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いつからそんなに大事になった?~『「プライバシー」の哲学』
仲正昌樹著(評:山本貴光+吉川浩満)

ソフトバンク新書、700円(税別)

  • 山本 貴光, 吉川 浩満

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2008年1月18日(金)

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「プライバシー」の哲学

「プライバシー」の哲学』仲正昌樹著、ソフトバンク新書、700円(税別)

 情報テクノロジーの進展にともない、「プライバシー」についての人びとの関心が高まっている。たとえば、住民基本台帳ネットワークや企業顧客情報の流出、ブログや掲示板での個人攻撃などの問題は、ネット社会ならではの現象といえるだろう。

 とはいえ、そうした場合に用いられるプライバシー概念は、従来とは異なったニュアンスを帯びている。一昔前まで、カタカナで「プライバシー」といえば、「私生活上の秘密」という意味が主流であった。それがいま、氏名や連絡先といった個人情報の扱いがプライバシー問題として語られているのである。

 本書は、近年インフレ気味に用いられる「プライバシー」という概念を、少しばかり哲学的・歴史的に考えてみる入門書である。

 プライバシー問題のむずかしさは、プライバシーというもの自体が各人にとって異なる(それこそプライベートな!)問題であり、そう簡単に単一の尺度を設定できるものではないという点にある。また当然、社会の変遷にしたがってその意味も変遷する。だからこそ、いったん立ち止まってその意味を考えようという本書の試みは貴重である。

 では、プライバシーという概念はどのように形成されてきたのだろうか。

「いかがなものか」から「大切なもの」に

 20世紀を代表する政治哲学者のひとりであるハンナ・アーレントは、西欧世界における「パブリック/プライベート」(公/私)の意味を探究した。彼女によれば、「公/私」の二分法は「人間性」の成立と密接に結びついている。

 どういうことか? 古典古代においては、政治という「パブリック」な活動を行うことこそが「人間性」の最重要な条件であった。そして、人間らしい公の活動を裏から支えるものとして「プライベート」な領域があったのである。

 語源的にも、英語の「private」という言葉は、ラテン語にさかのぼってみれば、「公的なものが欠如した状態」を意味している。それは人間性を下から支える動物性の領域であり、いわば光を支える闇そのものであった。

 そのプライベートな領域が、なぜいま重要なものとして浮上しているのか。それは、近代社会の成立と、その発展型としての大衆社会(いまわたしたちが暮らす社会)の拡大によるものだ。

 近代にいたり、古典古代においてはプライベートな領域であった「家」に任されていたある部分が、どんどん外部に流出しはじめる。その部分とは、具体的にいうと「家計」つまり「経済」である。もともとは家のなかで完結すべきであった経済的活動が、どんどんプライベートな領域の外で営まれることになったのである。

 それはパブリック/プライベートの境界線を曖昧にし、その中間に広大な「ソーシャル」(社会的)な領域を生むことになった。そのようにして誕生したソーシャルな領域は、さまざまな利害関係が交錯する場であり、人びとにストレスを強いずにはいない。

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