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インターネットが加速した過疎地の再生

新潟県・松之山【最終回】

  • 宮嶋 康彦

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2008年2月14日(木)

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 連載を始めて三月が経った。その間、戸邊秀治さんの周辺で変化していく状況を、季節の移り変わりと共に見つめてきた。驚いたことに、わずかの期間にもかかわらず、戸邊さんの生活や松之山という過疎の町に、急激な変化が起こっている。それらはインターネットの力と言うほかない。

 当コラムの最終回に当たって、戸邊さん自身に、この三月で変わったことを語ってもらった。すると、筆者と同様に、最も顕著だったことは急速な変化だったことを挙げた。その回答は、世の中がこのようなスピードで動いていることを如実に物語り、改めて、こうしたコラムを発信するインターネットの影響力を思い知る結果となった。

 「3年後に想定していたことが今まさに訪れています。これほど早く、こちらの希望どおりに米が売れるようになって、ちょっと、多忙すぎて困っているほどです。それに、見向きもしなかった地元の農家が、私に関心を持ってくれるようになりましたし、一緒に米作りをする仲間もできそうです」

 そう言いながら、発送の準備を終えた米袋を指差した。戸邊さんの米を販売するデパート向けの荷物である。

 「米よし(東京・渋谷の東急百貨店本店地下の米店)さんに送る最後の米、100キロです。19年度産米は12俵(1俵60キロ)の契約で、これが最後です。米よしさんは、あるだけ欲しい、と言ってくれるんですけど、残っているのは、直販する親しい人の分と我が家で食べる分だけです」
 

圧倒的な生命力こそが地域の光明になり得るのでは

 これまでも書いてきたとおり、戸邊さんの生き方は、強い信念に裏づけられていた。母の自死、脱サラ、社会矛盾との葛藤といった、いわば絶望からスタートしているだけに、その、生きんとする意志は圧倒的な力を備えていた。戸邊さんの生き様を丁寧に書き込んでいけば、おのずと「地方再生物語」のテーマが浮き彫りになる、と筆を進めてきた。

 地方疲弊の声はかまびすしいけれど、現地はどんな風体をしているのか、近頃語られる限界集落は強い言葉には違いないけれど、そうした集落は時間とともに消えるだけの運命なのか、救いはないのか、五感で確かめたいと思った。

 そんな思いを抱いて、ロケハンに訪問したのが越後松之山だった。そこで戸邊秀治さんと偶然の出会いをし、瞬く間に“戸邊秀治の生き方”が疲弊した地域には光明ではないか、と確信した。

インターネットが人を引き寄せた

 農薬や化学肥料を一切使用せず、人力に頼った米作りのこだわり、子育てに懸ける情熱、その圧倒的な生き様が過疎地を救うと信じることができた。世の中の変革は、ときに、たった一人の異端者から始まることがある、という、持論に基づく直感のせいで、ロケハンはそのまま本取材になった。

 連載当初は、戸邊さんに見いだした光明が紹介できれば、と考えた。4~5回程度で、それは完成し、次の地域へ視点を移そうと目論んでいた。ところが、連載1回目にして、予想をはるかに上回る反響があった。

 東急百貨店本店の米売り場で「米を買いました」という声が回を追うごとに寄せられるようになった。また一方では、戸邊さんの生き方に共感、賛同して「戸邊さんに会いたい」と申し出る人が現れるようになった。中には直接、戸邊さん本人に連絡を取る人があったり、編集部や筆者が仲介したりするケースも出てきている。

