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自分すべてを手みやげに、『うさぎが鬼に会いにいく』
~喰って喰われてわかること

2007年12月5日(水)

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うさぎが鬼に会いにいく

うさぎが鬼に会いにいく』中村うさぎ、アスキー、1300円(税抜き)

 新右翼の理論家として知られる鈴木邦男氏のもとには、変わった人がよく訪ねてくるという。

 「なんで鈴木さんとこに来るんですか?」
 「話を聞いてほしいんじゃないですかね。朝から晩までずーっと家の前に座り込んでてね、『どうしたの?』って訊いたら『助けてください』って」

 本書の中の、中村うさぎさんと鈴木さんとの対話の抜粋だ。鈴木さんは、警察に追われているというその人を喫茶店に連れていき、話を聞く。

 「どうもそんな事実はないんですね。結局、願望の裏返しの恐怖なんだな。本当は尾行されたり盗聴されたりしたいわけ。自分は特別な人間である、という自己確認なんですよね」

 鈴木さんが言うには、自分の「凡庸さ」を堪えきれず、「警察に追われる」なる妄想(実は只者ではない願望)に逃げ込もうとする。そんな若者が増えているという。いや、そうしたショートカット行動は若者に限らない。自我の不安は世代を超えたものにちがいない。

 「鬼」と範疇分けした人たちに著者が会いにいく、インタビューのようでもありコラムのようでもある本だ。

鬼たちのナマナマしい臨場感

 会った人の名前を列記すると、佐川一政、植垣康博、三浦和義、岡留安則、釣崎清隆、バクシーシ山下、日野日出志、マツコ・デラックス、田嶋陽子、鈴木啓之、そして鈴木邦男の11人。元・連合赤軍兵士、死体写真家、AV監督、怪奇漫画家、女装趣味……。一言でいうとキワモノ揃い。こうしたインタビュー集自体はめずらしくもないが、これはかなり異色の本にあたる。

 話を聞きながら、著者が何を考えたのか。つぶさに脳内の模様が進行形で綴られる。もちろんライブの勢いそのままではなく、事後の目線、冷静になって整理もなされている。それでも、整えきれない、現場ならでの臨場感がナマナマしいままに生かされている。

 先の鈴木氏のアプローチがそうだ。この種のアウトローものではレギュラーメンバーだが、話題の中心は、冒頭に引用したような、若者の「居場所探し」について。話しっぷりは、駆け込み寺の和尚さん。馴れ合い口調でもなく、自然体。意外な一面を著者は引き出している。

 「鈴木さんはどうするんですか、そういう人たちを」
 「最近の例で言えばね、凄い人がいたんですよ。毎日夜中にやって来て、ドンドンドンとか扉を叩いてね。しょうがないからファミレスとか行って話を聞いてあげるんだけど、それが一日に二回も三回も来るわけ。それで思い余って、一水会の若者たちに紹介したんですよ」

 鈴木さんが言う、一水会とは彼が以前、氏代表を務めていた民族派の右翼団体。ドアを叩いていた若者はその後、「昔の自分は病気だった」と振り返るくらい、ふつうの人になったそうだ。熱心な右翼活動家がふつうの人にあるたかどうかはさておき、妄想からは解放されたらしい。

 「それは何故、治ったんですかねぇ?」と訊ねる著者。

 「居場所ができたからじゃないですかね。皆に認められて、組織の中で役割とかも与えられてね。最近は新宿で、一水会の街宣車に乗って喋ってるんですよ。『日本は狂っている!』って、狂っていたのはおまえじゃないか、と(笑)」

 ちゃんとオチまでつけるあたりに鈴木さんの人柄が表れる。いまどき壊れかかったアブない人間を好んで受け容れる、そんな場所は容易に見つかるものではない。

 若者は幸運だった。願望がかなったのだから。街宣車で演説ブッたりしてナンだよっていうのは、おとなのツッコミ。たとえ小さなことでも、当人にとって、自分がひとの役にたっていると思えることのほうが重要で、達成感や責任感によって顔つきまで変わるのが人間というもの。

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