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「チーム・バチスタ」の本当の敵は~『死因不明社会』
海堂尊著(評:後藤次美)

講談社ブルーバックス、900円(税別)

  • 後藤 次美

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2008年1月25日(金)

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死因不明社会 Aiが拓く新しい医療

死因不明社会 Aiが拓く新しい医療』海堂尊著、講談社ブルーバックス、900円(税別)

 昨年あたりから「医療崩壊」がしきりに叫ばれるようになった。いやそれ以前からも、医療の先行きがヤバイことは医療現場では明らかだったのだが、小松秀樹『医療崩壊』、本田宏『誰が日本の医療を殺すのか』など現役医師による警世の書が立て続けに発刊され、テレビや雑誌でも盛んに取り上げられたことで、医療現場の過酷な労働環境や明らかな人手不足が、ようやく世間の知るところとなったわけだ。

 本書もまた、現役医師が剛速球で、“もう一つの医療崩壊”にメスを入れた1冊である。

 だが、著者は「現役医師」というだけではない。海堂尊は、医療ミステリー小説『チーム・バチスタの栄光』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞したベストセラー作家でもあるのだ。本書の帯には、「『チーム・バチスタの栄光』は、この本を書くために生まれた!」とある。小説を書いてまで、著者が訴えたかったこととは何なのか。

 まず著者が問題として俎上にあげるのは、日本のずさんな解剖事情だ。冒頭から素人にとってはビックリな数字が並んでいる。現在の日本の解剖率はたったの2%台、解剖が必須なはずの変死体に限ってもわずか9%。いずれも先進国最低の水準だ。解剖率の低下自体は、画像診断技術の進歩などから起きている世界的な傾向だが、中でも日本ではその減少カーブが著しい。

解剖率の極端な差が事件を闇に

 解剖率の低下によって、何が起きているのか。死因の確定は、もっぱら体表から観察して異状の有無を調べる「検案」だけに依存するため、たとえ異状死であっても「ほったらかしでいい加減な死亡診断書、あるいは死体検案書を記載することで済まされる」ことが常態化しているのだ。まさしく「死因不明社会」である。

 日本の解剖率が極端に低い大きな原因は二つある。一つは、遺族の了承が取りづらいこと。もう一つは、厚労省の怠慢な医療行政である。病理解剖(病気原因や治療効果を診断するための解剖)には金を出さないし、行政解剖数と解剖率の自治体格差も放置したまま。その格差はすさまじいものがあり、3000件に近い東京の行政解剖数に対して、一ケタしかない都道府県がごろごろ、というありさまだ。

 なぜ、ここまで自治体ごとに格差があるの? 少しややこしい話になるが、大事なところなのでガマンしてつきあってもらいたい。

 行政解剖とは、死因が不明の「異状死」に対して自治体の監督のもとに執行されるものだが、ここにダブルスタンダートが平然とまかり通っているのだ。

 じつは、東京23区、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市の5都市には、「監察医制度」が設置されていて、異状死の遺体に対して、自治体は遺族の了承を得ずに解剖を執行できる強制力をもっている。一方、それ以外の自治体は、異状死の遺体であっても、自治体は解剖の強制力をもっていない。

 「監察医制度」は、公衆衛生の向上を目的に、もともと終戦直後に全国7都市だけに設置された制度だ(昭和60年に福岡市と京都市が除外された)。それがほぼ手つかずのまま現在に至っているため、監察医制度の設置されている5都市とそれ以外の自治体では、行政解剖数に格段の差が開いてしまっているというわけ。

 たとえば児童虐待によって子どもが殺された場合を考えてほしい。

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