• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

共に泥水を掬い、美酒に酔おう~『アニキの時代』
谷岡雅樹著(評:朝山実)

角川SSC新書、740円(税別)

2008年2月13日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間2時間00分

アニキの時代 Vシネマに見るアニキ考

アニキの時代 Vシネマに見るアニキ考』谷岡雅樹著、角川SSC新書、740円(税別)

〈もはや、オヤジの時代ではない〉

 と、著者はいう。

 飯炊き釜の蓋のように、ドシンと貫禄で威圧する「オヤジ」は疎まれ、かわりに株価が高騰中なのが「アニキ」である、と。

 著者の定義する「アニキ」とは、血縁の兄弟とは異なる。また、タテ社会での「親分」を頂点とした、「子分」間の高低をさすのでもない。「親」や「一家」とは関係なしに結ぶ、「これと決めたもの同士の固い絆」のこと。という具合に本書は、強烈に男のニオイを漂わせたリーダー論である。

 阪神タイガースの金本知憲、音楽界なら長渕剛、Vシネマの帝王こと哀川翔、オタク界に目をむければ、みうらじゅん。政界では山本一太、さらには、縄縛りで人気を盛り返した杉本彩など、近ごろは、一目置かれる人たちをこぞって「アニキ」と呼ぶようになった。ワタシなら、ここにチェ・ゲバラを加えてみたい。カストロが老いたいまもキューバ一家の「親父」であるのに対して、さっさと家を飛び出し、やりたいことをやって一命を落とした軌跡は、革命界の永遠のアニキである。

 それはさておき、バーゲンセールみたいに「アニキ」が氾濫する理由を、著者は〈あまりにもへたれや根性なし、勇気なしが跳梁してしまった〉時代の反映だとみる。

 つまり、頑固オヤジはごめんだ。けれども、ひとりじゃ不安。親身に叱ってくれる(自分のことを気にかけてくれる)頼れる存在を求めてしまうメンタリティ、そんなアニキに憧れる「弟分」でい続けたい甘えが、アニキ株を持ち支えているのかもしれない。

「親分ではなく、兄貴分」の組織論

 著者は、様々な職場を渡り歩き、Vシネマ評論で名をあげたというだけあって、副題にあるとおり、Vシネマで活躍する俳優陣への賛歌と世相の読み込みが、本書の柱をなしている。

 Vシネマが誕生したのは、1989年。オタクや、いまでいうニートやフリーターの増加する90年代に、「ヤクザ」と「ホラー」を両輪に、ビデオショップで独特の領域を伸張させた。それ自体、映画やテレビをオヤジとするなら、きかん坊なアニキ的存在にあたる。

 前述した、チンピラに徹する哀川翔、「ミナミの帝王」「仁義」シリーズがいずれも作品本数で「男はつらいよ」を上回った竹内力をはじめ、白竜、清水健太郎、松田優、遠藤憲一、寺島進、中野英雄らの面々が如何にしてVシネマ界でアニキとうたわれるにいたったのか、一人ひとり、たっぷり熱っぽく語っている。語りがホットなだけに、本書は万人向けではない。入れ込み具合についていけない読者も出てくるだろう。

 きわめつきは、小沢仁志論である。かつて奥山和由氏が松竹で権勢を振るっていた時代に、まだ20歳そこそこにして、執拗に奥山氏に付きまとい、「役者として華もないし、顔が悪い」とコケミソに罵倒されながらも、押しの強さで映画を一本、チーム奥山でプロデュースさせるにいたった。しかも、その映画は1億数千万の赤字……。

 といった逸話を紹介しながら、その後の小沢が、Vシネマを主戦場にしながらも製作会社を立ち上げ、後輩に向けて、道を切り開いこうと奮迅する姿を物語っている。サブカル版の「情熱大陸」とでもいうか。

 カネを儲け、ひとり勝ち抜けようとするのでなく、仲間と同じ泥水をすくいながら美酒に酔いしれたいとの思いを小沢は、ざっくばらんにタメ口でガンガン語る。すましていない態度といい、気負いといい、まさにアニキである。

〈親分が全部責任を取る時代は終わった。血筋が幅を利かせる時代は終わったのである〉

 著者は、これからは「株式会社=& Co.(and Companies)の時代」だと断言する。

 親が子に既得権益を世襲させる時代は終わった。志を共にする仲間が、アニキのまわりに結集し、会社を盛り立てる。それが、あるべきカンパニーの未来像だと。ひとり勝ちを企むのは、旧態依然としたオヤジの時代の発想だと。

 「目を覚ませ!」「親分は消えろ!」、これからはアニキの時代だ!!

コメント1件コメント/レビュー

どうせなら「アネゴの時代」も書いてください・・・!!(2008/02/13)

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

どうせなら「アネゴの時代」も書いてください・・・!!(2008/02/13)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

テスラのような会社と一緒にできないのなら、パナソニックはイノベーションを起こせないだろう。

津賀 一宏 パナソニック社長