取り上げなかった)。厳しい言葉だが、自身が、親が、気が付いていれば多少は違う階層や職業を選定できたかもしれない。(本当に申し訳ないが)とはいえ、この事態を放っておいた(わざと)為政者の責任だし、一部勝ち組を除いて、日本ではこうした格差社会は望まれていないだろう。(どうすればイイのか?)いま一度経済から社会制度まですべてリセットしてしまいたいところだ。国債や年金制度、官僚制度、独占企業、教育、すべて壊してしまえないものか。(民主党とか共産党でもできなさそうだが)(2007/11/01)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長