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日本は実は「水の輸入大国」だ~『水戦争』
柴田明夫著(評:石山新平)

角川SSC新書、760円(税別)

  • 石山 新平

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2008年3月10日(月)

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評者の読了時間2時間45分

水戦争 水資源争奪の最終戦争が始まった

水戦争 水資源争奪の最終戦争が始まった』柴田明夫著、角川SSC新書、760円(税別)

 「空気と水はただ」というのが長年の日本人の一般的な考え方だった。経済的観点からも金銭で捉えにくい存在だったと言っていい。

 もちろん、ミネラル・ウォーターも存在するし、上下水道代や水利権というものもある。空気だって排気ガス対策費用といった「コスト」に置き換えることはできたのだが、空気や水を商品として売買するというのは、これまで一般的ではなかった。

 柴田明夫著『水戦争』は、そんな常識が一変しつつあることを明らかにしている。著者いわく「いまや世界の水資源はエネルギーや金属、食料にも増して資源化している」というのだ。さらに、そして「将来、原油のように取引所で取引される商品となる可能性も否定できない」とまで言い切っている。

 著者の、この一見大胆とも思える直感は、おそらく正しいのではないだろうか。というのも、水に先んじて空気が取引の対象となっているからである。

 欧州連合(EU)が二酸化炭素の排出権取引制度を始めた2005年1月、経済の常識は大きな転換点を迎えたとみるべきだ。二酸化炭素は言うまでもなく酸素の燃えカスである。その排出権が取引所に上場され、1トン当たり何ユーロという値段が付き始めたのである。ということは、実際は酸素の使用に値段が付いたのと同じである。

 これまで温暖化問題は「エコロジー(環境)」の問題だったが、2005年を境に「エコノミー(経済)」問題になった、と言っていい。

 水は現段階ではまだまだ「環境」の問題として扱われるケースが多い。だが、本書が指摘しているように、地球上にある限られた淡水を巡って、おいおい争奪戦が起こるのは間違いないだろう。現代社会で紛争はまず、「経済戦争」の形で現れるから、そうなれば、水に価格がついて、国際間で貿易される。つまりカネのある国が世界中から水をかき集める可能性も十分にあるのだ。

日本の水消費量が少ない理由

 著者は総合商社に勤め、『食糧争奪』(日本経済新聞出版社)などの著書もある食糧・資源問題の専門家である。それだけに最新著『水戦争』でも食糧問題に多くの紙幅を割いている。

 ただし、「食糧」とは実は水である、というのが著者の言い分だ。確かに農産物を作るには大量の水がいる。日本で1キロの小麦を生産するのには、その2000倍の2トンの水が必要だという。牛肉となるとさらにその何倍もの水が必要になる。牛が成育過程で水を飲むということもあるが、それ以上に、牛の飼料を生産するのに膨大な水を消費しているということがある。

 実は、日本はあまり水資源を使わない国であるという。比較的豊富に水資源があると思われがちだが、一人あたりの1年間に利用される水の量は、飲み水、生活用水、工業用、農業用水を合わせて731立方メートルと、極度の「水不足」の国並みであるという。

 ただし、この計算にはカラクリがある。日本は食料消費量の過半を輸入に頼っている。つまり、形を変えた膨大な量の水を輸入していることになるのだ。この食料輸入=水輸入があるからこそ、日本は深刻な水不足に直面しないで済んでいるというのである。

 この形を変えて輸入される水は、専門家の間で「バーチャル・ウォーター」と呼ばれているそうだ。そういう意味では、すでに水の貿易が行われているとも言えないことはない、どころか、実際はさらに進んでいる。

 すなわち、希少化する水を巡って、すでに世界の大企業はビジネス展開を始めているのだ。その実例を紹介している第3章が、本書の白眉である。

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