ここ数年、ゲームユーザーの年齢層は爆発的に広がり、あらゆる年齢の人たちがゲームに接するようになりました。「ターゲットは5歳から95歳まで」という任天堂の指針は、成功しているといっていいでしょう。
昨今、任天堂のソフトが圧倒的な売れ行きを示す一方、他メーカーはその影響に苦しんでいます。当初から「ユーザー層を広げる」ことに注力し、そのためのソフトを作ってきた任天堂と、状況の変化を見極めてからソフト制作に乗り出したソフト開発メーカーとの間で、タイムラグが生まれているのですね。
したがって、これは時間が解決していく問題、ともいえます。
すでにニンテンドーDSでは、任天堂以外からのヒット作が出てきています。Wiiも、広がったユーザー層にあわせたソフトが作られ、他メーカーからヒット作が出てくるようになるでしょう。そろそろ、その萌芽が見えてきたと考えてよさそうです。
ファミリー向けソフトの登場
たとえば、1月31日に発売された「ファミリースキー」(バンダイナムコゲームス/Wii用ソフト)は、なかなか興味深いソフトです。
ひとことで説明すると、これはスキー場をまるごと再現したスキーゲーム。「子供向け」として媚びた絵柄にはせず、かといってグラフィック面を実写風にするのでもなく、ほどよく「家族で楽しめる」という雰囲気のゲームとして仕上がっています。だからMii(Wii上での自分の分身)を使い、目的もなく、ただゲレンデを滑ることが楽しい! という気分にさせてくれるのでしょう。
また「Wii Fit」に同梱されているバランスWiiボードにも対応していますので、プレイヤーの体重移動によってスキーを操作することも可能です。ちゃんと体重移動が出来る人(スキーの経験者)は、ゲレンデを格好良く滑ることができますし、その様子を見て、家族でワイワイと楽しめるゲームになっています。
そして、何よりも興味深いのは、ゲームのあちこちに散りばめられた、細かな演出。
いざプレイしてみると、わかります。これは「日経ビジネス」のWebサイト(つまり、このコラムです)を好んで読んでいるような世代の人たちに向け、ノスタルジーをどんどん喚起するようになっています。そういう演出が、いたるところに施されているのです。
ノスタルジーを喚起させるカラクリ
たとえば、このゲームの中にあるスキー場は、どう見ても「最近のスキー場」ではありません。
だってそこには、スノーボーダーの姿がない。
基本的には、みんながスキーヤー。嬌声をあげてカッ飛んでいる若者もいれば、のんびりと過ごしている年配者もいる。30~50代の人たちが、かつてスキー旅行に行っていた当時のゲレンデの光景が、きっちりと再現されています。
スキー場に流れているBGMも同様です。流れているのは、松任谷由実の「サーフ天国、スキー天国」「恋人がサンタクロース」「BLIZZARD」など。しかも普通のゲームのように、いつも同じ音量で聞こえるのではなく、ゲレンデに設置してあるスピーカーの近くでは大きく聞こえ、離れると小さく聞こえます。かつてのスキー場の雰囲気も、きっちりと再現されているのです。
本筋と関係なくて申し訳ありませんが、ユーミンなんかの80年代ニューミュージックも、「J-POP」の範疇ではないでしょうか? J-POPという言葉自体もあいまいで何種類かの意味があるのかもしれませんが。(2008/03/10)