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普通に生きて、普通に死ね~『会社員の父から息子へ』
勢古浩爾著(評:柴田雄大)

ちくま新書、680円(税別)

  • 柴田 雄大

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2007年11月29日(木)

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評者の読了時間3時間30分

会社員の父から息子へ

会社員の父から息子へ』勢古浩爾著、ちくま新書、680円(税別)

 父親から息子へのメッセージと言えば、毛利元就の「3本の矢」に代表されるように、人生の教訓を語るものが多い。企業のトップが経営を譲るとき、政治家が地盤を譲るとき、あるいはスポーツ選手が指導者になったときのように、自らの経験に基づいた、人生を歩む術を伝授するのが常だろう。

 とはいえ、こうした功成り名を遂げた人物や、哲学者、宗教家などの人生は、一般人にとっては、簡単にまねできないし、書物になった人生論を読み進めるうちに、自慢話を聞かされている気分になることも少なくない。

 本書の著者である勢古氏は、タイトルにもあるように普通のサラリーマンOBだ。明治大学を卒業し、洋書の輸入販売を手掛ける小さな会社に34年間勤め、昨年退職した。1947年生まれとあるから、二人の息子も、すでにいい大人になっているのだろうと思う。

 自分の来し方を「父として子供に見せられるような背中はなかった」と振り返るものの、誰にでも、ひとりの男として息子に伝えたいことはあるはずだ、という思いから筆を執ったという。ただ父から息子への手紙の形式でつづられているわけでなく、日記風な文体でもない。

 著者の人生論をひたすら淡々と語っているだけだが、伝えたいメッセージは明確だ。今どき珍しい、ちょっと古いタイプの人間が、「普通に生きるのが一番」と熱く語りかけてくる。

 勢古氏の父親ぶりは、自分でも認めている通り、あまりほめられたものではない。授業参観や運動会には1~2度、それも通算で5分か10分しかいたことがない。家族で連れ立って歩くのが嫌い、友達のような親子などまっぴら。「私は間違いなくおもしろくない男だ」と居直っている。

「空気が読めない」堅物です

 私にも二人の息子がいるので、多少、説教する時にでも参考になるかなと思ったが、まったく役に立たなかった。もし本書の中の勢古氏のような調子で、今中学生の二人の息子に語りかけたら、たちまち「オヤジ、KYだよ」などと言われ、聞く耳を持たれないだろう。

 勢古氏は様々な立場から自分の思いを語る。会社員としていかに働くか。夫としていかに妻を愛するか。社会人としていかにカネと付き合うか。そしていかに死んでいくか。その語り口はあくまで木訥で、味も素っ気もない。その代わり自らの体験を、失敗談や恥を中心に、すべてさらけ出している。

 会社員としての経験も、うらやましいような場面はほとんど出てこない。就職活動中には30数社の試験に落ち、新聞の求人広告でみつけた会社にようやく入ることができた。小さな会社で給料は安い。5年くらい勤めるかと入ったら、定年まで居てしまった。

 「給料が安いことを除けば、いい会社だった」という洋書輸入販売会社で、著者はおよそ、ごますりとは無縁な、いい意味で融通の利かない堅物な社員として生きてきた。

 誰も言わないのなら俺が言ってやる。でも対立するのは常に上の人間、それも理不尽な問題が発生したときだけ、というから、上司にとっては目障りな存在でも、同僚や後輩には慕われていたのだろう。今どき、どこの会社にもこんな社員は少ない。対立するのは常に下の人間、それも自分が安全圏にいるときだけ戦うふりをする、そんな社員が多いのではないだろうか。

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