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第11回 熱釜塗蝋の硯

いつかは端渓の地を訪ねて事実を見てみたい

  • 奥本 大三郎

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2008年2月29日(金)

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※「熱釜塗蠟(ねっぷとろう)」が正しい表記ですが、表示できない環境があるため「熱釜塗蝋」と代用させて頂きました。

 端渓、端渓とありがたがるけれど、端渓そのものは川幅三メートルに満たぬ渓流だそうである。

天成硯 端渓石 清代 縦15.5×横8.8×厚さ2.2センチ

天成硯 端渓石 清代 縦15.5×横8.8×厚さ2.2センチ

 現地に行って流れを実際に見た日本人は皆、
 「なあーんだ、これが端渓ですか」
 と、拍子抜けしたような声を出すという。

 世界的に有名なものでも、その実物は以外に貧弱ということがあるもので、古代ローマのユリウス・カエサルが軍を率い、意を決して渡ったルビコン川もどうということのない小川だというし、さらに、ヨハネがキリストに洗礼を施したヨルダン川も、たとえば、はるばる現地を訪れた徳冨蘆花の目にはただの濁った溝のように映じたらしい。

 それはさておき、その渓流、端渓は羚羊峡(れいようきょう)という渓谷で、中国第三の大河、西江に流れ込んでいる。羚羊峡は広東省の中央部、広州市から百キロほども入った肇慶市(ちょうけいし)の郊外にあり、西江を挟んで北側に北嶺、南側に斧柯山(ふかざん)という山があって、その山の中腹や西江の河底に、大小百五十ばかり硯材の採れる穴、つまり硯坑が掘られているのである。

 このあたりで掘り出される石はすべて端渓硯になるのだが、山の中腹を掘って得られるものは山岩と呼ばれ、河底から得られるものは水岩と呼ばれている。

 山岩と水岩、どちらが優れているかと言えば、それは水岩の方で、色といい、硯としての機能といい、山岩とでは問題にならない。

 水岩のいい硯にいい墨を当ててみると、するするととろけるような磨り心地である。これを“「熱釜塗蝋(ねっぷとろう)”と表現するのだが、これは一度味わうと忘れることのできない感触である。

 しかも端渓水岩で磨ると墨色が良く墨の伸びが良い。科学的にはどう説明するのか知らないが、恐らくは墨の粒子が細かく磨り下ろせるのであろう。一度筆に含ませると何字も途切れることなく書けるようである。

 古硯の研究家、北畠雙耳、五鼎両氏の共著『端渓硯のすべて』(秋山叢書)によれば、水岩の採れる硯坑、すなわち水坑の開採は唐代末期に始まるという。それ以来、約千年にわたって断続的に掘り続けられた。

 なぜ断続的かといえば、水坑は河の底にあり、従って通常、水に浸っているからである。それ故、何年かに一度の、特に雨の少ない年、それも水の涸れる冬期に開採したわけである。

 つまり九月から十月にかけての時期に三百人もの汲水工を集め、間を置かず配置してバケツリレー式に、昼夜休むことなく水を汲み出したそうである。

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