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「公務員受難の時代」は来るか~『公務員クビ!論』
中野雅至著(評:荻野進介)

朝日新書、740円(税別)

  • 荻野 進介

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2008年3月3日(月)

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公務員クビ!論

公務員クビ!論』中野雅至著、朝日新書、740円(税別)

 「親方日の丸」という言葉がある。誰が考えたのは定かではないが、卓抜なネーミングセンスである。ちなみに中国では同じことを「鉄飯碗」という。落としても割れない鉄製の飯碗をもっていれは生涯、食いはぐれがないという意味らしい。

 本書のメッセージはきわめて明解である。国営企業がどんどん整理され、鉄飯碗も次々に取り上げられている中国と同じように、日本の公務員も、もはや親方日の丸の、安パイな職業ではなくなった、ということなのだ。

 著者は、市役所の職員、県庁の管理職、旧労働省のキャリア官僚などを経て、現在は公立大学の教員。いわば全レベルの公務員職を経験してきたというユニークな経歴の持ち主だ。それを生かし、本書はキャリア官僚、ノンキャリア、地方公務員と三種類に書き分けられており、公務員を十把一絡げに扱いがちな類書とは一線を画す。

 読み進めてわかったのは、バブル崩壊後の景気低迷期、日本企業がそれまでの年功的処遇を改め、次々と成果主義に移行したのと同じ動きが、10数年遅れで公務員の世界でも起きているということである。その結果、個々の公務員が今後は厳しい人事評価にさらされ、処遇の多様化がとめどもなく進行するだろう、というのだ。

 その近未来図はこうなる。

 ノンキャリアも含めた国家公務員の場合、年功給の要素が縮小し、代わりに職務給の要素が強くなる。これまでは一律だった給料が役所ごとに変動、年次を超えた抜擢人事も増える。

 処遇の多様化が最も進行するのが地方公務員だ。地方分権化の流れのなかで、これまでは地方公務員法によって守られてきた全国横並びの給料が地域によって変わらざるを得ない。その場合、税収、物価、地元企業の給与水準の3つを考慮して額を決めるべきだと著者はいう。

総務省の生き残り策とは

 地方公務員の世界には、悪名高い特殊勤務手当なるものがある。世論の風向きを察知し、廃止が進んでいるというが、「出勤奨励手当」(奈良市)、「わさび栽培作業手当」(静岡県)、「さけ・ます孵化作業手当」(北海道)などはまだ残っているというから空いた口がふさがらない。

 地方公務員の受難は給料面だけではない。財政上の悪化から、公務員自体の数を減らさなければならないのだ。その結果、これまではほとんど行われなかった「分限処分」に手をつけざるを得ないかもしれない。民間でいう会社都合の解雇である。

 こうした地方分権が進むなか、旧総務庁・旧郵政省・旧自治省の3つが統合してできたマンモス官庁、総務省のしたたかな戦略を著者は指摘しており、このくだりは非常に興味深く読んだ。

 同省は旧自治省の流れを汲む、地方自治体の問題全般を扱う官庁である。旧大蔵省が30歳前後のキャリアを地方の税務署長に出向させる人事が「若殿研修」と批判されたが、都道府県の副知事として30代のキャリアを出向させる総務省のそれはなぜか批判の対象にはなっていない。

 総務省は今、従来の、画一的に上から指導する立場を巧みに改めているという。各地方自治体を自分たちが監視しつつ、互いを競争させる仕組みを考え出しているというのだ。監督ひとりいれば十分なのに、選手たちを要らざる競争環境におき、互いに疑心暗鬼にさせてしまうコーチみたいなものなのだろう。

 それには役所の縄張り争いも一枚噛んでいる。地方へ税源を委譲したり、地方の借金を国が肩代わりしたりするのに反対する財務省への対抗手段でもある。

〈旧自治省にとって「地方自治体を監視して競争させる」という戦略は、世論・地方自治体・財務省という三方面に共通して有効な「唯一の解」だということです。旧自治省はまさにヌエのような役所なのです〉

 ヌエ退治で有名なのが鎌倉武士の源頼政だが、そういう人が今後、現れるだろうか。

 公務員に対する不満が溜まっている人にとっては、「よくそこまで書いてくれた」という内容であるが、公務員に関する我々の誤解にも根深いものがあるのも事実である。






※読者の方からのご指摘で本文を一部修正しました。ありがとうございました。

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