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「ニュースな女たち」で90年代を語ろう~『女の読み方』
中森明夫著(評:近藤正高)

朝日新書、720円(税別)

  • 近藤 正高

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2007年12月10日(月)

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評者の読了時間3時間45分

女の読み方

女の読み方』中森明夫著、朝日新書、720円(税別)

〈八〇年代はピンク・レディーの時代だった。七〇年代が、じゃない。八〇年代こそが、ピンク・レディーの時代だったのだ〉

 本書は、「週刊SPA!」で1990年から2002年まで連載された「ニュースな女たち」から100本のコラムを精選したものである。そのなかのひとつ、ピンク・レディーについてのコラム(「八〇年代を準備する ピンク・レディー」。初出は1990年12月12日)は、上のような書き出しではじまる。

 いちおう説明しておくと、ピンク・レディーという女性アイドルデュオは1976年、「ペッパー警部」でレコードデビューし、81年3月31日に後楽園球場で解散コンサートを行なっている。「UFO」でレコード大賞を受賞した78年頃がまさにピークであったことを考えると、彼女たちは70年代のアイドル以外の何者でもないだろう。

 しかし、著者は「アイドルとしてのピンク・レディー」が解散したあと、80年代に入ってから「状況としてのピンク・レディー」、あるいは「方法(システム)としてのピンク・レディー」の時代が始まったと書く。

〈ドラゴン・クエストや『少年ジャンプ』、東京ディズニーランドといった今や一千万人市場の大ヒット商品群も、実はピンク・レディー・システムの後継者(フォロワー)なのだ。つまりピンク・レディーそのものは任天堂ファミコン機械本体で、一曲一曲がゲームソフトにあたる〉

 さらには、その曲づくりにおいても、たとえば「UFO」ではSF世界を、「モンスター」ではホラーワールドを、というぐあいに、ピンク・レディーはのちのドラクエに代表されるロールプレイングゲームの方法論を実践していたと著者は看破している。すなわち、80年代的な商品やそれを生み出すシステムの多くは、すでに70年代、彼女たちによって先取りされていたというわけだ。

 著者は本書の別のコラムのなかで、「アイドルは時代の反映ではない、時代こそがアイドルを模倣するのだ」(「新世紀の女 宮沢りえ」)と書いているが、ピンク・レディーほどこの“テーゼ”に当てはまるアイドルもいないだろう。

語られないピンク・レディー/90年代

 ところで、著者は前述のコラムを下敷きにしたと思われるピンク・レディー論を1991年に発表している(「ピンク・レディーの八〇年代論」)。本書に先立ち今春刊行された『アイドルにっぽん』(新潮社)に収録された同論によれば、アイドル論が隆盛した80年代にあって、ピンク・レディーはまったくといっていいほど論じられることがなかったという。

 80年代はピンク・レディー的なシステムが一般化した時代だったが、皮肉にもその起源であるはずの彼女たちを誰もが忘れようとした10年でもあった、と著者は書いている。これは、現在における「90年代」の扱いともよく似ているかもしれない。

 本書の序章でも指摘されているが、近年、80年代論が盛んであるのに対して、90年代論にはほとんどお目にかからない。いや、個々のできごとに関してなら、それこそオウム事件などはいまでもよく語られている。しかし、総体としての90年代を論じようという向きは皆無に等しい。それは、あまりに価値観が多様化・細分化され(あるいは失われ)、時代の全体像をとらえるのが困難になったということもあるのだろう。その状況はいまなお続いている。

 ようするに90年代は現状の起源でもあるわけだが、そのことすら多くの人は忘れようとしてはいまいか。「失われた10年」「ロストジェネレーション」といった語には、そんな人々の思いが込められているようにも感じられる。

「小さな物語」となったコラム

 と、ここでようやく本題に入るが……本書に収められたコラムは、まさにその「失われた10年」のあいだに書き続けられたものであり、とりあげられる女性は、アイドルや女優などの芸能人を中心に、作家やアーティストなど多岐にわたる。

 著者自ら「90年代論」を標榜しているものの、コラム集という非体系的な形態であるがゆえに、けっして明確に時代に輪郭を与えているわけではない。むしろ、ひとつの姿に収まらない時代を、著者は楽しんでいるふしがある。何しろ、本書に収められたコラムには、本来なら同列に語られそうもない事物が組み合わされ、読者の意表を突くものが目立つ。

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