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どう見られたっていいじゃない~『あなたは人にどう見られているか』
松本聡子著(評:朝山実)

文春新書、710円(税別)

2007年11月15日(木)

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評者の読了時間3時間30分

あなたは人にどう見られているか

あなたは人にどう見られているか』松本聡子著、文春新書、710円(税別)

 「餃子の王将」で友人と夕飯をすませたときのこと。店を出てから、その友人は、隣の席のカップルがどんな会話をしていたのかを話しはじめた。

 二人とも若い。おそらく大学生だろう。男の子は「ここの餃子、どう、いけるだろう」。彼女が「そうね」とうなずいてからというもの、彼は一方的にしゃべり、女の子は無口なまま。

 席に着いたときから、友人は隣をチェックしていたそうだ。男の子は、ラーメンにライスが付いたセットメニューを頼んだのに対して、彼女が注文したのは単品の「春巻き」だけ。ここで男の子は、店の選択にミスはなかったのか、検証してみてもよかった。あるいは、二人の温度差を感知できないほど、男の子は舞い上がっていたのかもしれない。

 ちなみに彼女のイデタチは気合の入ったデート仕様、話しぶりの丁寧さから二人の仲はそれほど親密ではない様子。初デート? と友人は気にかけていたらしい。そうならば、ディナーが餃子という予想外の展開に、彼女の無言は、戸惑いを隠せなかったことになる。

 「この春巻き、焦げてない?」と彼女は不満のサインを送ってみたものの、男の子はこれを見事にスルーし、熱心にご飯と餃子のおいしい食べ方をレクチャーする。大いに成り行きが気になっていたところで、友人とワタシは店を出たわけだ。

 本書は「人は、他人をどう見ているのか」について、多様な研究例をもとに解説した本だ。著者のプロフィールには、東工大フェローにして、都内総合病院に心理士として勤務中とある。

自分とは何か

 ワタシが抱く「自分」と、他人がワタシに抱くイメージは食い違っている。ひとり芝居の第一人者であるイッセー尾形氏たちが企画・運営されている「イッセー尾形のつくり方」というワークショップでは、「他人の歩き方を真似る」という稽古がある。

 ふだんは意識することなく「ふつう」だと思っている自分の歩き方を、目の前で他人に真似されてみると、妙に居心地が悪いものだ。そんな、おかしな歩き方をしているのか、と落ち込んだりする。逆に真似る側も、これをきっかけに、他人の些細な個性が気にかかるようになる。

 この稽古は、「自分」とは何か、他人の目を利用しながら身体でつかもうとするトレーニングになっていて、初めてテープレコーダーに録音された「自分」の声を聴いたときの、「これがオレ(わたし)なの…」な発見がある。

 捉えがたい「自分」というもの。他人が認める「自分」と、自分が考える「わたし」との違いについて、落ち着いて認識しましょう、というのが本書の柱になっている。歩き方の真似にも似た、「自分」を知るための柔軟体操みたいなものともいえる。

 瞳孔を大きく見せると、好感度は上がる。だからアニメのキャラクターやモデルさんは思いっきりパッチリと目を開けているのだ、とか。

 話しているときの目線が左右、上下。どこに向かっているかで、相手の対話に対する真剣度や頭の中が推測できる、とか。

 初対面の集まりで議論をすると、横に座った人に同調しやすく、好感を持たれるのと会った回数とは比例するものだ、とか。

 クリントン大統領が不倫問題を追及され、大陪審の証言中に26回も鼻をさすったのを例に、嘘をつこうとすると鼻がムズムズする生理的なメカニズを紹介してみたり。

 ある作品についてコメントを求められたものの、否定的な評価を抱いている。好感をもたれるように対処するには、称賛の言葉と批判の言葉、どちらを先に口にするのがいいのか、など。

 嫌われないコツ、仕草から相手の心の中を探り当てるヒケツの数々は、この種の本を読みなれた人であれば、「ああ、知っている」「まあ、そうだろうなぁ」と意外性や目新しさには乏しいかもしれない。

 しかし、「人から、自分はどう見られているのか」という、誰しも気にする「自分」の外見と内面の誤差を説明し尽くしたあとの本書の結論は、意外性に富んでいる。土俵際のうっちゃりみたいなものだ。

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