• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

イギリスを拠点に演奏活動を続け20年

欧米で高い評価を得ている実力派のピアニスト

  • 伊熊 よし子

バックナンバー

2007年12月27日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「イギリスのピアノ界はボリス・ベレゾフスキー(ロシア出身のピアニスト)とノリコ・オガワに任せた!」

 数年前、イギリスの新聞にこう評された実力派ピアニスト、小川典子さんが2008年にデビュー20周年を迎える。それを記念し、2月19日には東京・サントリーホールで「演奏活動20周年記念」と題したリサイタルを開く。プログラムはドビュッシーの「12の練習曲」からスタート、藤倉大の「リターニング」(日本初演)をはさみ、リストのピアノ・ソナタ ロ短調で締めくくる。

弾くたびに新たな発見があるリストのロ短調のソナタ

2008年2月にデビュー20周年のリサイタルを開くピアニストの小川典子さん

2008年2月にデビュー20周年のリサイタルを開くピアニストの小川典子さん(撮影:小川玲子、以下同)

 今回のリサイタルの選曲はものの2~3分であっさり決まった。というのは、昔からドビュッシーが大好きで弾きたくてたまらなかったが、長年弾く機会に恵まれず、ようやく近年自由に弾くことができるようになったからだ。それをオープニングに持ってくる。そして日本の作曲家の作品を紹介していくことに意欲を燃やしている小川さんは、藤倉大氏が彼女のために書いた作品を披露する。最後は、ずっと弾き続けてきたリストのソナタ。リストが「過去」なら、ドビュッシーが「現在」、さらに藤倉作品が「未来」を暗示しているようなこだわりの選曲である。

 「リストのロ短調のソナタは、私のピアニストとしての活動の節目に必ず登場してくる作品なんです。リーズ国際コンクールでも演奏しましたし、その後もことあるごとに弾いてきました。最近はしばらく弾くチャンスがなかったのですが、やはり20周年の記念リサイタルにはこのソナタを弾きたいと思ったわけです。久しぶりに楽譜を取り出してみたら、もうボロボロになっていて、懐かしい感じさえしました」

 リストのピアノ作品のひとつの頂点を築き上げているとも言われるこのピアノ・ソナタは、偉大なピアニストで超絶技巧の持ち主だったリストならではの難易度の高さが随所に見られ、ロマン主義音楽の特徴を備え、ユニークな構成を持つことで知られる。ピアニストにとっては非常に弾きごたえのある、長大な作品である。

 「不思議なもので、昔は簡単に弾くことができたところが今は難しく感じられ、またその逆の面もあります。弾けば弾くほど奥深く、魅了されていきます。楽譜を見ると、最初の2ページですべての動機が登場し、それを30ページ以上さまざまな形で表現していく。あたかも音楽の旅をしていくような楽想が全編を覆っています。弾くたびに新たな発見がある、そんな作品です。以前の私とはまた異なる、新たなリストが表現できれば、と思っています」

日本人としての自分に誇りが持てるようになった

滝廉太郎から坂本龍一まで11人の邦人作曲家のピアノ作品を録音したCDもリリースしている

滝廉太郎から坂本龍一まで11人の邦人作曲家のピアノ作品を録音したCDもリリースしている

 小川さんは、武満徹の作品を数多く演奏し、日本のみならず欧米で高い評価を得ている。生前の武満氏とも親交があり、彼から「大切な友達だ」と言われたほどである。滝廉太郎から坂本龍一まで11人の邦人作曲家のピアノ作品を入れたCDもリリースしている。

 そんな彼女のピアノを、藤倉大氏(1977年生まれ)が聴き、作品を書いてくれた。今回の記念リサイタルで演奏される「リターニング」は、2006年夏に完成した作品。短い曲だが、非常に難しい。すでにロンドンで世界初演を行っており、このリサイタルが日本初演ということになる。

 「藤倉さんは私のピアノを何度も聴いてくださっています。そして、彼の耳に届く私のピアノの特徴は、《弱音》だそうです。私は音量が出るピアニストだと言われていますが、作曲家の耳はまた違うんですね。ですから、この作品も最初から最後まで弱音で演奏されるように書かれています」

 実は、2009年に藤倉氏は小川さんのためにピアノ協奏曲を作曲することになっている。今回「リターニング」を演奏するのは、その未来の作品を見据えてのこと。日本作品を紹介し続けてきた小川さんの、ひとつの大切な自己表現、意欲の現れである。

 「日本作品の演奏や録音は、今後もずっと続けていきたいと思っています。私はもう20年もイギリスに住んでいますが、自分のアイデンティティーは日本人であること。日本が祖国であることに変わりはない。国籍を捨てようとは思いません。イギリスは大好きですが、骨を埋めようとは思わない。昔はヨーロッパ人に対してコンプレックスもあり、憧れもありましたが、今では日本人としての自分に誇りを持つことができるようになりました。というのは、イギリス人は東洋人に対して非常に興味を持ち、東洋を尊敬する気持ちを抱いてくれるからです。いろんなことを聞きたがる。武満徹さんの作品の初演にも立ち会いましたが、とても感動的な瞬間が何度もありました。日本人としての誇りを抱かせてくれました。もちろん音楽面だけではなく、あらゆる面でイギリス人は東洋、そして日本に関心を持っているのです。それが私がイギリスに長く住んでいられる大きな要因ですね」

コメント0

「音楽家訪問」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授