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そう、そこを褒めてほしいの!~『人ったらし』
亀和田武著(評:荻野進介)

文春新書、710円(税抜)

  • 荻野 進介

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2007年12月3日(月)

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評者の読了時間1時間45分

人ったらし

人ったらし』亀和田武著、文春新書、710円(税抜)

 書名が「人たらし」だったら手に取らなかったかもしれない。

 「人たらし」ではなく、「人ったらし」。司馬遼太郎のよき理解者である谷沢永一は、人が褒めてもらいたい、認めてもらいたい要所を見抜き、さりげなく口にできる、類稀な気配りの才をもった司馬のことを「ひと蕩し」と賞賛したが、自販機ポルノの生みの親、学生時代はゲバ棒持って暴れていた口の、この本の著者には促音の「っ」がついた「人ったらし」のほうがやっぱりふさわしい。

 現れただけでその場の空気が一変する、その人の映像をテレビで観たり、その人の文章を読むだけで元気になり、前向きなパワーが湧いてくる。そんな特別な能力をもった人が「人ったらし」だ。

 有名どころなら桑田佳祐、沢木耕太郎、色川武大、川上宗薫、梨本勝、吉本隆明、無名どころなら数知れず……著者が実際に会った、あるいは映像や活字を通して見知った、人ったらしの魅力に迫りつつ、そうなるための極意を解き明かした本である。

 人ったらし、最大の武器が会話力だろう。著者の予備校時代の友人、三浪で芸大志望のヤマグチ君(評者注:後にコラムニストになった山口文憲のはずである)は会話の錬金術師、その話は聞く人を魅了して止まなかった。彼にかかれば、5分間の短い話でも、最低3つのヤマ場があって、もちろんオチもある、起承転結の明解なゴシップ噺を必ず聞かせてくれたというのだ。

アントニオ猪木の笑顔は恐い

 話が面白いのはネタを仕入れるのがうまいからである。彼の抜群の会話力の基盤にあったのが、人の話を丹念に聴く能力だった。例えば、地味で目立たない、初対面の女性が彼と会って1時間も経たないうち、毎日使うシャンプーの銘柄から親の収入、兄弟の出身校、果ては男性経験の数まで克明に喋らされている場面が多々あったという。

 人ったらしは女性を口説くのもうまい。普通の男なら顔から火を吹きそうな科白も、平気で口にできる。作家兼ミュージシャンの辻仁成が、後に結婚することになる女優の中山美穂に初対面で言ったとされる言葉が「やっと会えたね」。

 雑誌の対談の冒頭、遅れてきた辻が中山に発した言葉で、過去、パリの空港で見かけたことがあった、というのがその理由。しかも「僕の書いた小説に出てくる(中略)沓子という女性に重なったんですよね。通路を戻ってみたりしながら、少し眺めてしまった」って、おいおい、雑誌の対談で口説くなよ。

 一方、会話力といっても、自分の自慢話ばかりしている人は、人ったらしには絶対になれない。逆に「それ、知りません」と己の知識不足を人前にさらけ出せる人は見込みがある。これは人付き合いの基本だろう。

 会話力で勝負するタイプが、著者がいうところの「さわやかな人ったらし」とすれば、それとは正反対のタイプが、「チョイ悪(ワル)」ではまだ甘い、「愛すべき悪」である。その典型として著者が持ち上げるのがアントニオ猪木である。

 著者は、本業のプロレスそっちのけで、ブラジルでの新事業に夢中になり、結果的に多くの仲間やレスラーを不幸にさせた猪木が嫌いだった。しかし、かつての威光が過去のものになりながらも、格闘技はもちろん、政治やビジネスについての壮大な夢を、屈託ない笑みを浮かべながら語る姿を見て、「おもしろい奴だ」と見方が変わったのだという。

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