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“慎重派”を挑戦へ誘うには?
~「歓喜の歌」・松岡錠司監督【前編】

2008年2月8日(金)

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 人気落語家・立川志の輔の新作落語「歓喜の歌」をコメディ映画にする。挑戦したのは「東京タワー、オカンとボクと、時々、オトン」の松岡錠司監督。

 松岡監督にとっては、落語の映画化は言わずもがな、コメディ映画を手がけるのも初めてのこと。いったい、落語という、ひとり語りの完成された話芸の世界をどのように映画に膨らませるのか?

 スクリーンに映し出されたのは、ふつうの人たち、一人ひとりが一時の主人公となる「群像劇」だった。

 物語の発端となるのは、「ダブルブッキング」という仕事のミス。が、映画の中には、さまざまな夫婦や家族の肖像が描かれ、観る者それぞれに、さりげなく生き方を問いかける。映画のなかで、戸惑い、泣き、笑う登場人物は、みな私たちの隣人だ。

 もともと「歓喜の歌」は、「パッチギ!」「フラガール」を次々とヒットさせた映画会社シネカノンの李鳳宇プロデューサーが発案し、松岡監督とタッグを組んで実現にこぎつけたという経緯がある。

 「パッチギ」も「フラガール」も、ある時代のふつうの人たちを描いた「群像劇」だった。「ふつう」が見えづらい時代だからこそ、ふつうの人たちの幸福が求められているのかもしれない。

 落語、コメディ、群像劇。この三つの「初」に取り組んだ松岡監督に、話を聞いてみた。

 「歓喜の歌」は、大晦日の夜にママさんコーラスが「第九」を歌う、二日間のドラマ。公民館のホールの運営を任された主任と、町の二つのコーラスグループにかかわる人たちの物語だ。

 舞台はとある小さな地方都市。小林薫演じる飯塚主任とその部下は、この町のホールで開かれる二つのグループのコンサートを、大晦日にダブルブッキングしてしまう。このミスをめぐり、怠慢な公務員気質を戯画化しつつも、一年間、この日のために練習を積んできた人たちの悲喜こもごもを描きだしている。

「歓喜の歌」

「歓喜の歌」
(C)2008「歓喜の歌」パートナーズ
シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQNほか全国ロードショー

── トラブルはダブルブッキングの一件だけだと思って観ていたら、主人公役の小林薫は借金や離婚の危機やら悩みのタネを何重にも抱えていて、真剣に悩んでいる。そうでありながらも、実にちゃらんぽらんでもある。

 自殺しようかと思い悩んでいる人が見ると、バカらしくなって「生きてやるぞ!」と思うのでは。そういう意味では、小林薫さんが、往年の植木等に見えました。「スーダラ節」などの頃の「無責任男」にダブる軽妙さというのでしょうか。

 「植木さんね。なるほど。かつて日本映画の黄金時代、量産された喜劇を支えた俳優たちがいました。たとえば森繁さんやフランキー堺さん。彼らの演技を彷彿とさせるものを小林さんに求めたのかも。

 僕なら、そこに愉快だった小林桂樹や加東大介を入れてもいいんですけど。いま、植木さんと言われたので思ったんですが、イッパツ芸に頼るのではなく、ちゃんと物語上のキャラにあわせて笑わせていく。これは役者としての技量が問われることなんですよね。だから、それができる人に、この役はやって欲しかったというのがあったんです。

 感触として、小林さんが、笑いのセンスをもった人だと前々から思っていましたが、それを発揮する場にこれまで恵まれているわけでもなかった」

 笑いを求めるがために、演技が過剰になりすぎてはいないか。逆にすげなくやりすぎていないか。松岡監督と小林薫さんとの間では、芝居をめぐって終始キャッチボールが行われたという。

── 小林さんは、「間」のいい俳優さんですよね。困って、無言になる一瞬、黙っている表情から、彼が何を考えているのか、あるいは考えていないのか、観客は想像し、底意を読み取ろうとする。

 「ちょっと、人間のずるいところね」

モノローグ目線の落語を群像劇に

── 相棒となるキマジメそうな部下(伊藤淳史)との掛け合いも、コントラストが効いています。小林さんが、すごくハンパな人間だからこそ、観客としては、彼が災難の渦にはまり込んでいく様を笑って見続けられる。これがもう少し悪人であったり、鬱々と悩む人間だと違った物語になっていたでしょうけど。

 「おっしゃったように、マジメすぎたり、悪党すぎると、観ている側の感情移入の仕方も変わってくるもので。そこらへんは小林さんも承知して、やっておられましたけど。観客が追い詰める目でいられるのは、小林さんのあのヌケた感じがあるからこそ。愛すべきというか、小林さんには、期待どおりの愛嬌があります」

── 原作は、立川志の輔さんの創作落語ですよね。落語では、小林さんが演じる主任のモノローグの目線で語られ、台詞として登場するのは三人くらいだったのが、映画では群像劇に変貌しています。

 「そこらへんが脚本づくりでいちばん工夫したところなんですよね。落語の場合、志の輔さんが、まず上手いんですよ。だから、話を聞いているだけで、勝手にそこに居合わせた人たちのイメージを膨らませてしまう。

 しかし、映画の場合には、その一人ひとりをちゃんと描かないといけない。たとえば、ダブルブッキングされてしまうママさんコーラスのグループが二つある、それぞれのメンバーがどんな生活をしているのかを作りこまないといけない。メンバーの人数を何人にして、それぞれにメリハリを利かせ、背負っている事情を決めていくわけです。

 志の輔さんが映画のシナリオを読んで、びっくりされたのは、主任に外国人の愛人がいたという部分です。もちろん、原作にはない。というか、映画の中で、話を引っ張る金魚のらんちゅうも落語にはでてきませんから」

 映画のオープニングから、師走の騒動をよそに水槽の中を優雅にターンする金魚。とぼけた味の目玉の大きならんちゅう、今村昌平の映画に登場するウナギや鯉をおもわせる。物語の鍵をどのように握っているのかは、映画をご覧になられてのお楽しみである。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長