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“村八分”が土地の救世主に

新潟県・松之山【4】

  • 宮嶋 康彦

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2007年12月6日(木)

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 ある朝のこと、戸邊さんの生命力を端的に物語る事件に遭遇した。

 人間の味覚をうるわしく刺激する食物。噛み応え、喉越しに快感をあたえ、胃に下り腸を通過して形を変え、再び外界に押し出された、雲古。戸邊さんの雲古を見たときのことだ。
 
 戸邊さんの自宅で偶然目にすることになったそれは、黒い、ナマコのようであった。太い、ナスビのようにも見えたが、判然としない…。顔を近づけて、よくよく観察したのだった。

ヒトが本来持つ強さをその塊に見た!

 もしや、と思うと同時に、筆者は後ずさった。おそるおそる、再び近寄ってみる。間違いない。とっさに水洗のノズルを引いた、勢いよく水が流れる。しかし、それは流れない。さらに顔を近づける。間違いなく、雲古だ。

 しかし、それにしても力強い塊! しかも臭いがしない。食べ物が完璧に消化されたということだ。なんという健全な雲古か、ああ、これが戸邊さんの命の強さなんだ、と見入った。

 稲にしてもそうだ。全長は1メートル20センチと長く、茎は見たこともないほど太い。根は長く、絡まりながら茂っている。数束の稲を借りてスタジオに持ち込み、撮影用のライトを当てたとき、稲という生物の逞しさに唸った。

 茨城県土浦市の友人の農家から頂戴したコシヒカリと比較して、その、あまりの違いに驚いた。長塚節の『土』だったか、稲には百姓の思いが乗り移る、といったくだりが出てくるが、この根も茎も穂も、戸邊さんの雲古、いや、肉体そのものではないのか、とファインダーに映る稲を見つめた。いつになく、シャッターを切る指に力が入る。

 ヒト科ヒトが持つ、生物としての強さを、スポーツ選手はともかく、周囲に見ることは久しくなかった。筆者の友人たちは、戸邊さんに比べればおしなべてひ弱にすぎる。誰にでも備わっているはずの動物としての肉体の力を、便利と手軽に堕して弱体させてしまった。

江戸時代からの土地の有力者が異端の扉を叩いた

 人口2800人、限界集落を多く抱える松之山で、戸邊さんの生き方は「地方再生」の道筋を示すことができるのだろうか。筆者はその生命力の強さに期待をこめて、光明を感じ取っている。

 いつの時代もそうであったように、たった1人の情熱が時代に変革をもたらしたという「物語」を見聞きしてきたからだ。異端と言われようが、訪問者がいなかろうが、横溢する戸邊さんの生命力が輝いていれば、やがてその生きざまに共感する人が出てくる。

 いや、すでに、今年になってから数人が、戸邊さんの「生き方」という扉を叩いている。それこそ、松之山再生の先駆けともいえる動きが、すでに出ている。

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