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ムシはムシをどう見ているか

2008年2月13日(水)

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 前回、虫が経済までいってしまったのは、午前中の農水省の会議に出て、機嫌が悪くなったからです。済みません。

 もともとはヒゲボソゾウムシのウロコが剥げる話でした。それを調べていたから、暮から正月の休みが潰れたという話。

 横腹のウロコが剥げる。そのために、全体が緑色の虫の横腹に黒い線が入る。

 これについては、ある疑いを以前から持っている。

 ゾウムシでは、横から見ると、上から見たときとは、色彩がずいぶん違う種がいくつもある。横腹の色彩に特徴が出るといってもいい。もちろんすべてではない。

 ヒゲボソゾウムシと同様、葉っぱの上に出ているゾウムシでいうなら、シロコブゾウムシの仲間がそうである。上から見ると、全体になんだか薄汚い色だが、横から見ると、きれいな色の線が見えたりする。これも横腹が剥げるのと、似たことじゃないのか。

東南アジアのシロコブゾウムシの仲間。上から見ると、茶色の地味なムシ。

東南アジアのシロコブゾウムシの仲間。上から見ると、茶色の地味なムシ。

 歩いている虫どうしが、葉っぱの上で出会うとしよう。おたがいに見えるのは、体のどの部分か。

 まずは横腹であろう。それなら、横腹の模様が目立つ虫は、その模様をおたがいのコミュニケーションに使っていないだろうか。同じ仲間だということを示しているかもしれないし、自分を目立たせているのかもしれない。緑の体に黒い横線、しかもその前をチラチラ動く足が、黄色だったりする。これは見事なコントラストではないのか。

おなじゾウムシを「ムシの視線」で横から見ると、きれいな緑のストライプがはっきり。

おなじゾウムシを「ムシの視線」で横から見ると、きれいな緑のストライプがはっきり。

 ヒトは虫を「上から」見る。でも虫どうしは、ふつう横から見るはずである。上からの視点をとることなんて、まずあるまい。それなら虫どうしの視線は、横腹に来るのが当然であろう。

 虫は虫をどう見ているか。

 これはむずかしい疑問である。虫の目とヒトの目、虫の脳とヒトの脳は、まったく異なる。虫の動体視力は、ヒトと同じくらいあるという。それはわかるような気がする。相手が動くものなら、虫は敏感に捉えるからである。でも色彩のパタンや、いわゆる形を、ヒトが見るように捉えるだろうか。

 虫の色模様は、一見すると派手で美しい。虫はおたがいどうしを、ヒトが虫を見ているように見ている。ついそう思ってしまう。そう思う人は多いのではなかろうか。

 でもそんなはずはない。あの小さな脳ミソで、人間並みに動体視力がある。ということは、形の把握なんか、まずダメだろうということである。そこまでの容量が脳にあるはずがない。

 しかも複眼である。複眼は、それを構成する一つ一つの目、つまり個眼に、ちゃんと像が写ってしまう。そんな像が、精密であるはずがない。個眼一つに割り当てることができる神経細胞の数なんて、たかが知れているはずだからである。個眼が数百あっても、個々の像が大したものじゃないのだから、いくつ合わせても、そう立派な像にはならないであろう。

 むしろコントラストを捉えているに違いない。緑が写っている個眼たちと、黒が写っている個眼たちが、同じ一つの複眼に同時に存在している。相手の虫、すなわち視野が動けば、その動きは、ずいぶんはっきりと見えるのではないか。個眼によっては、緑が黒になり、黒が緑になるからである。

 虫が色を区別することは、以前からよく知られている。色の違うお皿に蜜を入れて、どの皿にハエが多く集まるか、あるいはハチが集まるか。そういう実験なら、たしか動物行動学の教科書に出ていた。

 ともあれ、これ以上のことは、とりあえずは視覚の生理学にまかせるしかあるまい。こちらにできることは、あれこれ考えて、関係がありそうな事実を集積することである。

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「ムシはムシをどう見ているか」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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