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第18回 忘れられない雪舟の『天橋立図』

米国クリーブランド美術館の「日本美術におけるリアリズム展」に出品

  • 宮島 新一

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2007年12月25日(火)

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 1958年にアメリカのクリーブランド美術館に持っていった「日本美術におけるリアリズム展」は、「リアリズム」という言葉が誤解を招きやすいが、これは「現実主義」と訳すべき内容の展覧会であった。シャーマン・リー館長は日本美術の特色を「装飾性」とともに「現実的」な表現にあると指摘している。かつて「装飾性」に関する展覧会は行っており、この展覧会をもって氏の日本美術観を完結させる目論見であった。「装飾性」については誰もが言うが、「現実的」な要素を強調する人はいない。これはきわめて重要な指摘だと思う。

現実と非現実の間にある雪舟の山水図

 作品とともにクリーブランド空港に降り立つと館長自らが出迎えていてくれた。館員に言わせると、「こんなことは初めて」ということだった。出品作品の中に雪舟の『天橋立図』(図版参照)が入っていた。毎日、明け暮れこの作品と対面しているうちに、初めて雪舟という画家への入り口を見つけることができた。雪舟と言えば、なんと言っても毛利博物館(山口県防府市)の『山水長巻』が有名である。これまでも何度か見る機会があった。だが、なぜこれをもって大画家と言われるのか、まったく理解できなかった。その、長年の疑問が『天橋立図』によって霧散した。

雪舟 『天橋立図』 国宝 紙本墨画淡彩 89.5×169.5センチ 室町時代(1501~1506) 京都国立博物館蔵 撮影:金井杜道/Kanai, MORIO

雪舟 『天橋立図』 国宝 紙本墨画淡彩 89.5×169.5センチ 室町時代(1501~1506) 京都国立博物館蔵 撮影:金井杜道/Kanai, MORIO

 『天橋立図』は天橋立という誰でも知っている名所を中心に、府中という守護所のある世俗の町並みをも含めて一種の俯瞰図として表したものである。今日の観光案内図のようにとても親しみやすい構図である。だから、私にも理解できた。しかし、それを水墨画で描くことによって、水墨画特有の「非現実化」という効果がこの図を単なる名所図とは異なる世界に引き上げている。

 天橋立には神話がある。砂州という自然現象は古代人にはとても不思議だったとみえて、ここを通って神が天上と行き来すると考えられていた。海中に浮かぶ島は、形が似ていることから「沓島」「冠島」といって、神が落としたものが島になったと言い伝えられている。水墨画がそなえる清浄さが神話世界を描いた図であることを納得させる。実際の土地を描きながら人影を1つも加えていないことが神秘感を増している。現実と非現実の間に雪舟の山水図がある。これまでの幻想的な水墨画とは違うところに雪舟の際だった特徴がある。『天橋立図』の場合とは逆な言い方になってしまうが、雪舟の山水図には「現実感」がある。そんなことに気付かなくても、雪舟がこれまでの水墨画家とはどこか違うことは感じられる。だが、それが何であるかが分からなくては、雪舟の本当の大きさが理解できない。『天橋立図』は雪舟に近づく第一歩となった忘れられない作品となった。

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