「NBO新書レビュー」

世界が「バブルへGO!」だったってことさ!〜『サブプライム問題とは何か』
春山昇華著(評:石山新平)

宝島新書、700円(税別)

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2007年12月14日(金)

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評者の読了時間3時間00分

 いま世界の金融市場を揺るがせているサブプライムローン問題は、最先端の金融技術によって膨れ上がった21世紀型の危機のように思われがちだ。

 だが実は、問題の根源が「カネの貸し手が自ら与信リスクを負わなくなった」という、極めて基本的な金融界の「モラルハザード(倫理の欠如)」にあることを、好著『サブプライム問題とは何か』は教えてくれる。

そこで止まっては本質は分からない

サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉

サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉』春山昇華著、宝島新書、700円(税別)

 多くのメディアでは、サブプライムローンを「信用力の低い個人向け住宅融資」と通り一遍に説明するだけで済ませている。あとは金融機関の間で転売されていった証券化商品の話に移るというのがお決まりだ。

 ところが、この本では、そもそもサブプライムとはどんなローンなのか、その融資を受ける「信用力の低い個人」とはどんな人たちか、彼らにローンを組ませるためにどんな金融業者が暗躍したかを、分かりやすく紹介している。

 そして様々な実例の積み上げで、どうやら米国金融界の根本が「腐っている」らしいことが分かってくると、現在金融界を覆っているサブプライム危機といわれるものが、そう簡単には終焉しないのだというという結論を読者自らが確信するようになる。サブタイトルの「アメリカ帝国の終焉」は、決して大仰ではない、ということが分かってくる。

 サブプライムローンとはどんなものか。簡単にまとめると以下のようになる。

 所得が低かったり、過去に住宅ローンの返済が滞ったことがあるといった理由で、一般の住宅ローン(プライムローン)を借りることができない人向けの融資。一般のローンより金利が高いが、初2年間だけは返済額が小さく抑えられるなどの特徴があり、低所得者に広がっていった。住宅価格つまり担保価値が上昇し続けることが前提になっている。

恐怖のNINJAローン

 この本の冒頭では、サブプライムの典型として、住宅価格上昇の絶頂期だった2005年ごろに登場した「NINJA(ニンジャ)ローン」と呼ばれるすさまじい例が持ち出される。NINJAとはノー・インカム、ノー・ジョブ・アンド・アセットの略で、所得がなく、仕事も資産もなくても借りられるというものだったそうだ。

 しかも、住宅価格が上昇すれば、担保余力が生まれるため、自動車ローンや消費ローンなども組みやすくなる。まったく所得がないに等しい人たちが、家を持ち、自動車や家電製品を買いまくっていた。そんな米国の実態があったとは驚くばかりだ。

 現在40代半ば以上の人なら知っての通り、20年近く前の日本でも同じような事が起きていた。土地を担保にすれば、毎月の返済が金利分だけでもOK、あるいは金利分も追加で融資します、という不動産担保融資があった。大手の銀行から中小の信用金庫までが、不動産の値上がりを背景にした猛烈な貸し出し競争を繰り広げたのだ。

 挙句の果てに、バブルの崩壊、つまり不動産価格の暴落で、大半の銀行が回収見込みの立たない不良債権の山を築いたわけである。そしてそのツケを払い、金融危機を乗り切るのに、「失われた10年」といわれる時間と、膨大な国民の税金を費やした。これは、以前の書評(『1997年――世界を変えた金融危機』)でも述べたが、いまのサブプライム問題の状況と酷似している。

 今回は、さらに証券化というここ10年余りで急速に進歩した金融技術が、無節操な貸し出しに拍車をかけた、という問題がある。以下、少し長くなるが、重要なポイントなので引用してみよう。

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著者プロフィール

石山新平(いしやま・しんぺい)

ジャーナリスト。1962年生まれ。業界紙、日刊経済紙、週刊経済専門誌、月刊ビジネス誌などの記者を務めた経験を持つ。経済の枠組みや制度に着目し、最近は政府の経済政策の動向にも目を光らせる。経済全般がカバーエリアだが、証券・資本市場や世界経済の先行き見通しなどを大胆に予想する視点に定評がある。

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