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交通博物館の跡地はこうなる!~『アキバをプロデュース』
妹尾堅一郎著(評:近藤正高)

アスキー新書、752円(税別)

  • 近藤 正高

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2008年1月17日(木)

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評者の読了時間3時間56分

アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡

アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡』妹尾堅一郎著、アスキー新書、752円(税別)

 秋葉原の駅前に突如として(年に数回程度しかアキバに来ない私には本当に「突如」に思えた)三つの大きなビルが現われたとき、正直いやな感じがした。

 新たに建てられたビルのうち、一つは2005年9月にオープンしたヨドバシカメラ(ヨドバシAkiba)。もう二つは、2005年3月に竣工した秋葉原ダイビル(30階建)と2006年3月に竣工した秋葉原UDXビル(22階建)で、2棟揃って「秋葉原クロスフィールド」としてグランドオープンした。

 クロスフィールドは東京都が、青果市場移転跡地や旧国鉄の秋葉原貨物駅跡地を利用した再開発構想の一環として、「IT関連産業の世界的な拠点」を形成するべく計画したものである。

 「NPO産学連携推進機構理事長」という肩書を持つ著者は、このクロスフィールドにおいて「産学提携を軸とした先端技術による産業創出・活性化の拠点形成」を進展させるとともに、「秋葉原・先端技術テーマパーク構想(現・テクノタウン構想)」を提唱。地元商店街に町会連合会、行政、企業や研究所の技術者、大学・研究機関、さらには中央省庁をも巻き込み、「構想の実現に努力して」いるという。

 だが、そもそも秋葉原が現在のように注目されることとなったのは、けっして商業開発的な仕込みによるものではない。

 そこにやって来るオタクたちの趣味に合わせて自然と関連する店舗が集まり、その店頭もアニメキャラに覆われるなど、街全体の風景が変貌を遂げたからである(このあたりについては、『趣都の誕生』など森川嘉一郎の秋葉原論にくわしい)。それを再開発や産学提携という名分のもと、人為的・計画的に街づくりを進めていこうとはおこがましいではないか。

 ……と、そんなふうに警戒心を抱きながら本書を読み始めたのだが、どうやら私は先入観にとらわれすぎていたようである。

消費の現場としてのアキバは、ほんの表層

 どうも自分は、秋葉原を一面でしかとらえていなかったようだ。いや、それ以前にほとんどのメディアが、「消費の現場」というフレームでしかアキバをとりあげていないのではないか。先日など、メイドカフェのブームはすでに衰えつつあるという主旨のドキュメンタリーがテレビで放映されていて、びっくりしてしまった。

 だが、このように東京のほかの街、たとえば渋谷や原宿などのように消費や流行の動向のみで秋葉原をとらえることは、その本質を大きく見誤ることになりかねない。

 著者は、「萌え」などで語られる部分はあくまでも側面にすぎず、「テクノロジーの街」こそが秋葉原の原点であり、起点だという。現在彼が進めているこの街の再開発構想もこうした認識に基づいている。

 近年、秋葉原には前述のヨドバシカメラをはじめ大型家電量販店の進出が相次いでいる(2007年末にはヤマダ電機が新店舗をオープンした)。メディアでは、どうしても従来の電気街が脅威にさらされているというふうに伝えられがちだが、この街にはけっしてそんなことでは崩れない強みがあると著者は主張する。

 というのも、量販店以外に数百もの「プロ向けの専門店」「パーツ店」「ジャンク店」が集まる秋葉原は、世界に類を見ない「部材(パーツ、マテリアル、デバイス)の街」であり、国内のみならず世界中から技術者やマニアが訪れる、いわば「理工系の心の故郷」になっているからだ。

 著者は、こうした強みを自覚し、世界の部材の集積・受発信機能の拠点にまで進展させるべきだと考え、クロスフィールド内における「技術の産直市場」構想を提示している。

〈クロスフィールドに技術者たちが集まり、(中略)大学や企業が持ち込んだ先端部材のデモンストレーションが行なわれ、世界へ発信されます。その部材は秋葉原の街で販売されていきます。またクロスフィールドに集まってきた技術者は、互いに交流し、街の顧客となるでしょう。このサイクルが生まれてこそ、秋葉原の街は活性化するのです〉

ビル栄えて…の再開発への反省

 この例からもうかがえるように、クロスフィールドを拠点とした秋葉原の再開発や産学連携は、けっしてビル内で完結することなく、街との連携にも重点が置かれている。交流(クロス)の場(フィールド)を名乗るゆえんである。

〈私は、いつも、「ビル栄えて、街ほろぶ」にならないように、と声を大にして言っています。「ビル栄え、街いっそう栄える」。これまで街づくりをお手伝いする中で身につけた教訓です〉

 しかし、大資本による再開発の多くは、ビルが栄えることのみが追求されているような気がしてならない。加えて、この手の再開発では、それぞれの街が独自に育んできた文化や風土、いわば“街の記憶”がいともあっさりと消し去られてしまう傾向が強い。

 これに対し、秋葉原の再開発構想では、街の記憶や歴史を消し去ることなく、むしろ積極的に活かすべくさまざまなユニークなアイデアが提案されている。

コメント2件コメント/レビュー

秋葉原に夢があると思うのならば、それはこの土地が空であるからゆえなのかな、と思います。空っぽの空間にこそ夢は詰め込めるんだろうな、とも。わくわくするのは、知らないから、ですよね?(2008/02/12)

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いただいたコメント

秋葉原に夢があると思うのならば、それはこの土地が空であるからゆえなのかな、と思います。空っぽの空間にこそ夢は詰め込めるんだろうな、とも。わくわくするのは、知らないから、ですよね?(2008/02/12)

同感、アキバは奥が深いです。ほんとに市場って言葉がピッタリだし、世界一のクロスフィールドに育って欲しい。(2008/01/20)

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