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「テレビ」と「ウェブ」と「著作権」と

  • 岡 康道, 小田嶋 隆, 清野 由美

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2008年2月29日(金)

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 広告界は「表現が商品」という前提がある。対して文筆界は、作品即商品とはいいがたい部分が残る。ところが最近は何もかもひっくるめて「コンテンツビジネス」というくくり方の中で、すべてが「商品」とされていく。今回の対談は、その違和感から始まる。

前回から読む)

小田嶋 広告って率直に資本主義でしょう。でも、そもそも文筆の世界って「コンテンツビジネス」という物の考え方とはなじまないんですよね。

 文章を書いている人間というのは、本当は金が欲しいくせに、そうじゃない振りをずっとしてきたわけです。だけど、そろそろ紙の出版がやばいんじゃないかみたいな話になってくると、だったらもの書きでも著作権というやつをしつこく定着させて、それで、真似したヤツや引用したヤツからどんどん金を取るぞ、みたいな、何かそういう権利系の弁護士と結託しないと食っていけないぞ、みたいな話に、徐々になりつつあるわけですよ。そうすると広告と文筆と何が違うんだといえば、あまり違わなくなるんですね。

―― ただ、言っちゃなんですが、某作家さんのやっている著作権確保運動は、ちょっと見ていてつらいところがあります。

小田嶋 そうそう。著作権の延長とか、図書館つぶしとかに奔走しているでしょう。

 その人って、あの人? って誰だ??

小田嶋 俺がもう1つがっかりした話があるんだけど。谷川俊太郎みたいな人たちが、教科書に自分の詩が載っているのに著作権料が支払われてないじゃないか、という話をしているわけですよ。

 そうなの?

物書きにとって教科書に載ることは、本当に大切です

小田嶋 教科書って、あんなにたくさんの部数が出ているのに、今までそういうところを払ってなかったわけで、その通りなんだけど。でも、教育のためのものだからいいだろうということで、昔から、物を書いている人間で教科書に載るのは名誉じゃないか、というところがあったよね。うわあ、俺の書いたものが教科書に載ったんだ、万歳! みたいに。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏

クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、撮影協力:「Cafe 杏奴」)

 それはそうでしょう。

小田嶋 だけど谷川俊太郎をはじめとする何人かの人たちが、冗談じゃない、著作権料を払え、と言いだしたわけ。ということで、文芸著作権協会もだんだんJASRACっぽくなってきているんですよ。俺なんか、載せてくれるなら、金なんか、全然、ひとっかけらもいらないですよ。

 むしろ払ってもいいぐらいだよ(笑)。

小田嶋 いくらか払ってもいいから、載せてほしい。だって田舎で幅が利くじゃない? 田舎で幅が利くというのは、すごく大切なことだから。

―― こちら、小田嶋先生は、皆さんが持っている国語の教科書にも載っていらっしゃる方でして・・・。

小田嶋 おおー、みたいな。

 昔の作家というのは、地方の温泉とかにサインを残していたりするよね。

小田嶋 うわあ、小説家の先生が泊まりに来た、といって、旅館の人たちもちょっとサービスをよくして、もうお金なんていいですから、サインを残してくださいよ、とか、この襖にあれしてくださいよ、とか、そういう存在だったわけですよ。

 どれどれ、書のひとつも残しましょうか、とね。

小田嶋 それこそベルレーヌなんていう人は、パリのカフェに行って、飲み食いの代金の代わりに詩を1個書いたという伝説が残っているじゃないですか。

 そうだね。って、そうだったっけ。

小田嶋 詩人って、そうであってほしいという、こちらの思い込みがあるでしょう。それなのに詩人たる者が教科書会社を訴えて、金を払えだのっていうのは、ちょっとあっちゃいかんことでしょう。それで日本生命のCMに変な詩を書いているでしょう。

 保険にはダイヤモンドの輝きもなければ……(すらすらと出てくる)

コラムニスト 小田嶋隆氏

コラムニスト 小田嶋隆氏

小田嶋 パソコンの便利さもありません(すらすらと続ける)……って、そうだよ、その通りだけどさ。それを詩みたいに朗読されても困るでしょう。なので、詩にとってすごく、最悪のことが行われてしまいましたよ。

 まあ詩人というのは、自分が生きている間は食えちゃいけない存在的なところがある。読者の希望としてね。だって詩人で金持ちだとあまりに幸福だから。そもそも。

小田嶋 詩として、文芸として、どうなのかということとは別に、作者というのはどういう生き方をした人なのかということも含めて読まれているところがあるから。

 ランボーなんか、まさしくそうだもんね。

小田嶋 こうやって生まれて、こうやって死んだ人が、こういう言葉を残したんだ、みたいなことで、生き方と不可分になっているでしょう。だから、この詩を書いた人は、著作権訴訟を起こしたんだよ、ってあると、ちょっとね……。

  寂しいものがあるよね。

小田嶋 そう、寂しいものがありますよ。

「お前らは、悪いことをするヤツだ」

―― それはやはりネット社会というものが急速に発達したからではないですか。

小田嶋 権利関係をはっきりさせなきゃいけないんだ、というのが前提条件となっちゃっているのは、そうですよね。もともと著作権という発想がどこにあったかというと、海賊版を作る人たちがいて、そういう人たちから作者を守るために生まれた法律であって、本来ユーザーを縛るためのものじゃないんですよ。

 それが、無限複製ができるようなデジタルコンテンツになっちゃうと、ど素人でも、これを100本ぐらい作って売っちゃえ、みたいなことができてしまう。当初はすごく悪意のある海賊版業者が資金とネットワークを持って、複製を犯罪的に作っている、ということを想定してできた権利だったんだけど、今は素人を相手に、お前らどれだけコピーをするか分からないから、コピーさせないぞ、みたいな縛りに変質してきているでしょう。

 小さな町の喫茶店で、著作権料を払わずに、ちょっとでもビートルズをかけたらタイホしちゃうとか。

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