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無責任男って言うな!『植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」』
~「やりたい仕事」より「やるべき仕事」を選んだ男

  • 荻野 進介

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2008年2月6日(水)

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植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」

植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」』戸井十月、小学館、1400円(税抜き)

 本書は昨年3月、80歳でこの世を去った植木等の評伝である。植木といえば、スイスイスーダララッタのスーダラ節である。こつこつやる奴ぁご苦労さんの無責任男である。部下に持ったら、日々てんてこ舞いかもしれないし、逆に上司だったら、胃が痛む毎日かもしれない。

 そんな定型的なイメージを、戸井十月がうまくぶち壊した。憎めない笑顔と底抜けの明るさを除けば、人間・植木等は無責任男の対極、思慮深い古武士のような仕事人間だった。

 戸井と植木の出会いは17年前。戸井が監督をつとめた劇場用映画の主役が植木だったのだ。それから10年が経ち、画家だった戸井の父親の遺作展の会場で偶然、戸井は植木と再会する。

 植木は戸井の父に一度だけ会ったことがあった。戸井とその父はいわば兄弟のような父子で、慣れない仕事に奮闘する息子を気遣ってロケ地を訪れ、植木をはじめとする出演者たちに、息子をよろしくと菓子を配って回るという人物。「(あの時の)お父さんには感動したね。素晴らしい父子だなって、心底うらやましかった」というのが遺作展での植木の言葉だ。

 そんな思わぬ再会から、戸井は、本格的なものがひとつもない、この大スターの評伝執筆を思い立つ。おそらく植木に自分の亡き父の姿を重ねていたのではないだろうか。

 そう、戸井と植木の共通点は、どちらもファザコンという点だろう。植木の父は、洗礼を受けたキリスト教徒という身で労働運動や部落解放運動に首を突っ込み、挙句のはては親鸞に影響を受けて僧籍に入り、寺の住職をつとめたという破天荒な人物だ。植木にとってこの父はまさに特別な存在で、一代記を書いて出版したほど。

「香典泥棒」の役を振られて

 徹底的な反戦主義者でもあり、檀家に召集令状が届くと、「戦争は集団殺人。死ぬな、殺すな」と説く。官憲が黙っているはずがなく、逮捕され刑務所へ。代わって植木が父のかわりに檀家を回り、経を唱える毎日となる。そこで度胸が鍛えられたというから、人生、何が幸いするかわからない。

 大学は東洋大学に進み、そのまま行けば植木は僧になるはずだったが、音楽への興味がむくむくと頭をもたげ、レコード会社の新人歌手コンテストに応募、抜群の成績を収め、プロになる決心が固まっていく。当然、両親は猛反対である。しかし、父もかつて「義太夫語りになりたい」と自分の父親に申し出たが、固く反対され、泣く泣く諦めた。血は争えないのだろう。

 そこから植木の快進撃が始まる、と書きたいところだが、芸能界の常で、食べられるようになるには時間がかかる。純粋な歌手だけでは駄目だと、ギターを習い、バンド活動に勤しむなか、池袋の水道屋の息子、ハナ肇が率いるコミックバンド、クレイジーキャッツに参加。昭和37年3月のことであった。

 植木にとっては大当たりの宝くじを引いたようなものだった。ライブハウスからテレビに、映画に、クレイジーキャッツの活躍の場はどんどん広がっていく。後の東京都知事で、当時は駆け出しの放送作家だった青島幸男は、「植木のすっとぼけた顔つきと人を食った態度にはびっくりさせられたが、実際は酒も一滴も飲まない堅物、律儀で実直そのものだった」と当時を述懐する。

 植木の堅物ぶりは堂に入ったもので、映画「ニッポン無責任時代」は主人公の植木が葬式で香典泥棒を働く場面から始まるのだが、「これはできません」と、植木は監督に訴えたという。

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