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「マリオ時代」の黄昏

「いいソフトさえあれば勝てる」という常識が変わりはじめた

2007年12月27日(木)

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「ゲームビジネスで大事なのは、いいソフトがあるかどうかだ」

 ゲームビジネスにおける常識中の常識です。いまでは、誰もがその常識を疑うことなく、「あのソフトが出るから、このゲーム機は元気になる」と予測したり、パッケージソフトの売れ行きによってゲームビジネスの成否を判断しています。

 この常識が誕生したのは1985年と考えていいでしょう。ファミコンに「スーパーマリオブラザーズ」が登場し、家庭用ゲームの一大ムーブメントが始まった瞬間から、「いいソフトが遊べるゲーム機が勝つ」という法則は定着しました。そしてそれは、それから20数年にわたり、つねに正しい指針でありつづけたのです。

 しかし、断言しておきましょう。ソフトこそが大事なのだ! という常識は、今後、ゆるやかに終焉を迎えます。

 暴論に聞こえるかもしれませんが、これは確実に訪れる未来です。

 ゲームビジネスは全世界規模のものとなっているため、急激に変わることはありませんが、しかし、ゆっくりと、確実に変化していくでしょう。「スーパーマリオブラザーズ」の発売から始まった「時代」は、終焉に向かって動き出しています。

Wiiの「マリオ」「ゼルダ」は、大傑作なのに伸び悩む

 その萌芽は、いたるところに見えています。

 たとえばマリオシリーズの最新作「スーパーマリオギャラクシー」。素晴らしいゲームです。溢れんばかりのアイディアと、新規性ある操作感が、超絶的な気持ちよさを提供してくれます。まぎれもない超大作であり、ゲームファンを唸らせる大傑作。Wii(ウィー)本体と同時発売された「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」も同様のタイプの大傑作ですね。

 しかし、この「マリオ」や「ゼルダ」が、大衆に愛されるヒット作かどうか? という観点から見るならば、残念ながら失敗作といっていい。

 人によって差異はあるでしょうが、楽しくなってくるのは、ゲーム開始から数時間後からです。それまでは「ゲームの楽しさを理解するための暖機運転」のような期間が続きます。その期間が終わり、操作が指に馴染んでくると、とてつもない面白さが押し寄せてくるのです。が、これだとゲームに慣れていない人は、楽しくなる前に断念してしまうはず。このため絶賛するのは、じっくりとゲームに取り組める人たちだけ、というソフトになっています。

 いわば「映画通を唸らせる映画」のような存在になっているのだ、と考えると、わかりやすいかもしれません。

 「ゲーム通を唸らせるゲーム」というポジションになった「マリオ」や「ゼルダ」に対する、市場の反応は素直なものでした。爆発的なヒットは起こらず、静かな売れ行きを見せるにとどまっています。ニンテンドーDSの大ヒットによるゲーム文化の変化が、世界に先駆けて顕在化した日本市場では、とりわけその傾向が強く見られます。

大作ソフトに対する市場からの返答

 他の大作ゲームのシリーズ続編も同様です。それらは以前ほど売れなくなっている。「いいソフトを作れば売れる」という時代に作られたソフトを、そのままパワーアップした続編が店頭に登場しても、「そんなに欲しくないなあ」という市場からの冷めた、しかし明確なメッセージが返ってくるようになりました。

 クリエイターが優れたパッケージソフトを作り、ユーザーがそれを買い、遊んで、満足する。これまでのゲームビジネスは、そうやって一方的にコンテンツが提供される形でビジネスが成立していましたが、昨今の市場の反応を見ていると、いいソフトを作って提供するだけでは、ユーザーが満足しなくなりはじめたことがわかります。

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「「マリオ時代」の黄昏」の著者

野安 ゆきお

野安 ゆきお(のやす・ゆきお)

ゲームジャーナリスト

ファミコン時代からゲーム業界に参加。1000本以上のソフトを体験し、100冊を超えるゲーム攻略本制作に参加している。ゲーム雑誌編集部、編集プロダクションを経て、現在はフリーランスとして活動中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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