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宇宙の“芸術"ハッブル望遠鏡~18年の軌跡

  • 藤田 宏之

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2007年11月9日(金)

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 雲のない日、太陽が昇る前か、沈んで間もないころの空を眺めてみてほしい。はるか上空に、太陽の光を浴びて輝く人工衛星をみつけられるかもしれない。

 ハッブル宇宙望遠鏡も、そうした人工衛星の1つだ。600キロメートル上空の軌道を、星と同じくらいの明るさでゆっくりと進んでいる。大気の揺らぎのせいでもたついて見えるが、実際には一定のスピードで回っている。そもそも、このように大気の揺らぎによって像がゆがむのを防ぐため、ハッブル宇宙望遠鏡は大気圏の外へ打ち上げられた。



2002年1月、いっかくじゅう座の星が突然、太陽の60万倍もの明るさで輝き出した。周囲にある塵の雲がそれを反射し、「光のこだま」となった。低温の赤色巨星の周りにできたこの光のこだまは、2006年までに徐々に小さくなっていた。
2002年1月、いっかくじゅう座の星が突然、太陽の60万倍もの明るさで輝き出した。周囲にある塵の雲がそれを反射し、「光のこだま」となった。低温の赤色巨星の周りにできたこの光のこだまは、2006年までに徐々に小さくなっていた

 だが、打ち上げをめぐっては、本当にもたついた。打ち上げ予定は何年にもわたってたびたび延期されたうえ、ようやく打ち上げに成功したかと思えば直後に欠陥が見つかり、スペースシャトルの乗組員に修理してもらう始末。それでも、繰り返し改良が加えられた結果、ハッブル宇宙望遠鏡は世界有数の“科学の道具”に進化した。

 ハッブルが送り届けてくれる画像を通して宇宙を垣間見た人は数知れない。そのデータは科学者に重宝され、星団や星雲、銀河を写しだした美しい画像は、偉大な天文学者エドウィン・ハッブルにちなんだこの望遠鏡を世界に知らしめた。

 無人の宇宙望遠鏡がこれほど活躍することになったのは、考えてみれば当然だ。科学の進歩といえば、天才が画期的な発見をするものと思われがちだが、そうした見方は近代科学以前の時代の名残でしかない。科学が革命的に進歩する時は、たいていの場合、道具が力を発揮する。とりわけ望遠鏡が果たした役割は計り知れない。

 たとえば、広く根づいていた天動説の欠陥を明らかにしたのは、ガリレオが頭で考えた理論というより、彼の望遠鏡ごしに見えるまぎれもない事実だった。ニュートン力学が、長年にわたって唯一の基本原理でありつづけたのは、その理論の鮮やかさもさることながら、望遠鏡の向こうで起きていることを的確に予測できたからだ。

 科学の道具を用いて観察した事実は、何世紀にもわたって積み上げられた理論を一掃してしまうこともある。ガリレオと同時代の数学者ヨハネス・ケプラーは、すぐにそう悟った。ケプラーは望遠鏡での観測よりも計算によって天体の動きを探る学者だったが、ガリレオが数々の発見をなした望遠鏡を「大いなる知の筒にして、いかなる笏杖よりも貴重なり」とたたえた。

 ハッブル宇宙望遠鏡はいわば、ガリレオの「望遠鏡」を、ケプラーが導き出した「軌道」にのせた道具だ。もしこの2人が現代によみがえってハッブル宇宙望遠鏡を見たら、何と言うだろう。技術の進歩に驚くだろうか。それよりもむしろ、観測を通じて古い理論に疑問を投げかけられることや、観測結果がインターネットで公開され、科学の知識がいつでもだれでも見られる状態になっていることに感動するのではないだろうか。

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