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ミシュランがどう言おうが、東京にロクな店はない?~『どうすれば本当においしい料理店に出会えるか』
西部一明著(評:麻野一哉)

アスキー新書、724円(税別)

  • 麻野 一哉

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2008年1月16日(水)

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どうすれば本当においしい料理店に出会えるか

どうすれば本当においしい料理店に出会えるか』 西部一明著、アスキー新書、724円(税別)

 去年、東京にミシュランがやってきた。「不当な評価」、「調査が雑」といった反論も多かったが、総じて東京のレストランのレベルが高いということに関しては異論がなかったようだ。中には、「パリよりも東京の方が上」という意見さえ目にした。

 反面、去年は食の疑惑が噴出した年でもあった。いや、去年だけではない。ここ数年ずっとだ。もう何からはじまったのかすら忘れた。雪印、ミートホープ、不二家、白い恋人、赤福、船場吉兆と枚挙にいとまがない。

 かたやフランス人も認める食の大国、かたや何を食べさせられてるのかすらわからない偽装の大国。いったい全体どうなってるのと思っていたおり、この本を読んだ。

 のっけから手厳しい。

東京で(著者の言う)真っ当な店はやっていけない

〈残念ながら、たとえば東京の西洋料理店で、わたしのような人間から見て、本当に最高の状態を実現し、その自負を店自身も持っていると認めうる料理店は、実際のところまことに少ないと申し上げなければなりません〉

 東京の食は、ヨーロッパのそれに遠く及ばない。なんと、ミシュランに真っ向から対立する意見だ。

 著者は、辻調理師学校で学び、10年以上にわたるヨーロッパ修行を経た後、自らレストランを経営していた。しかし、〈東京都における真っ当な料理店商売というものの行く末が見えてしまった〉ため、5年でたたんでしまう。

 金に糸目をつけず最高の食材を仕入れ、料理人と研究に研究をかさね、数千のレシピを作成。売り上げも伸び、おおいに流行ったのにかかわらず、だ。なぜか?

〈本来、「食」は非効率だからこそ価値を生み出す世界〉であり、〈「好きだからやっている」、「これを作ることしか知らん」というこだわり〉から意欲的なものができる。

 しかし、今は料理店だけでなく、食材を提供する側、すなわち農業や漁業の現場も、効率化、大量生産という要求に迫られ、そういった価値観のもとに仕事ができなくなっている。そんな現状に嫌気がさしたのだという。

 本物の料理には料理店と生産者の密接な関係が必須である。そう訴える著者は、あるイタリアのハムを例に挙げる。

 「クラテッロ」と呼ばれるそのハムは、作り手が限られ、かつ、冬は寒く、湿気や霧が立ち込め、夏は蒸し暑いという特殊な気候風土が出来具合を大きく左右するため、幻のハムとされている。しかも本当に出来のよいものは、生産量が極端に少なく、ほとんどが地元で消費されてしまう。だから、それを自分の店で提供したいと考える料理人は、生産者と親密な関係を築きあげ、なんとか入手しようとする。

食材、資金、すべてが不十分

 そういった関係が東京ではなかなか築けないと著者は嘆く。ちなみに、この話にはオマケがある。不思議なことに、その幻のハムが、なぜか1万キロも離れた東京のレストランに山ほど入ってくるというのだ。しかし、それは名ばかりのまがいものだと著者は指摘する。

 単なる大量生産ではなく、自分の腕に誇りをもった生産者が芸術的な食材を作る。生産者と親密な料理人がそれを使って、これまた芸術的な料理に仕上げる。このサイクルが東京にはない。ありきたりな食材しか手に入れられないため、見るべき料理店が少なくなっているというわけだ。

 また、ホンモノに出会うためには、金がいる。食にたずさわる人間には、勉強代がどうしても必要になる。しかし、チップの習慣のない日本では、勉強する金銭的余裕を持ちづらいという。

 著者は、ヨーロッパに滞在していた10年以上のあいだ、評判のよいレストランを相当数まわり、舌をきたえてきた。費やした額は億をこえたという……親の金だが。そして、帰国後、金儲けを考えない、いわば職人のためのようなレストランを開店した。その費用に2億5千万かかったという。これも親の金だが……。

〈面白いというか変な親で、店を閉めると聞いても「ああそうか」としかいいませんでした。父親も金のために働いてきたんじゃないってことなんでしょう〉

 親の名を西部邁という。

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