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「腐敗を告発した仲間が、敵に回る」~プーチン政権につきまとう影

「暗殺・リトビネンコ事件」・ネクラーソフ監督インタビュー【後編】

2008年1月18日(金)

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前編から読む)

 ロシアでは、1999年から2006年の間に、126人のジャーナリスが不審死、あるいは行方不明となっている。

 映画では、裁判官がどのようにして政治の意のままに従わされているかを生々しく暴き出している。

── あなたのインタビューを、ロシアの人たち、とくに政権に関わる人たちは受けたがらないのでしょうか?

ウラジーミル・プーチン氏 (『暗殺・リトビネンコ事件』より)

『暗殺・リトビネンコ事件』(2007年、ロシア)
監督:アンドレイ・ネクラーソフ
渋谷・ユーロスペースで公開中。2月、大阪第七劇場で公開ほか全国順次公開
公式サイト http://litvinenko-case.com/
(C) Dreamscanner productions 2007

 「もちろんですよ(笑)。たとえば、プーチンが答えてくれるなら、喜んでインタビューを申込みます。実際、いちばん重要な問題について、私は誰よりもプーチンに訊きたいわけですから」

── アプローチは?

 「日本でたとえば総理大臣に直接、申し込むということができるでしょうか? ロシアは日本のおそらく何倍も、複雑な代理人を通さないといけません。もちろん、そうしてみましたが、これまでに答えはありません」

── では、なぜグサクはカメラの前に出てきたのでしょう。彼にとってのメリットはあったのか。彼がタバコをいらいらしながら、もみ消すしぐさが、苛立ちをしめしていました。リトビネンコを罵倒してみせたり。なぜ、彼は、そこまで彼をあからさまに否定したのでしょうか。

 「インタビューを受ける側は、モンタージュということを知らない。言いたいことを言おうとする。だから、あなたが感じられた悪人のイメージをもつことになったのは、ふたつの要素に基づいていると思います。

 われわれ映画人は、モンタージュということを知っているのであとで編集するわけですが。もうひとつのモメントとしては、あのインタビューを一般のロシア人が見たとして、彼を否定的に見るということはありえないということです。

 なぜかというと、グサク自身は、リトビネンコに裏切られたという印象をもっている。彼は、既存のロシアのシステムの中で生きている人間です。リトビネンコにしても、もともとはそうでした。

 また、グサクはいまでも、ロシアの権力集団のメインストリームを歩いている人間であって、その集団を支える人間でもある。

 しかし、注目していただきたいのは、彼は一方で、サーシャとともに、このシステムの腐敗を告発する記者会見にも加わっています。腐敗を告発する仲間だった。

 告発のリーダーシップをとったのはサーシャで、グサクは誘いかけられたのだと思います。立場として彼は上司で、態度も堂々としていて、サーシャが小物に見えるかもしれませんが」

「戦車の前に立ちはだかり、死んでいく」

 監督がいう「告発」は、1998年、リトビネンコたちが、暗殺と収賄が日常化していたFSB内部の腐敗を暴露する記者会見と、それに先立ち撮影したインタビューのビデオをさす。インタビューには、後に袂をわかった上司のグサクも同席していた。

 「98年のあと、サーシャ(※リトビネンコの愛称)を除いて、あの場に居合わせたものたちは、自分が語ったことを否定していきます。サーシャひとりが、組織に対する告発を正しかったと、立場を曲げなかったわけです。

 あの会見に参加して、誰も得をした者はいなかった。経済的なことはもちろん、ロシア国内では、モラルの面でも彼らは非難を受けたわけです。だから、グサクにしてみれば、自分のいまの立場を正しいものと捉えている。

アンドレイ・ネクラーソフ監督

アンドレイ・ネクラーソフ監督
1958年サンクトペテルブルグ生まれ。パリ大学で言語学と哲学の修士号を取得。タルコフスキー監督作品『サクリファイス』の助監督、ブリストル映画学校留学などを経て、1993年には初の短編映画『Springing Lenin』を発表し、カンヌ国際映画祭批評家週間で受賞。1997年には初の長編映画を発表。続けて発表した『Lubov&Other Nightmares』(2001)、『Disbelief』(2004)は、いずれも各国の映画祭で高く評価された。『暗殺・リトビネンコ事件』は完成直後間もなく第60回カンヌ国際映画祭に出品された。

 恐ろしいのは、ロシアの人たちがこの映画を見たとき、グサクの考えに同感してしまうことです。たぶん、彼がいちばんマイナスに見られたとしても、サーシャによってだまされた、愚かな犠牲者として見られることでしょう。多くは、チェチェン戦争を戦い抜いたヒーローとして彼を見、臆病者のリトビネンコとは違うのだと見るでしょうね。

 グサクは、告発ビデオについて、サーシャがこれは自分が死んだあとでなければ公表しないと明言していたにもかかわらず、コピーをとって、テレビ局に送ったといっている。事実、そうだった。だから、グサクが裏切られたと語るのは嘘ではない。

 ここでは、二つの正義が戦っています。彼が、サーシャを『クズ』、裏切り者とののしるのもそのためです。

 でも、サーシャはその答えとして、彼はこう言っています。

 『私は、グサクたちのことを悪くいうことはできない。なぜならば、私とともにリスクを犯したのだから、そのことで彼らは私を非難する権利を持っている』

 発言を撤回した人たちのことを、サーシャは、『戦車の前に立ちはだかって、戦車に轢かれた兵士』に例えていました。彼らが臆病だから、発言を撤回したのではなく、国が彼らを押し潰したのだと。

 サーシャは、自分のモラルを基準に行動した人だと思います。それは、より高いところからの使命感のように思えました。

 たとえば、ジャーナリストだとしたら、これはコピーしないでと言われたとしても、こっそりとコピーするというのは、ままあることでしょう。しかし、それは状況によって異なることです。弱い、武器を持たない側の人間が、国家に対して闘う際に、必ずしも悪いことだとは言えないと思います」

── 同じ映画であるのに、ロシアの中にいるのと外の人では、まったく違う見え方をするものなんですね。

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