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正直者には「見る目」が宿る~『美術の核心』
千住博著(評:澁川祐子)

文春新書、760円(税別)

  • 澁川 祐子

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2008年3月5日(水)

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評者の読了時間3時間20分

美術の核心

美術の核心』千住博著、文春新書、760円(税別)

 書店の美術書コーナーへ足を運ぶと、そこには美術関連の入門書が驚くほどたくさん置かれている。美術全般を広く扱うものから、日本美術、西洋絵画、現代アートなどジャンルを絞ったものまで。中身も美術史を時系列で追っていくものから、名作を個別に読み解くものまで多種多様だ。帯には「もっと美術を楽しもう」ノリのフレーズが踊る。

 そうした入門書の類いが平積みされているのを見ると、本来なら美術は見て感じればいいだけのもののはずなのに、「見る前に読む」ものかと錯覚してしまうほどだ。いったいこの手の本の多さというのは、なにを意味しているのだろうか。

 ひとつに「美術には興味があるけれど、なんとなく敷居が高い」と思う層が存在していて、美術をやさしく解説してくれる本への需要があるということ。もうひとつに、「美術は本当はおもしろいんだよ、もっと知ってよ」という啓蒙する側の人間がいるということ。

 さらに突っ込んで言えば、これだけ入門書が既刊されていながら、似たような本が次々発売されるということは、つまるところ「美術」はいまだ世間の人々にとって身近なものになり得ていないということの悲しい証でもある。

 今回取りあげる『美術の核心』も、数多ある美術入門書のうちに分類される本だ。著者の千住博氏は、「大徳寺聚光院別院襖絵」(七十七面もある)など数々の大作を手がけてきた日本画家で、京都造形芸術大学の学長でもある。美術を題材にした新書をすでに4冊も出しており、美術入門書の書き手としてはおなじみだ。

 そんな著者が「核心」と掲げただけあって、この本は他の著書と比べ「美術とはなんぞや」という根本的な問いに、よりフォーカスした内容になっている。

 取りあげているのは、時代もジャンルもまちまちだ。印象派について語った次の章では縄文土器の文様を取りあげ、盛期ルネッサンスの後には水墨画といった具合。その並びに教科書的なルールは一切感じられない。

 「浮世絵」というジャンルで語っていたかと思いきや、一章まるまる江戸中期の名絵師・尾形光琳の代表作「紅白梅図」にぐっと寄ってみたりで、切り口も柔軟だ。また、伊能忠敬の地図や漫画、庭園など、一般には「美術」と言えるのか言えないのか微妙なものまで踏み込み、フリージャズみたいな奔放さがある。

 むろん、ただ好き勝手に題材を選んだわけではない。背景には、著者の考える「美術」を含む「芸術」の定義がある。

〈そもそも芸術とは、ここではない「どこか」につれていってくれるかどうかで真価が決まります。一方、絵画とはいえ、「どこにもつれていってくれない」ものも多くあり、絵画なら全て芸術ではない、と気付きます〉

 油絵だから美術なのではない。彫刻だから美術なのでもない。見る前と見た後で世界が違って見える、そんな影響力を及ぼすものこそが著者にとっての「芸術」であり、その範疇からいえば地図だって、庭だって立派な「芸術」になり得るのだ。そして、著者はこうも語りかける。

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