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消極的平和主義を捨てて~『新・戦争論』
伊藤憲一著(評:小田嶋隆)

新潮新書、680円(税別)

2007年11月16日(金)

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評者の読了時間4時間00分

新・戦争論 積極的平和主義への提言

新・戦争論 積極的平和主義への提言』伊藤憲一著、新潮新書、680円(税別)

 戦争は、まず第一に、国際政治学の最重要課題であり、同時に、経済学、人類学の永遠のテーマでもある。戦時および平時における戦略論、さらには、戦闘当事者にとっての戦術論の方向から分析する必要もあるし、軍事技術という、よりマニアックな視点からの見方も無視できないだろう。また、人類の闘争本能という点から見れば、生物学的な見地からの分析も可能になる。

 『新・戦争論』は、こうした、広範な分野に、漏れなく触れる形で執筆されているのだが、これは、読者の側から見ると、次から次へと新しい論点が登場するようにも見える。で、それらのそれぞれにやっかいな論題に、明確な解答が与えられないうちに、さらに新しい疑問点が浮かび上がってくるわけだからして、正直、読了するには、かなり骨の折れる本だと言うことができる。

 もちろん、本書のわかりにくさの主たる理由は、戦争という主題が、あまりにも巨大であるためで、文章のデキの悪さや、書き方の不親切さに由来するものではないのだが、それでも、素人がいきなり読んで内容を理解するのが困難である旨は、あらかじめ覚悟しておいた方が良い。

 たとえば、冒頭部分で、〈私の観察するところでは、「紛争」という言葉と「戦争」という言葉を明確に区別せずに始めた議論は、必ず泥沼に入っています〉[P46]

 と言いながら、本書の議論は、「戦争」という用語の定義をめぐって、自ら泥沼に入って行っているように見える。

全面的戦争なき「不戦時代」がやってきた

 無論、このあたりの言葉の定義は、それ自体一章を要するところで、ここをなおざりにすると、議論が先に進まないのであろう。とすれば、サクサクと書き進めるわけにも行かないのだろうが、だとしても、初心の読者にはキツい。

 筆者は、本書で「不戦時代」の到来を告げている。これは、国家(より正確には、「独立的政治単位」と呼ぶべき原国家を含む)と国家が全面的に対決するタイプの軍事的な紛争が、起こり得なくなっていることを指している。

 現在でもなお、散発的な地域紛争は暫時発生しているし、テロ組織と軍隊の戦闘はむしろ増えている。また、いわゆる破壊国家の中で、たとえばウガンダで起こっているような大量虐殺が発生することも稀ではない。しかしながら、それらは、過去の歴史の中で繰り返されてきた「戦争」とは異質な「紛争」に過ぎない、と筆者は言うのである。

 たとえばイラク戦争も、筆者は、戦争とは見なしていない。これについては「対イラク軍事制裁」という言い方をしている。

 ただ、イラク戦争を戦争と見なさない理由が、「アメリカを非難すべきでないから」というのは、ちょっと奇妙な理屈(筆者は、過去の国際連盟の失敗例を挙げ、「そのことを思えば、国連決議を実行するために行動した米国を批判することは、大局的判断を見失った大きな誤りだと思うのです」[P151~152]と言っている)であるように思えるのだが、いずれにしても、国家間の全面的戦争を前提とした戦争観が既に過去のものになっているという主張は、本書において一貫している。

 全面戦争が起こらない理由は、おおまかに言って、以下の三点。

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「消極的平和主義を捨てて~『新・戦争論』
伊藤憲一著(評:小田嶋隆)」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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