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第12回 非能率の味わい

端渓、歙州硯で磨る精神的な満足感

  • 奥本 大三郎

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2008年3月19日(水)

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 東京のある鮨屋に「夢」と一字だけ書いた色紙が立派な額に入れて飾ってあった。

 夢の一字書は坊さんなんかがよく描くけれど、どうもあまり上品なものは少ないようである。というより俗臭芬々(ふんぷん)たるものばかりが目に付く。

蝉硯(ぜんけん) 雘村石(かんそくせき) 清代 縦16.7×横7.6×厚さ4.2センチ

蝉硯(ぜんけん) 雘村石(かんそくせき) 清代 縦16.7×横7.6×厚さ4.2センチ

 ところがその書はすっきりして品が良く、見ていて気分がいい。鮨を食いながら、この感じは何なのだろうと考えた。

 紙は島の子らしい。ごく普通の画仙紙の色紙とは違って、墨を吸わないから滲(にじ)みがない。我々がまったく滲まない紙に墨で書くと、エコーゼロのマイクで歌を唄ったような感じで含みがなく、それこそ下手まる出しになるのだけれど、この書の場合、そういう愛想もくそもない字にはなっていない。

 墨はあまり濃く磨っていないように見えた。あとでまねをして書いてみて判ったのだけれど、かなり濃く磨ったつもりでも、島の子紙に書くと薄く見えるのだ。

 筆の運びはごくゆっくりと、だったようである。自在に緩急がつけてあって、筆が一瞬止まったようなところ、力が込められたところに墨が溜まってそのまま乾いているから、一字の中に濃淡がある。字の輪郭はくっきりして、日本画の技法で言う、溜込(たらしこみ)のような効果がでている。

 筆者の名を訊(き)いてみると、昔、天皇に仕えた方であるという。子供の時分から書の教育を受け、またいい書を見て育った人なのであろうと思った。

 滲まない紙、取りも直さず洋紙となると身辺に山ほどある。コピーの裏、カレンダーの裏……チラシは裏まで印刷してあるから使えないが……。

 思いきりつるつるのカレンダーの裏に、太い筆で何か書こうと思った。他に思いつかないからやっぱり「夢」。褚遂良(ちょすいりょう)の「雁塔聖教序」にたしかあった、と探し出して手本にする。

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