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19世紀半ば日米を襲った巨大な波

『グレイト・ウェイヴ 日本とアメリカの求めたもの』 クリストファー・ベンフィー著 大橋悦子訳 小学館 3400円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2008年1月25日(金)

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『グレイト・ウェイヴ 日本とアメリカの求めたもの』 クリストファー・ベンフィー著

『グレイト・ウェイヴ 日本とアメリカの求めたもの』 クリストファー・ベンフィー著

 「グレイト・ウェイヴ」とは大波のことだ。グレイト・ウエイヴに「ザ」という定冠詞を付ければ、葛飾北斎の富嶽三十六景の神奈川浪裏の砕け散る大波に富士を配した有名な版画のこと。アメリカではこう呼ぶのだという。

 北斎版画はその圧倒的な構図と構成力で、欧米人を仰天させた。欧米人は、日本のという未開の国の文化度の高さを認識せざるを得なかった。

 日本は日本で、ペリー提督の黒船に仰天し、持ち込まれた電信機や機関車などに仰天した。双方の仰天を記述することは万書がある。しかし、本書の著者ベンフィーは、ちょっと違うアプローチをとった。

 日本とアメリカの文化同士、文明同士の接触の始源の小さな触れ合い(お互いに人差し指を触れ合ったような)から、大部な本書の物語をスタートさせる。日米双方とも捕鯨船で荒海を乗り切った2人の男だ。万次郎とメルヴィルを登場させる試みが新しい。

 万次郎(ジョン・万という愛称をもらった)は日本の漂流者で中濱万次郎。、メルヴィルは名高い『白鯨』の著者ハーマン・メルヴィルである。

 中濱万次郎については、この後で直系の子孫が著した著作を紹介する。ここではメルヴィルの捕鯨人生について見ておこう。ハーマン・メルヴィルは1819年に、ニューヨークの貿易商の三男として生まれた。

 生い立ちは不幸で、父親が商売に失敗して狂死した。そのためハーマンは12歳で家を離れ、さまざまな職を転々とする。そして、21歳になったときマンハッタンで「アクシュネット」という捕鯨船の航海員募集の広告を目にした。

 マサチューセッツのフェアヘヴン港からメルヴィルはアクシュネット号に乗り込んだ。1841年1月3日のことだった。その2日後、高知県足摺岬近くの浜から、万次郎少年が船出した。

 万次郎は沖の鳥島に漂着し、あたかもロビンソン・クルーソーのような生活を半年続けていたが、通りかかった「ジョン・ハウランド号」に救助された。船長はホイットフィールドといい、漂流者の中で図抜けて利発な万次郎をフェアヘヴンに連れ帰った。

 メルヴィルは「アクシュネット号」上で苦難の航海を続け、ハワイに一時滞在した後、出帆した港フェアヘヴンに帰ってくる。メルヴィルはボストンを拠点にして、小説を書いた。『タイピー』といった。これは南海の理想的、幻想的な状況を綴ったもので、現代ロビンソン・クルーソーとして評判になったらしい。

 メルヴィルの大作『白鯨』は世界文学史に名を残すような傑作となった。モービーディックという巨鯨を追う、エイハブ船長の執念の物語で、モビー・ディックは追っても追っても、逃げていく。どうやら逃げ込み先は日本近海を想定していたようだ。

 日米の文化の出会いというと、圧倒的にアメリカが大波をもたらしたように思われがちだ。本書での「オールド・ジャパン」は、南北戦争後の金満アメリカ社会、マーク・トウェインが「金メッキ社会」と呼んだ、外側だけだったアメリカ文化に結構な大波を浴びせ続けてきた。ちょっと見方を変えてくれるような本だと思った。

 日本からの大波の1つに岡倉天心がいた。天心は茶こそ日本の心だと、合理的なアメリカ人を錯乱させるようなことを英文で書いて、大波の力を後押しした。さらに、茶碗は窯の中で焼成中に歪んだのが宜しい、などといって、アメリカ人の困惑をいやが上にも高めた。

 2段組300ページを越える大著だが、本棚に置いておく価値のある本だ。

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