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世界を変えるって、カッコいいじゃん~『新左翼とは何だったのか』
荒岱介著(評:山本貴光)

幻冬舎新書、740円(税別)

  • 山本 貴光

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2008年3月6日(木)

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評者の読了時間4時間20分

新左翼とは何だったのか

新左翼とは何だったのか』荒岱介著、幻冬舎新書、740円(税別)

 1950年代から70年代にかけて盛衰した新左翼運動は、戦後日本の社会と歴史を考える上で逸せない出来事の一つだ。

 そうなのだが、評者のように事後的にフォローする者にとって、これほど接近しづらいものもない。といっても手がかりがないわけではない。歴史的にも数十年内のことだけに、証言や史料には事欠かない。むしろ手がかりがありすぎるくらいだ。

 そこで、概要をイメージしようと文献や映像を見る。すると、グライダーで上空から滑空するつもりが、気づくと石つぶてや催涙弾が飛び交う「藪の中」で往生することになる。

 いくつかの要因が考えられる。一つは、高分子化合物の分子式のように素人には見分けがたい組織名だ。革命的共産主義者同盟、革共同中央書記局、革共同全国委員会、革共同革マル、革命的労働者協会……。また、これは現代史に共通することだが、日時と場所のはっきりした詳細な情報が洪水のように出てくるため、記録を読むうちにディテールにまみれて立っている場所がわからなくなってしまうのだ。

 本書は、そんな新左翼についての解説書である。著者は、1960年代に早稲田大学の学生として新左翼運動に身を投じた運動家であり、理論家あるいは作家としても多くの書物を刊行している荒岱介。近年の著作には『破天荒伝』(太田出版)といった自伝、『大逆のゲリラ』(太田出版)、『破天荒な人々』(彩流社)など、本書に関連する回顧やインタヴュー集などもある。

 果たして本書もまた、微に入り細を穿つ熱い回顧録なのか、それとも適度な俯瞰を与えてくれる入門書なのか。

 結論から言おう。著者は事情に通じていない読者を十分意識している。ジャーゴンを説明抜きに持ち出すこともなく、丁寧に読めば運動の歴史や組織運営の実際について一通りのことがわかるはず(全学連の位置づけは見えづらいかもしれないが)。記述も概してドライで、新左翼の立場から運動の実態を中心に、ときに批判を交えつつその功罪をカメラで映すように描いている。

 ただし、こうした文献を読みなれない読者には、それでも入り組んでいるように感じられるかもしれない。読解にあたっては、ディテールを追いながらも、登場する人物や団体の主義主張や目的のちがいをはっきり押さえることが肝要だ。

批判・否定で分裂を繰り返して誕生

 まず大きな流れを見ておこう。新左翼とは何か。それは既存の左翼(旧左翼)を母体として登場した立場だ。ここで既存の左翼とは、共産党や社会党だと考えておけばよい。本書の整理に沿って見ると、共産党から新左翼が分派する過程には、大きく二つのきっかけがある。

 一つは、各国の共産主義にとって規範的な存在と目されていたソ連共産党の実態が与えた衝撃だ。

 1953年にスターリンが死去した後、フルシチョフの秘密報告(1956年)によってスターリニズムの横暴が暴露された。ソルジェニーツィンは『収容所群島』で市民がどんな理由でいつ逮捕されるかもわからない状況を描いているが、これに加えてスターリンの疑心暗鬼を触発した者は、党員であろうと容赦なく「敵」として粛清されていた。そればかりか、反ソ連運動が高まったハンガリーにソ連軍が侵攻するという事態まで生じる。

 こうした状況から1957年に、日本トロツキスト連盟が創設される。ソ連創設に関与しながらも、スターリンに追放・暗殺されたトロツキーをかつぐところからも窺えるように、既存の共産党とスターリン主義に批判的な立場である。ここから後に熾烈な対立・闘争を繰り広げる革マル派と中核派が分派することになる。

 もう一つは、日本共産党とその影響下にあった学生運動の対立である。戦後、ヨーロッパの共産主義機関(コミンフォルム)からの批判を受けて、日本共産党は行動の方針を二転三転させる。その運動方針をめぐって対立が深まった結果、1958年に学生たちが共産党と決別し、共産主義者同盟(ブント)を結成する。ブントもまた後に分裂・統合を繰り返してゆき、例えば赤軍派はここから分派している。

 要するに、既存の共産党(や社会党)と対立する新たな左翼、新たな運動体を「新左翼」と総称する。その歴史は、本書の全ページを費やして説かれているように闘争の歴史であり、同時に主義主張のちがいによる分裂・統合の歴史でもあった。

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