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何が起こっても守ってあげる

  • 小橋 昭彦

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2007年11月26日(月)

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 その夜、PTAの役員会で、町内で起こった声かけ事案の話題が出たと伴侶が聞いて帰りました。「お菓子やおもちゃがあるよ」と車から誘われたそうで、他にも2件が続けて起こったというのです。

 翌日、学校の集会でも注意があったようです。「怖いでー」と言いながら長男が帰ってきました。次男がもらってきた幼稚園からの便りにも、子どもに知らない人についていかないよう、よく言い聞かせてくださいとありました。

「あの道も暗くて危ないもんな、気をつけるように言わんとあかんなあ」

 伴侶と話しつつ、ふと、それは正しいことなのだろうかと、疑問を抱きました。

「なあ」

 と問いかけてみます。「こんな風に、世の中は怖いって、怖がらせてばかりでええんやろか」。

 うーん、というのが伴侶の答え。もとより結論を期待しての問いかけではないので、それでも充分です。ぼくは続けました。

「そんな風に、小さい頃から社会に対する不信感を抱かせて、いったいどんな大人になるんかな。それより、何が起こっても大人はきみたちを守ってあげるから大丈夫だよって、そう言ってあげることがたいせつなんじゃないかなあ」

 うーん、そうねぇ、と伴侶。

「まあ、学校としてはそんな能天気なことを言って、何かあったら責任問題になるから、言えないんだろうけどね」

 これは毒の強すぎる皮肉を楽しんでみたまで。先生たちが本心で子どもを心配してくれていることは知っています。

「まあ、そうかもねぇ」

 伴侶があわせてくれた風だったので、

「世の中はそういう楽天的なことでは通用しなくなったんやろなあ」

 とフォローして、その場の会話は打ち切りました。

世の中は危なくなった?

 ぼくたちが子どもの頃、世の中はどんなだったでしょうか。今ほど不安に脅えていたでしょうか。大学生であるあなたの場合、まだほんの10年ほど前ということになりますね。世の中に対して、子どもを狙う怖い人が多いという思いを抱いていたでしょうか。

 ぼくの場合は、もう30年ほど前のこと。当時でも、アメをくれると誘われてもついていってはいけない、と注意されていたように思います。吉展ちゃん誘拐殺人事件の記憶がまだ薄れていない時期だったかもしれません。ただ、だからといって、登下校に見守りがつくといった状況までにはなっていませんでした。学校が終われば、友だちと道草して帰ったものです。

 当時と比べて、治安はそれほど悪化したのでしょうか。それが、ぼくにはよくわからないのです。確かに、平日の昼に田んぼで働く人が減って、大人の目が少なくなったかもしれません。上級生と下級生が連れ立って近所の野原で遊ぶ姿も見なくなりました。見守りボランティア制度が始まって、これは皮肉なことだけど、子どもたちはいっそう上下で遊ぶ機会を失いました。帰りの時間さえのんびりできませんからね。いわゆる「地域コミュニティの弱体化」というのでしょう、人間関係のなかで子どもたちをつないでおく力が薄れているのは否定できないかもしれません。

 それでも、実際にこの地域で目に見えて犯罪が増えたわけではないんです。コミュニティが弱体化したとはいえ、たとえば朝の登校時にお茶工場のおじちゃんが子どもたちの列に、

「おはよう!」

 って声をかけたり、帰り道の製材所のおじちゃんが、フォークリフトで木を運びつつ、
「お帰り!」
「帰りました!」

 というやりとりを子どもたちとしている。その程度の地域とのつながりはあるわけです(そのおじちゃんが「○○くん」のお父さんであったりもするからこそでもあるでしょうけれど)。

不安の原因は…

 じゃあぼくたちは何故、不安を感じているのでしょう。

 振り返ってみると、主に子どもが巻き込まれた事件の報道からなんですね。多くの場合それは、どこか遠くの出来事です。ある地方で起こった犯罪がメディアで取り上げられ、子どもが危険に囲まれているといったニュアンスで伝えられる。それをそのまま自分の地域にもあてはめて、「怖い世の中になったね」と言っている。

コメント3件コメント/レビュー

自分の住んでいる地域には悪い人はいないハズ、まさに「ムラ」の発想そのもの。都会人には理解できない。そのように考えるのは勝手だが、子どもに安全の全責任を押し付けていることに何故気づかないのか?「大人は悪い人ばかりではない」と「子どもを犯罪から守りたい」を両立させたければ、登下校は親が付き添う、放課後も一人で行動させないといったことでしか解決できない。自分があれこれ悩むのは勝手だが、子どもにそのつけをまわし、ヒロイズムに酔っているだけではないか?放課後パトロールの異常さをわかっているなら、何故子どもを迎えに行かないのか?自分の子ども時代を懐かしがっているのは勝手だが、それとて時代のほんのひとコマでしかない。子どもたちは「今」を生きている。(2007/11/27)

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自分の住んでいる地域には悪い人はいないハズ、まさに「ムラ」の発想そのもの。都会人には理解できない。そのように考えるのは勝手だが、子どもに安全の全責任を押し付けていることに何故気づかないのか?「大人は悪い人ばかりではない」と「子どもを犯罪から守りたい」を両立させたければ、登下校は親が付き添う、放課後も一人で行動させないといったことでしか解決できない。自分があれこれ悩むのは勝手だが、子どもにそのつけをまわし、ヒロイズムに酔っているだけではないか?放課後パトロールの異常さをわかっているなら、何故子どもを迎えに行かないのか?自分の子ども時代を懐かしがっているのは勝手だが、それとて時代のほんのひとコマでしかない。子どもたちは「今」を生きている。(2007/11/27)

親の過剰反応――これが大きい気がします。。。以前、深夜に親に連れられて居酒屋に来た子が、親が目を話している間に外に出て、それを見かけたおじいさんがアイスを買ってあげたら、おじいさんが逮捕されちゃった、という事件がありましたよね。あれは、親が「子供を保護してくれてありがとう」とおじいさんに感謝すべきなのに、「見守りの目」を持つ側が犯罪者扱いされてしまった。別の事件でも、子供を叱った近所の人が逮捕されることは多発していて。。。そうした、「見守りの目」=「犯罪者」となる世の中の原因は、親の過剰反応だと思いますね。(2007/11/27)

とても大事なことを悩んでいらっしゃるように思いますし、その悩みにはとても共感できる点があります。読者の一部からは「今の時代に何を悠長なことを言っているのだ!」というお叱りがあるかもしれませんが、その一方で、「他人を信頼できない子どもに育てたくないという気持ちは一緒!」と思う方の声もあるかもしれません。悩ましいことですよね。こうした問題を、簡単に一方を取って一方を切り捨てるという発想ではなく、小橋さんのように両方を分かった上で徹底的に悩み抜くということが大事なのでしょうね・・・そう思うので、とても共感できた次第です。(2007/11/26)

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