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女性誌の迷宮、その奥に見えたのは~『モテたい理由』
赤坂真理著(評:朝山実)

講談社現代新書、720円(税別)

2008年1月21日(月)

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評者の読了時間4時間30分

モテたい理由 男の受難・女の業

モテたい理由 男の受難・女の業』赤坂真理著、講談社現代新書、720円(税別)

 学生運動真っ盛りだったころには、高倉健の映画を見てからデモに出かけていったものだ。

 という話をしばしば耳にする。いろんな人が若き日の体験談として語っているから、流行りだったのだろう。着流しに長ドスひとつ、我らが健さんの任侠姿にココロを重ねあわす。ワンカップ酒をひっかけるようなノリだったのか。

 東映の映画館をあとにする男たちは一様に肩を怒らせ、歩き型まで変わって見えた。ヤクザの徒党を、ジュラルミンの盾をかまえた機動隊に置き換え、唐獅子牡丹を口ずさんでみる。もちろん学生よりもデモとは無縁の一般男子のほうが劇場には多かったはずで、しばし、みなそれぞれに敵に挑む気持ちになっていたのだろう。映画が人を酔わせ、闘志をかきたたせた時代のことだ。

 かつての男のファンタジーと、いまどきの「JJ」「Can Cam」あたりのカリスマ・ファッションリーダーに対する女性読者の思い込みは、そう離れてはいまいとワタシは本書を読んで思った。目標は違う。しかし気分に大きな誤差はあろうか。

〈そしてすべてはメス化した〉と、著者は言う。

 東京の新名所として登場するのは、どこもかしこも空間意匠を凝らしただけのショッピングセンター。地方都市にしても、東京のそれをスケールダウンさせただけ。全国どこでもショッピングモールになってしまうのと、ダムができるのと、どちらが深刻な景観と環境の破壊なのか?

 うーん……まあ、どっちもどっち。

 一時代のニーズに特化したインフラができ過ぎて、20年、30年後、いまは賑わいを見せる新名所が、高度成長期に乱造され、寂れ果てたニュータウンのようにならないとは限らない。そんなことでいいのかと、まずは著者から、軽いジャブ。

 もしかしたら、タイトルで誤解される本だ。得なのか損なのかは別にして。

 たとえば、ゴルフ雑誌について。男性向けは、「一にフォーム、二にスコア、三にギア」の直球勝負である(それはそれで興味のない人にはずいぶんヘンなのものだけど)。対して、女性向けのゴルフ誌は「着こなしやヘアスタイル」のチェックに余念がない。というか、捲っても捲っても、それしかない。

 男がスイングなら、女は芝生の上で自分が花となる。「スコアよりウェア」というわけだ。

 どうして女はそこまで「モテ」にとらわれるのか。あるいは「モテ」しかないのか。その理由を探っていくのが本書のメインテーマである。

 著者は、ヘビーな女性誌ウォッチャーを自認する小説家。そんな彼女の道案内で、第4章「女子が生きるファンタジー」の、「JJ」に象徴されるお嬢様雑誌の世界に踏み入っていくと、そこは未知なる国、ジュラシックパークだ。

 話は逸れるが、10年ほど昔、異色のAVで名をなした監督にインタビューしたとき、定期購読しているのは「JJ」「Can Cam」との回答に、はて? 彼が言うには、出演する素人女優の面子は日替わりでも、ほぼ全員が愛読していたのが、この二誌。彼女たちの心をほぐすには欠かせないアイテムだという。

 10年を経て、お嬢様雑誌のカラーはより鮮明となっていた。仕事での自己実現なんて夢は、語ろうともしない。勝負は「モテ」。エビちゃんをはじめとするファッションリーダーを主人公に模し、王子さまに出会うための「着まわし劇場」なる、ロールプレイング・ドラマの花盛り。

「モテたい」のに、男性研究はしない

 これがまたなんとも可笑しなもので、勤め先などのディテールやキャラ設定には凝るものの、具体的な仕事の話はいっさいナシ。うっとりするような「間男」と、本命彼氏とのあいだで板ばさみになるのが定番ストーリー。

 類似の雑誌ごとに複数例があげられているが、どれも一緒で、やがてどれがどれやら。これって、女子高生の間でヒットするケータイ小説の類型と似ていないだろうか。こってりとしたトラウマはないにしても、インスタントに主人公に同化できてしまうあたりは。

 それにしても、なぜ女は「モテ」に走るのか。

 女の賞味期限は短い。高値のうちに伴侶を獲得しないとあとが大変。だから、走らずにいられない。きれいでカワイイ服に満ちた、まるまる一冊が「あからさまな男の狩場」という実態に、男としては、フィールドを熟知する著者のナビなしではどこをどう歩いていいやら。女性誌は食傷の迷宮である。しかし、これもなにやら既視感があるのだ。

 これで決まり、と太鼓判の「愛されワンピ」や「夏色コスメ」なんて、ナニそれ? なのが男というもの。しょせんは「脳内恋愛」。それでも、着飾っては鏡の中の「誰か」に話しかけてみる。これって、そういえば、ヤリたい盛りの男子が頼った「ポパイ」「ホットドックプレス」に似ているのだ。

 そんな女性誌。「恋人」も「夫」も出てこないのは、おかしいのではと著者は言う。ママさん雑誌にしても、ライフスタイルを説きながら、登場するのは母親と子供。「モテ」だと騒いだりしているのに、肝心の相手の気配すらない。

〈日本人はキリスト教圏の一夫一婦制に憧れ、欧米カップル文化に憧れたが、男は本当の意味で女と対話しようとなんかしなかったしね。その男を女は責めたが、女も似たり寄ったりだった。そしてその間じゅう、女性誌には男性は存在しなかった〉

 著者は、「モテたい」と言い、そのためのノウハウを積み上げようとしながら、ろくに対象となる男の研究をしてこなかった女性誌とその読者に呆れてみせる。そして、モテしか興味を示さない「脳内妄想」へのとらわれは、女性たちが毛嫌いするオタクの「萌え」と相似するとも語る。

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