• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

お金をもらうために「働き者」になるの?~『仕事と日本人』
武田晴人著(評:荻野進介)

ちくま新書、860円(税別)

  • 荻野 進介

バックナンバー

2008年2月22日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間2時間30分

仕事と日本人

仕事と日本人』武田晴人著、ちくま新書、860円(税別)

 最初にちょっとしたクイズから始めよう。

〈温暖な気候に恵まれているという自然条件が、唯一、××に有利な点かも知れないが、怠惰で享楽を好むこの国の人々の性癖は、文明への進歩を妨げている。××人は幸せな人種である。わずかなことで満足し、決して多くを成し遂げようとしない。……西欧社会で確立され受け入れられている原理(principle)を移植しても、この国では、それが本来の意味を失って、ただ荒廃と退廃をもたらしているだけのようだ〉

 この××に入る国名は何か。

 答えは、ずばり「日本」である。実はこれ、明治の初頭に日本を訪れた西欧人による文章なのだが、現在の我々が、“工業化以前の牧歌的生活を謳歌している南の島の住民たち”に対して抱くような感想を、当時の訪問外国人が持っていたとはびっくりさせられる。

 本書は、かくのごとく、古今東西の幅広い文献を読み解きながら、我々が自明のものとしている現在の労働観や仕事観の相対化を迫る。議論が錯綜し、本来の筋が見えにくい箇所もあるが、道を見失うほどの深い藪ではない。労働と仕事に関するブックガイドとして読んでもいいだろう。

 著者がまずこだわるのが、英語のlabourの訳語として定着している「労働」という言葉の語源である。

 もともとlabourには「力作」や「勤労」という言葉が当てられており、「労働」となったのは日清戦争の直後らしい。しかも、この「働」の字は和製漢字で、中国にはない。当時は「労動」という言葉も使われたが、これは現在の労働より幅広い意味を持ち、身体を動かす、くらいの意味だった。

時間の概念が「労働」を生んだ

 所作としては同じでも、なぜ「労動=身体を動かす」が「労働=骨折って働く」になったか。工場や事務所で、組織の一員として、成果を上げるために働くことが一般的になったからである。それ以前の主要産業であった農業では、それぞれの仕事は自然条件に制約され、しかも生活と仕事の境界が曖昧だった。おしゃべりして時を過ごすことと、働くことの区別がほとんどなかった。

 近代化が人々の働き方を一変させたのだ。そういう意味では、過去、日本人だけが怠惰だったわけではない。産業革命以前はイギリス人も怠惰な働き方をしていたのである。

 怠惰が駆逐され、労働が成立するようになったのは、時間という要素が入ってきたことが大きい。

 それは、・一つひとつの作業の所要時間を計り、その短縮化を図るという意味の、時(じ)もしくは分単位の時間、・一日ごとの労働時間、・働き始める年齢や引退する年齢といった年単位の時間、の3つにわけられる。これによって、遅刻や残業という概念、作業効率に応じた出来高賃金というシステム、引退年齢を決める定年という制度が形成されていったのである。

 このうち、特に紙幅を割いて著者が論じるのが残業についてである。今や海外でもそのまま通用するカロウシ(過労死)の多くはサービス残業によるものだし、結果的に残業代の節約になる「名ばかりの管理職」という位置づけに対して、従業員が告発するケースも増えている。残業と日本企業はかなり根深い関係にある。

 なぜ日本人は残業をよくするのか。義務や責任を定量化し限定するアメリカのやり方と比べ、日本の会社では義務や責任が限定されていないことが、まず理由として挙げられる。上司からはいつ新しい仕事を頼まれるかわからないし、同僚の手助け仕事も頻繁に舞い込む。残業しなければ当然無理だ。

 ただ、社員も残業が嫌なわけではない。それがこの問題の複雑なところだ。

コメント0

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

高齢者に配るお金はあるが、少子化対策のお金はないと言うのは、おかしいでしょう。

小泉 進次郎 衆院議員