「超ビジネス書レビュー」

貧乏よりも『ホームレス中学生』を悲しませたのは
〜「がんばれ俺たち!」が伝える生きていく価値

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2007年11月21日(水)

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 お笑いブームの中、よく出てくる「麒麟(きりん)」という漫才コンビの左側、色が黒くて、いわゆる「いい男」ではないつっこみの方、田村裕。本書は、お父さん、お兄さん、お姉さん、裕、という構成の田村家が、裕、中学一年の夏、突然「解散」するところから始まる。

 「ああ、テレビで見たよ、知ってる知ってる、貧乏ネタね」
 「近所の公園に住んでたって話でしょ」
 と言われるかもしれない。

 その通りである。そして、それ以外のことが、たくさん詰まっている。

家族解散

ホームレス中学生

ホームレス中学生』田村裕、ワニブックス、1300円(税抜き)

 中学一年の裕が一学期の終業式から帰宅したら、自宅マンションに「差し押さえ」の札がベタベタ貼られていた。家にも入れず、呆然と立ちすくむ大学生の兄、高校生の姉、中学生の裕の前に現れた父が告げた言葉は「解散!」であった。

 何らかの経済的な事情で家を失ったら、家族一丸となってどこかに避難するのではないか。バラバラにするならメドをたてつつ配置するのではないか。否。この父は「解散!」と宣言して、真っ先に立ち去った。

 兄、姉に心配かけまいと「友だちのところに泊まらせてもらう」と言いつつ、中学生の裕は雨を避けて公園の「ウンコ」型遊具の中に住まう。小遣い銭はすぐに底をついた。

<何も食べるものが無く、困り果てているときに目に飛び込んできたのは、公園の草>

 野菜と大差ないはずだから、と、試しに食べてみる。

<苦くて緑臭くて美味しくなかった。野菜と大差無いはずなのに、みんなが食べないわけである。昔の人はちゃんと食べ比べた結果、美味しい草の情報のみを残してくれたのだ。昔の人、ありがとう>

 水に浸したダンボールまで食べた。一文無しで、コンビニのパン売り場の前に座りこんだ。店員からの死角だ。盗ってしまおうか、いや、いけない、と葛藤する。そして1時間以上が経過したとき、ふと新たな考えが浮かんできた。

<中学生が1時間以上パン売り場の前にしゃがんでいたら、店員もしくは他の客はどう思うだろう。何か様子がおかしいと思うのが普通じゃないか>

 裕は、誰かが哀れんで買ってくれること、とりあえず、どうしたの、と聞いてくれることなどを期待して座り込みを続けるが、2時間たっても3時間たっても徒労だった。がっかりして公園に戻ると、どこかのおじさんが鳩にパンの耳をやっていた。裕はパンの耳をねだった。受け取るやいなやむさぼり食った。

<驚きのあまり、おじさんの息を吸う音がはっきりと聞こえた。あんなにはっきり人の息を吸う音を聞いたのは初めてだったけど、そんなことはお構い無しにパンの耳をむさぼった。
 そして、「ごめん、鳩」とあやまった>

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著者プロフィール

折野 冬葱(おりの・わけぎ)

1957年、東京生まれ。漫才やコントの台本作家、「ザ・テレビ演芸」(テレビ朝日)などの構成作家を経て、パソコン系ライターに。日経クリックで「バックさんアップさん」、日経パソコンで「超素朴な疑問」「社長のいまさらあいてぃ」、日経WinPCで「パーツのつぶやき」など漫才風コラムを連載。



このコラムについて

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