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第20回 高松塚古墳壁画の現地保存

人間の美に対する欲望が美を損なうことがある

  • 宮島 新一

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2008年1月29日(火)

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 海外での古美術展についての話題が先行してしまったが、文化庁での主な仕事が国内の文化財の保護であることは言うまでもない。保護の具体的な内容は国宝・重要文化財の指定、買取、修復などである。博物館には多くの収蔵品が手元にあり、また、展覧会のために一時に100点以上が集まるので、あまりにも作品が豊富なための研究の貧困という、贅沢な悩みに陥ることがある。これに対して文化庁では、対象が限定されるために個々の作品に集中できる、という利点があった。系統的というわけにはゆかなかったが、買取作品や指定対象作品の調査を通して自然と研究成果が積み重なっていった。

 そうこうするうちに、もっとも思考力が働いている40代のうちに博士論文をまとめておきたい、と考えるようになった。大学での恩師にも提出を勧められた。1987(昭和62)年にワシントンのナショナルギャラリーで催された、通称「大名展」という大規模な日本古美術展に随行した時に、長い夜の時間を利用してこれまで書きためた論文の中から「大和絵」に関するものを選び出し、1つの論旨にまとめるための推敲を始めた。その後5年ほどかけて、延々と書き直し、書き足し続けた。内容はともかく、これを成し遂げた時の一区切りをつけたという満足感にはなんとも言えないものがあった。絵画史の見通しがついたことで自信もついた。その結果、研究にこだわる必要性を感じなくなった。不思議なことにそれと同時に、興味をひく展覧会も少なくなった。

野戦病院で完全な治療をしろと要求するのと同じ

 1997(平成9)年に文化庁から奈良国立博物館に転じた。17年ほど文化庁に勤めたことになるが、この間に高松塚古墳を訪れたことは一度しかなかった。石室内は屈んでいるのがやっとの高さである。入り口となる盗掘口は頭が入るだけの大きさしかない。当時、少し太っていた私は壁画の安全を考えて、入ることを断念した。壁画のかび対策や虫の駆除のための保存作業は有毒な薬剤を使用していると言うので、近づくことも遠慮した。

 コンサバター(修復保存家)が石室内に入る時に、文化庁の職員が鍵を開けることになっていた。鍵を預かっている奈良文化財研究所へ受け取りに行ったところ、向こうの担当者が妙に邪険なのが気にかかった。今では、本来ならば考古部門が管理すべきものを美術畑の者がしていることに対する不満が欝積していたのだろうと、善意に解釈している。古墳は考古学の重要な領域である。たまたま、美術的にきわめて優れた壁画が発見されたために、管轄を奪われてしまったのである。

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