日本企業の置かれた状況を国内外のM&Aの歴史と背景を含め分かりやすく解説した。
買収防衛策を講じるなら、まず自社の企業価値を知るべきだと説く。
そして、それが自社の戦略を根本から見直す好機になる、と。
(聞き手は石黒 千賀子)
── 敵対的買収は日本でも珍しい話でなくなりました。そのため、毒薬条項など防衛策の導入に走る企業が後を絶ちません。

福谷 尚久(ふくたに・なおひさ)氏
1985年国際基督教大学卒業。コロンビア大学MBA。87年から三井銀行(現三井住友銀行)でM&A業務に携わり、2005年3月GCAに入社。(写真:菅野 勝男)
M&A(合併・買収)業務に携わって15年、近年は敵対的買収を受ける日本企業のアドバイザーを務める機会が急増しています。その中で痛感するのは、「自社は何のために存在しているのか」ということを意識している経営者が極めて少ないことです。
だから、目先のテクニカルな防衛策に走ったり、買収攻勢を前に株主の支援を取りつけようと達成可能とは思えない強気な経営計画を慌てて発表して、自ら首を絞めるようなケースさえ出てきたりしています。
何より大事なのは、まず己を知ることです。「この価格で買いたい」と突然買収を提案されても、自社のフェア・マーケット・バリュー(FMV)、すなわち「適正な企業価値」を知らなければ「安い」「不当だ」と反論もできない。これでは敵対的買収の防衛もやりようがありません。株を取得されて株価が5割上がったとします。そこで「これだけ高値で買い戻せば、相手も相当利益を得るのだから承諾して出ていってくれるだろう」などと期待するのは甘い。相手が企業価値をもっと高く評価していれば、その時点で手放すわけがない。だから日頃から自社の根源的価値を把握しておくことが不可欠なのです。
── そういう発想が日本企業には欠けているのが問題だと?
この20年で企業を取り巻く環境を大きく変えたのは外国人投資家です。これまでは上場企業といえども、ライバルさえ意識していれば自社の価値なんてあまり気にせずに済みました。しかし、グローバル化が進み、海外から資金が大量に入ってきた以上、それを意識しないわけにはいきません。
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