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なぜ「ゆとり教育」は失敗したのか?
~学校は「有限」の資源である【後編】

  • 広田 照幸,斎藤 哲也

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2007年11月30日(金)

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【特命助手サイトーの前説】

 以前、助手サイトーは『学生による教育再生会議』(平凡社新書)という本を書評したことがあります。大学生が教育再生会議による改革案を検証した本書のなかで、とくに印象的だったのは、ゆとり教育世代の彼らが、「主体性」「思考力」「表現力」「問題解決能力」といった「新学力」のコンセプトを積極的に肯定していることでした。

 現行の学習指導要領から始まった「総合的学習の時間」は、まさに「新学力」をコンセプトにしたカリキュラムでしたが、現場の教員にはすこぶる評判が悪い。それはなぜなのか?「総合的学習の時間」を有効に生かすには、学校現場にどんな改善が必要なのか?

 新しい学習指導要領案や総合的学習の時間について、みなさまからのご意見をお待ちしております。

 ものを知らずして「創造力」や「独創性」が単独であるわけではない。知識を組み合わせるような学力には、そのためのストックが必要だ、ということを前回お話しました。その傍証となるようなデータを紹介します。

 下の図は、ベネッセが2003年に東京都内の二つの小学校で実施した適性検査の成績と、学校の成績との相関を表したものです。この適性検査は、もともと岡山県の中学校で実施されたもので、応用力・思考力・表現力を問うタイプのテストです。

検査の総合得点と学校の成績のクロスグラフ

出典元:ベネッセ教育研究会開発センター『ベネッセ発親子で伸ばす「本物の学力」』日経BP社、2006年、124ページ

 この図から読み取れることはどんなことでしょうか? ベネッセは、著書のなかで「学校の成績がいい子どもが、この検査でもいい得点が取れるとは限らない」(グループ2、3)が、同時に「普段の勉強について一定の基礎が身についていないと十分な解答ができない」(グループ4)と読み解いています。

 基礎知識があるからといって、すぐに応用力に結びつくわけではない。しかし、グループ1に大きな固まりがみられるように、学校の成績(旧来型の学力)と応用力の間には、一定の相関があることもまた確かです。

 先日報道された、全国学力テストの結果でも、都道府県別の結果を見る限り、知識中心のA問題で得点が高い県は、応用力を測ったB問題でもおおむね高い傾向がみられます。

 そういう点で見ると、「ゆとり教育」のカリキュラム削減やスリム化は、得策ではありませんでした。「学習指導要領や教科書は、上限を定めたものではなく、できる子はどんどん深いところまでやっていってよい」といった説明もなされましたが、学習指導要領や教科書を中心にしてやってきたこれまでの多くの先生方が、どういうふうに教科書と授業との対応づけを組み立て直して、できる子だけでなく全体の底上げをしていけばよいのかについて混乱した、というのもまた事実でした。

 私としては、特に、「学力の低下」よりも、「学力の格差」──低学力層の学力の底が抜けていくような事態──が気になります(広田「学力の格差をどう考えるか」『大阪保険医雑誌』第471号、2006年)。

「総合的な学習の時間」はなぜ現場で不人気なのか?

 誤解しないでほしいのですが、「だから詰め込み教育に徹しろ」と言いたいわけではありません。以下、二つのことを言います。

 一つには、総合的な学習の時間(以下、「総合学習」)で学ぶような、知識を組み合わせるような学力は重要だと私も思います。大学教育で教える側が苦労することの一つは、学生たちが大学入学以前に、多様な知識を組み合わせるような経験があまりにも乏しい点です。日本のこれまでの教育の弱点だといえます。

 フィンランドの教育とか、イギリスのシチズンシップ教育など、日本の教育が海外から学ぶべきものの一つはそれだと思います。「ゆとり教育見直し」の流れが強まっている中で、その点はきちんといままで以上に重視されていくべきでしょう。いろんな知識を組み合わせて、問いを立て、答え方をさがし、答えの複雑さを経験していく、という意味で、総合学習の意義は大きいと思います。

 しかし、総合学習は現場の先生に不人気でした。なぜでしょうか。

コメント37件コメント/レビュー

日本の教育に足りないのは、下層を救う力だと思います。僕が高校生活を送った外国では自分のカリキュラムは自分で決定します。また、小学生の時から、学力が足りなければ留年です。これは、例えば小学5年の学力がないのに6年の教育を受けさせることは差別だからなのです。もちろん専門性が高くなるデメリットはありますけど、時間的余裕もできるというメリットと、何より生徒のやる気が違いますが、お二人はどのようにお考えなのでしょうね。(2008/04/04)

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日本の教育に足りないのは、下層を救う力だと思います。僕が高校生活を送った外国では自分のカリキュラムは自分で決定します。また、小学生の時から、学力が足りなければ留年です。これは、例えば小学5年の学力がないのに6年の教育を受けさせることは差別だからなのです。もちろん専門性が高くなるデメリットはありますけど、時間的余裕もできるというメリットと、何より生徒のやる気が違いますが、お二人はどのようにお考えなのでしょうね。(2008/04/04)

教員って本当に忙しいんですね。研修研修また研修の日々。新任教師が苦労する漫画に教員の研修計画が法律で定められているとあったので検索(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kenshu/index.htm)してみると(校内研修)週10時間以上、年間300時間以上。(校外研修)年間25日以上とありました(平成16年度実績)。本来の教師の業務のほかにここまで研修が課せられています。カレンダーにこのスケジュールを書いてみるとぞっとします。企業の研修でもここまで厳しいものは少ないでしょう。私は民間企業の技術者ですが、請われて他の企業の研修所に臨時講師に行くことがありまして、比べてみるとやっぱり教員の研修って厳しいと思います。研修と言いますが、実際は残業(校内研修)や出張(校外研修)に当たりますし。(2008/02/23)

社会経験がほぼ皆無な教師達にいきなり実践的な応用をさようとしても土台無理な話でしょう。教育に関しても、具体的に何に役立つかを示す事例が少ないように感じるのは私だけでしょうか。物理学の教室でも、学んでいることが最先端の技術とどう結びついていることが理解できていない学生が多いといいます。確かに学校が割けるリソースには限界があると思います。その中でファンダメンタルな部分に焦点を当てていかねばならないのは当然の流れではあると思います。読み書きそろばんと言われたように社会生活を営む上で欠かすことのできない部分は徹底的にフォローする。(体育、芸術、図工もですよ)基礎があった上での人生の選択があっていいと思うのですがいかがなもんでしょうか。何も全員が大学に行く前提で考える必要はないのではないかと考えます。例えば、職人さんがもっと重きを置かれるような教育、社会であってもいいのではないでしょうか。それでも、九九ができないような人が大人になることに強い危機感を感じます。九九ができないのにアインシュタインを求めてもダメでしょう。(2008/01/26)

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