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にぎやかな夜の校舎にて

  • 小橋 昭彦

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2007年12月12日(水)

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ムラからの手紙

 Tくんのお父さんが、ヘラを両手に麺をほぐし、

 「そろそろ入れて」

 と頼むと、ソース用の粉をあらかじめ水で溶いていたMちゃんのお父さんが、熱くなった麺と野菜にソースを振りまき、じゅっと湯気がたちました。Tくんのお父さんがそれをかき混ぜます。カン、カンと、鉄板とヘラがたてる心地よい金属音が校舎に響きます。その音は、クラブ室にも聞こえているでしょうか。そこでは子どもたちが、お母さんや先生たちと、先にできた豚汁を楽しんでいます。今回の学年の集いは、幼稚園のときにお世話になった先生や、1年生のときの担任を最後に定年退職された先生など、これまでお世話になった先生方にも参加いただいて、ひときわにぎやかです。

 「先生、2階の教室に行ってきていい?」

 焼きそばができるまでの暇つぶしでしょう、男の子たちが、2年のとき担任だったA先生に聞いています。先生は焼きそばを手伝っていた手をとめて、

 「まあ、許したろ。けど、無茶するなよ」

 と返します。はい、という声だけ残して、暗くなった廊下を駆けていく子どもたち。夜の学校は、ひときわ楽しいものなのでしょうね。そろそろ階段を登りきった頃だろうかと見上げると、校舎の2階は見えず、中庭にせり出したひさしの蛍光灯が目にまぶしく映りました。そういえばこの蛍光灯は、集いの準備が始まった頃、Tくんのお父さんが点けたのでした。鉄板や鍋を並べつつ、

 「暗いなあ」

 と父親同士で言っていたところ、そのあたりにスイッチがあったはずやで、と言って探しに行ってくれたのです。まだ若いA先生は、

 「ええ、ここの電気、点くんですか」

 なんて言っていて、Tくんのお父さんは、「先生より学校のことに詳しいんか」と他のお父さんにちゃかされながら、

 「いやあ、いろいろ出入りしとるから」

 なんて笑っている。豚汁用の大鍋は我が家から持ってきたのでしたが、

 「大鍋も、プールの横の倉庫に入ってるから、これからはそれを使うたらええ」

 とも教えてくれました。

 「ええ、そんなんまであるんですか」

 とこれはまたA先生で、再び父親たちから、A先生はまだ修行が足りんなあと突っ込まれていたのでした。

学年の集いと消防団

 3年生の親子で交流しようという今回の集いは、秋も深まってからの開催になりました。寒いだろうと大鍋をメインに企画したのですが、Yくんのお父さんが、焼き物も欲しいと鳥と牛肉を仕入れてきてくれました。子ども用に焼きそばを作った後は、もっぱら鉄板焼きです。多少はアルコールも準備していたのですが、Tくんのお父さんもYくんのお父さんも、この後消防団の仕事があるとかで、お茶で済ませています。それでも、トングで肉を転がしながら、

 「おもろいなあ」

 とずっとニコニコ。「やっぱりこういう集まりはやらなあかんなあ」

 そういえば、この学年単独で集いをしたのは初めてだったかもしれません。どのお父さんもそれなりに見知った顔なのですが、考えてみれば、ゆっくりと話をする機会はなかったかも。

 実はこのお父さん方の中で、ぼくは少し浮いた、というか、あまりつきあいが深いほうじゃないのです。というのも、他のお父さんは、長くこの地域で暮らしていて、消防団活動をされてきました。ところが、ぼくはこちらにUターンしてきて5年、帰ってきた頃にはすでに年がいっていたせいでしょう、消防団の声もかからず、貢献しないままこうしています。こんなことを言うと叱られるかもしれませんが、消防団活動は、互いの絆を深めるためにも役立っているようです。おおむね40歳を過ぎた頃が定年とあって、いわば若者のつきあいができる場でもあります。鶏肉をいためながら、

 「あの頃は武勇伝が多かったなあ」

 なんて話になっています。その様子を眺めながら、ぼくはそこに入っていけないことを残念に思っている。

 「先生はやってるの」

 尋ねられたA先生が、

 「ああ、やってます」

 と隣町の消防区域の名前をあげました。先生も、学校だけじゃなく、しっかり地元に貢献しているんだなあ。それがまた新鮮でした。

感情の仲間と機能の仲間

 あなたは大学の仲間と、どんなつき合いをしていますか。学生時代の友人は、かけがえのないものです。いま振り返って思うのに、仲間のあり方には、二種類あるんじゃないかという気がします。

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