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「裏庭」に埋められた積年の恨み~『反米大陸』
伊藤千尋著(評:島村麻里)

集英社新書、700円(税別)

  • 島村 麻里

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2008年3月4日(火)

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評者の読了時間3時間30分

反米大陸――中南米がアメリカにつきつけるNO!

反米大陸――中南米がアメリカにつきつけるNO!』伊藤千尋著、集英社新書、700円(税別)

 先月24日、カストロ議長退任後のキューバでは、実弟のラウル氏が新議長に選ばれた。

 新議長をいち早く歓迎したのが、ベネズエラのチャベス大統領である。引き続き同国の石油を安価で提供するとし、キューバへの支援を表明した。

 ……などといった中南米関連のニュースは、日本のマスメディアでは報じられることが少ない。上記の「速報」も、インターネットで読んだものだ。

 ベネズエラやペルーなどに友だちがいて、一度は訪ねて行ったこともある評者ゆえ、あのへんの動向には以前から関心がある。が、いかんせん、地球の反対側。自分とて、旺盛に情報収集しているとは、とてもいえない。

 国連総会でブッシュを何度も「悪魔」と呼んだチャベスに代表されるように、中南米ではここ数年、「反USA」を掲げる政権が、次々誕生している。ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、ペルー、エクアドル、ニカラグア……。あたかも積年の恨みをはらさんがごとくの勢いで、だ。

 以前新聞社の中南米特派員を務めた筆者は、中南米諸国がアメリカ合衆国(以下米国と表記)に反旗を翻すようになった経緯を、南北米大陸の歴史を振り返りながら検証する。

 今世紀に入って反米政権が次々生まれた最大の理由は、米国の圧力により、1990年代に進められた新自由主義の経済政策だと、著者はいう。

 親米政府の下で自由な競争が尊ばれた結果、米国を含む海外資本は潤ったが、地場産業の崩壊や公共料金の値上げ、失業者の急増などで、国民生活はボロボロに。上記の国々の大統領選で反米派が勝利したのは、国民が米国べったりの政府を見放した結果だった。

 著者は米墨(メキシコ)戦争や米西戦争などに遡って、米国のやり口を追求する。

米国流、裏庭の作り方

 長らく、中南米は「米国の裏庭」と呼ばれてきた。米国の利益のために石油が、フルーツが、運河が、そして国家そのものまでもが都合良く生産され、搾取され、地元資本や住民はことごとく脇へ押しやられていった。

 自国の利益のためには現地政府と癒着し、必要とあらばクーデターもお膳立てする(バナナ産業と中米)。運河という利権のためには、コロンビアからの独立運動をたくみに利用して「傀儡国家」を建設する(パナマ)。

「中南米の歴史は、アメリカから収奪され続けた歴史である(中略)。アメリカが太るにつれ、中南米はやせていった。アメリカは過去に中南米で行ってきた侵略の方式を、そのまま今、世界中に広げている」

 という著者は、米国が、「覇権の最初にどのような行動をとったかを見れば、現在の世界制覇につながる侵略のパターンが見える」という。即ち、

  • 米国に都合の悪い政権を非難する(「悪の枢軸」など)
  • 米国のいうなりになる兵士を集めて反政府ゲリラを組織し、自らの手は汚さずに気に入らない政権をつぶす
  • ゲリラの兵力が頼りないときは、米軍が軍事顧問団として支援する
  • 米国に従う人を代表にして、傀儡政権を樹立させ、その要請に応える形で海兵隊が出動し、武力で制圧する

 などである。70-80年代に多くの国が軍政となった南米だが、悪名高きチリのクーデターなども、当時のニクソン政権が、CIAに莫大な資金を渡して、当時のアジェンデ政権を覆すよう、裏で手を貸したのだという。

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