コメント20件コメント/レビュー

1俵18万円の米を批判する人がいる。それは当然だと思う。わたし自身、とてもじゃないけれど1俵18万円の米なんか食えない。でも、1俵18万円の米を作る人がいて食べる人がいる。わたしは、それでいいと思う。わたしは消費者として、身の丈に合う値段で納得できる(に近い)食べ物を買おうと努力する。生産者は、身の丈に合うレベルで納得できる(に近い)食べ物を作ろうと努力する。それは、ひとりひとりが他のみんなと同じである必要はないということだ。無理をする必要はない。自分の身の丈に合うレベルで構わない。生産者も消費者も、今ひとつもう少しの工夫が必要なのではないか。そんなことを感じさせてくれる記事でした。わたし自身は納得できる食べ物であるならば、今よりもう少し高くてもお金を払いたいと思う。わたしのすむ地域では、今にんじんが異常に安い。消費者としてはありがたいと思うけれど、お百姓さんには申し訳ないと思う。難しいとは思いますが、本当に納得できるにんじんならば、多く収穫できたとしても適正な価格で流通しても良いのではないかと思いました。微力に過ぎなくても、何かわたしに出来ることはないか。最近、毎日のように考えています。(2008/02/19)

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いただいたコメント

1俵18万円の米を批判する人がいる。それは当然だと思う。わたし自身、とてもじゃないけれど1俵18万円の米なんか食えない。でも、1俵18万円の米を作る人がいて食べる人がいる。わたしは、それでいいと思う。わたしは消費者として、身の丈に合う値段で納得できる(に近い)食べ物を買おうと努力する。生産者は、身の丈に合うレベルで納得できる(に近い)食べ物を作ろうと努力する。それは、ひとりひとりが他のみんなと同じである必要はないということだ。無理をする必要はない。自分の身の丈に合うレベルで構わない。生産者も消費者も、今ひとつもう少しの工夫が必要なのではないか。そんなことを感じさせてくれる記事でした。わたし自身は納得できる食べ物であるならば、今よりもう少し高くてもお金を払いたいと思う。わたしのすむ地域では、今にんじんが異常に安い。消費者としてはありがたいと思うけれど、お百姓さんには申し訳ないと思う。難しいとは思いますが、本当に納得できるにんじんならば、多く収穫できたとしても適正な価格で流通しても良いのではないかと思いました。微力に過ぎなくても、何かわたしに出来ることはないか。最近、毎日のように考えています。(2008/02/19)

全部読みました。専業農家です。連載は極端な例とは思いますが、ネットが地域活性化に役に立ったことは確か。60kg18万円は極端だとしても、現状は農協渡しでは60kg1万円を切ってる。そこから農機や農薬、肥料代を引いた残りで生活しないと農家は生きていけない。せめて60kg3万円で売れて欲しい。小麦もトウモロコシも値上がりしているし世界需要は増している。食料という戦略物資を自給できてない現状、日本の農地が荒れたままの現状を餃子問題と併せて考え、実行したい。(2008/02/18)

一番最初にコメントさせて頂いた者です。以下のコメントの中で「多くの反響を得たのは、、、プロの書き手の技量と「日経」ブランドのせい、、」というコメントがありました。なるほど、日経ブランドバリューと宮島氏の力量に納得すると同時に、こんなことも思いました。多くの記事を取捨選択するに長けている日経が、価値のない記事をあえて取り上げるだろうか。宮島氏が多くの労力と時間を割いて取材したのは、この戸邊氏が自分の生き方と格闘し、結果を出している姿に筆者が共感したからではないでしょうか。またこの記事を読み感動した人達は、「一俵18万円の米」という驚きと同時に、そこまでに至る戸邊氏のプロセスに共感したのではないですか。戸邊氏の地に足がついた生き方がこれらを「呼び込んだ」と理解する方が自然かなと思います。私たちは「偶然」彼の生き方を「宮島氏」そして「日経」を通して知ることができただけで、戸邊氏にとってはメディアの取材があろうとなかろうと日々格闘されていたでしょう。それこそ日経や宮島氏の取材、そして私たちの共感に「値」するものです。「価値ある」ものに対して、相応の取材がなされたわけであり、日経や宮島氏がその価値を「創造」しているわけではありません。「多くの反響を得たのは、(たとえば)電信電話を発明したエジソンやインターネットの元になる米国国防用コンピュータネットワーク構築から派生しインターネットのおかげである、、、」なんていう話とあまり大差ないように思えてなりません。(2008/02/17)

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