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誰のためのものづくりか~『丹精で繁盛』
瀬戸山玄著(評:朝山実)

ちくま新書、720円(税別)

2008年1月15日(火)

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評者の読了時間6時間00分

丹精で繁盛――物づくりの現場を見にゆく

丹精で繁盛――物づくりの現場を見にゆく』瀬戸山玄著、ちくま新書、720円(税別)

 暮れに、お節料理を作ろうと、くわいを買いにいった。子供のころから、欠かせない大好物。これなしでは新年を迎えた気になれず、一昨年などは、大晦日に何軒もの八百屋を「くわい、ありませんか?」と尋ねまわったこともあったので、今年は早めに買出しにのぞんだのだが、スーパーで思わず腕組みしてしまった。

 売り場には、3種類の袋詰めされた、くわいが並んでいる。芽のとれた茨城産と、芽がぴんと伸びた中国産。そして、芽のついた茨城産。最安値は芽がとれたので、のこりのふたつは、それぞれ2倍、4倍の値がついている。

 くわいは、「芽が出る」という縁起もの。味に影響はないし、食べる際には捨てるものだとはいえ、芽がとれたのは……。しかし、芽ひとつの縁起に4倍もの格差があるなんて。

 そこで思ったのは、袋に最近流行りの生産者の顔写真でもついていたら、迷わずにすんだ、かも。

 本書は、手仕事の職人たちが、どんなふうにものづくりをしているのか、「丹精」という一語に凝縮して、ルポしたものだ。

 たとえば、「縄文干し」の生みの親、丸源水産の佐藤勝彦さんに密着した、第一章の「脱常識の引き金」にワタシは先のくわいではないが、心が動いてしまった。

 「縄文干し」というのは魚の干物で、映画「フラガール」の舞台となった福島県いわき市の、人気の特産物だ。いま、この干物がモウレツに食べたくて、温泉ついでに福島まで出かけていこうかとさえ思いはじめている。くわいひとつにケチケチ悩むのと矛盾しているかもしれないが。

必要だからやる。「こだわり」とは違う

 干物というと、天日に干す光景が頭に浮かぶものだが、縄文干しは風を利用する。天日なら1日で商品となるものを、日陰の風干しに3日かける。手間のかかったものだが、「こだわり」と自慢せず、必要なことをしているだけ、とさりげない普通さがいい。

 縄文干しの特色は、干す前に魚の頭をとることにある。佐藤さんによると、

「うちの場合は大きなカレイから小さなヒメカリに至るまですべて頭を落とす。頭を落として内臓も取ると、塩分をものすごく低くできる。しかもマイナス二五度に保っておけば半年もつ」

 その佐藤さん、70代のいまも包丁をもって、作業場に立っている。

 作業場は平均年齢60代後半、勤続10年以上の女性従業員が10人ほど、朝8時前に集合し、朝礼をするでもなく、大きな作業台を四方から取り囲む。寒さ対策で着膨れしたオバチャン揃いだが、熟練工だけあって身体がよく動く。

 スケトウダラの頭を落とし、三枚におろす。包丁の切れ味が落ちると、すばやく交換する。

 きびきびとしてムダのない動作。切り落とされた部分はニワトリ用の飼料にするため、回収車が日に何度もやってきて運びだす。だから、加工場特有の魚臭さはまったくない。著者は〈そばで様子に見入っていると、こちらまで包丁を一緒に握りたい気分になる〉と綴っている。

 小魚を処理するのは手間のかかることだ。しかし、予想に反して、縄文干しは高額商品ではない。ヒミツは、寸足らずだったり、不揃いだったりで、干物業者が目をくれなかった魚を仕入れてくること。種類は日によって、まちまちなのだ。

 当初は頭を落とした干物を指して、「バカでねいか」と問屋から、同業者から、さんざん言われたらしい。

 風干しにしろ、頭をとるにしろ、長年のしきたりに反する仕事の作法は、佐藤さんの家業がさつま揚げ屋だったことが影響していた。

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